重賞ウィナーレポート

2004年08月29日 新潟記念 G3

2004年08月29日 新潟競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:スーパージーン

プロフィール

生年月日
1998年02月24日 06歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:27戦8勝
総収得賞金
227,333,000円
サッカーボーイ
母 (母父)
メイタイザン  by  パーシヤンボーイ(GB)
馬主
架谷 重子
生産者
中地 康弘 (新冠)
調教師
坂口 正則
騎手
中舘 英二
  • スーパージーンの母メイタイザン【写真撮影:中地広大氏】
    スーパージーンの母メイタイザン【写真撮影:中地広大氏】
 本馬のふるさとは新冠町朝日にある中地康弘牧場。この地域は通称サラブレッド銀座と呼ばれ50余りの牧場が並び、古くからの名門牧場が多く数々の名馬を輩出しているが、意外な事に今年の重賞馬は今まで出ていなかった。
 今回取材に応じてくれたのは長男の広大氏で、父親(中地康弘社長)の勧めもあり現在は札幌の大学生だ。家族経営の同牧場には子供の頃手伝っていたが、「今は両親のサポート役ですね。現役の生産馬の情報収集などもしています」と自らホームページ(「マンダリンファーム」で検索。本馬の新情報も掲載中なので是非ご覧ください。)も出しているほど馬は好きなようだ。

 本馬の重賞初制覇を広大氏は札幌競馬場のターフビジョンで、御両親は自宅のテレビでの観戦となったが、1馬身差の余裕の振り切り勝ちに「新潟の直線がすごく長く感じました。心臓が止まりそうでしたよ」(広大氏)と喜びは大きい。両前脚屈腱炎に悩ませられた本馬の復帰には「元気に走り続けてもらいたいというのが生産者の願いですから。取れそうでなかなか取れなかった重賞を勝ちモヤモヤも晴れました」と笑みを見せる。
 同牧場にとっては昨年のカゼニフカレテ(愛知杯G3)に続く重賞制覇だが、その前の重賞勝鞍は12年前のエーコークロス(91年京都大障害),ジムクイン(90年中山牝馬S)に遡る。なお、本馬は北海道市場(99年11月市場)の取引馬となる。

 本馬の母はメイタイザン(母の父パーシャンボーイ)で同牧場にとっては一番古くから引き継がれる血統後継馬。NasrullahのS5×M5のインブリードを持つ血統だ。母は先代の時雄氏の生産馬で地方13戦3勝(92年川崎関東オークス3着・同浦和桜花賞3着)と活躍後に繁殖生活に入る。現在8頭の産駒を持ち本馬は第5仔となるが、兄弟は主に地方で活躍し、半兄にグロリアタイザン7歳(地方32戦4勝)等が居る。2歳の半弟(父サニーブライアン)は中央デビューの予定で調教中、本馬の活躍に昨年、今年と同父となるサッカーボーイを配合したが残念ながら不受胎。今年はナリタトップロードで受胎確認されたという。

 本馬は同町共栄の育成牧場(キタジョファーム)で調教されたが、社長の北所直人氏は当時を振り返り「やれる馬だと思いました。しっかり訓練しましたよ」と重賞勝ちを示唆していたようだ。

 ここで育成牧場を紹介する機会がないので、話題となっているこのキタジョファームに触れてみる。
 同育成牧場は昨年8月の台風10号の災害を受け、川の氾濫により屋根付きダート坂路コースが半壊するなど壊滅的な打撃を受けたが、2ヶ月後にはこの坂路コースを復旧。さらに馬主でもある北所社長は「今年のダービーを観戦して、第二のコスモバルクを育てたいと思いました。災害が夢をくれたのです」と大きな目標を掲げ、新たにバーク坂路の造成に着手した。災害の教訓を糧として災害時に流出した土砂でコースを造り、流木のバーク(木のチップ)を使用、また牧柵には流出土に埋まった立て杭と丸管を利用して完成。現在600mの屋根付き坂路(最大傾斜3.5度)、550メートルの新バーク坂路(最大傾斜4.0度)、ウォーキングマシン2機で46頭の育成馬を訓練する。「これ以上、馬は増やしませんよ、強い馬をつくりたいから」と北所社長。
 新坂路の落成祝賀会が8月30日に行われ、多くの関係者がかけつけたが、その前日の重賞レースに卒業生の本馬スーパージーンが優勝し花を添えた。

 育成牧場の存在は強い競走馬つくりのポイントのひとつでもある。今回取材した中地康弘牧場のように家族経営の生産牧場と育成牧場の理解しあった連携が日高を支える。 第40回新潟記念(GIII)は、単勝3番人気で父内国産馬のスーパージーンが好位から直線はラクに抜け出して優勝。両前屈腱炎を克服する不屈の闘志で待望の重賞タイトルを手に入れた。