重賞ウィナーレポート

2005年10月23日 菊花賞 G1

2005年10月23日 京都競馬場 晴 良 芝 3000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ディープインパクト

プロフィール

生年月日
2002年03月25日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:7戦7勝
総収得賞金
1,454,551,000円
馬主
金子真人ホールディングス (株)
生産者
ノーザンファーム (早来)
調教師
池江 泰郎
騎手
武 豊
  • 本馬の半弟にあたるウインドインハーヘアの1歳(父アグネスタキオン・牡・鹿毛3.19生)
    本馬の半弟にあたるウインドインハーヘアの1歳(父アグネスタキオン・牡・鹿毛3.19生)
  • ウインドインハーヘアの1歳と横手厩舎のスタッフの皆さん(左から3人目が横手氏)
    ウインドインハーヘアの1歳と横手厩舎のスタッフの皆さん(左から3人目が横手氏)
  • ノーザンホースパーク内、K’Sガーデンにも沢山の花が飾られていました
    ノーザンホースパーク内、K’Sガーデンにも沢山の花が飾られていました
  • ホースパーク内の売店。インパクトグッズは物凄い売れ行きで中には予約待ちの商品もあるとの事です。
    ホースパーク内の売店。インパクトグッズは物凄い売れ行きで中には予約待ちの商品もあるとの事です。
【菊花賞・ディープインパクト号 取材レポート】

胆振管内早来町・ノーザンファームへ約束の午後2時に牧場を訪れる。ふるさと胆振案内所のある白老からは車で約50分という距離だが、車を降りると冷たい風が頬を吹き付け、同じ胆振管内でもこれほど気温差があるものだ。小走りですぐに事務所に駆け込むと、取材担当の中尾事務局長が既にほかの取材を受けている最中であった。
偉業達成から僅か2日後ではあるが、牧場の事務所内は皆普段と変わらぬ雰囲気で淡々とその業務をこなしている。応接間に通されると溢れんばかりのお祝いの花が飾られていた。スタッフに尋ねると「お陰さまで80以上のお花が届けられました。この事務所には全て置ききれないので、ノーザンホースパークのレストランにも飾り、一般の方にも見て頂けるようにしました」と教えてくれた。この日の晩にはその沢山の花を囲んで祝勝会が開かれるらしい。

はじめに牧場時代に育成に携わった横手厩舎長にお話を伺った。レース当日は横手さんをはじめ計16名の繁殖育成スタッフが競馬場へ応援に駆けつけ、「単純に嬉しい」と率直に3冠の感想を話してくれたが、レースはゴールの方から観戦したことと逆光だったこともあり、4コーナーを回ってきたディープを認識するのに時間が掛かったそうだ。「抜け出すのを確認するまではドキドキしたが、はっきり姿を確認してからは捉えてくれるだろうと思いました」。
早め先頭に抜け出した2着馬を最後はしっかりとかわし栄光のゴールを駆け抜ける。
喜びを爆発させるスタッフ達の周りで「ディープ!ディープ!」と聞こえる沢山のファンの声援に横手さんは感動したという。「一頭の馬にこれだけの声援をくれるというのは珍しいことですよね。本当に沢山のファンに愛されている馬なんだなあと改めて感じました」

今となっては歴史的名馬の存在となった本馬も牧場時代は特に際立つ存在ではなかったという。「牧場時代に目立つ馬というのは完成度が高い馬・成長が早く体付きのいい馬であって、そういった中ではディープは一枚落ちるというか、特別目立つ馬では無かったですね。ただサンデーの仔でもありますし、素材は良いなという手応えはありましたよ」
レースは結果的に1~4着までがノーザンファームで生産或いは育成を手掛けた馬達が独占したが、勝った馬だけではなくスタッフが各々に思い入れのある馬達が出走している。7着に敗れたコンラッド号もノーザンファームの生産育成馬であるが、当時担当していたスタッフも「ディープが強いのは分かっているが・・・」と微かな期待を胸に観戦をしていたようで、やはり複雑な心境なのであろう。

最後に育成者として今後の目標を尋ねると「ディープに関して言えば、普通に過ごして普通に調教してあんなに結果を残せるのは馬自身の能力が違ったというだけで、我々はその能力を開花させるのを邪魔しなかったという事だけ。同じ世代の中にまだ未勝利の馬達も居るので、全ての馬が勝てるようにこれからも浮かれることなく毎日の仕事を頑張るだけです」と引き締まった表情で語ってくれた。
レース後は口取りの写真が終わるとすぐに競馬場を出発。たとえGⅠであってもレース当日に帰ってくるのが通例。勝利の余韻に浸る間もなく駆け足で電車に乗り込み、帰った翌日の朝からは普段通りの牧場の朝が待っていた。


続いて事務局長の中尾さんにお話を伺う。いつも以上の数の取材を受けているのだろう。しかし普段通りの静かで柔らかくそして慎重に言葉を選び丁寧に答えてくれる。「3歳クラシックは全ての生産育成牧場の目標ですが、3冠馬というのはその頂上にあるもので、この馬に限っては運も実力兼ね備えていたのでしょう」
誰もが承知のとおりこの世代のノーザンファーム生産馬の活躍は過去に例を見ない程ずば抜けている。昨年の函館2歳Sを皮切りに菊花賞までに挙げた重賞勝ちの数は15頭で25勝(GⅠ6、GⅡ7、GⅢ12)これら多数の活躍がディープインパクト出現の底辺となっているのではないだろうか。

レースはいつも通り事務所で観戦されたそうだが、今回はさすがに緊張感を隠せず、ゴールした後も確定するまでは落ち着かなかったという。
ここで改めて牧場時代の話を伺ったが、生産されてからずっと大きな怪我や病気は殆どなかったらしい。デビューから昨日のレースまでの順調さも、大きな目標に到達出来る本馬の「強み」「実力」なのだろうと話してくれた。「米国の年度代表馬であったサンデーサイレンスを父に、欧州のGⅠを勝った母に世界的名馬となる可能性を持った馬が、この北海道の胆振地区に誕生した事は本当に素晴らしい」と目を細めながら続けてくれた。

今後は古馬との戦い、そして海外への挑戦が当然ながら期待される。同世代牝馬ではシーザリオが日米オークス制覇という初の快挙を成し遂げたが、「血統も含めこれらハイクラスの馬達は、もはや海外云々と言われる時代ではなくなっています。これからも今年ターフを賑わせたこれらの馬を目標としてゆけば、おのずとその目標を超える事が出来るのではないでしょうか。」
淡々と話してくれたその言葉には、横手氏からも聞かれたものと同じく、飽くなき挑戦を続けるトップブリーダーとしての意志の強さと、そして誇りを感じさせた。第66回菊花賞は、単勝100円の圧倒的1番人気に推された武豊・ディープインパクト(父サンデーサイレンス)がデビュー7連勝で菊花賞を制覇。1984年のシンボリルドルフ以来21年ぶり2頭目となる無敗の3冠馬に輝いた。京都競馬場に詰めかけた13万人を超す大観衆、上がり33秒3はいずれも菊花賞レコード。