重賞ウィナーレポート

2006年09月30日 札幌2歳S G3

2006年09月30日 札幌競馬場 曇 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ナムラマース

プロフィール

生年月日
2004年04月23日 02歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:7戦3勝
総収得賞金
170,887,000円
チーフベアハート(CAN)
母 (母父)
ビストロドゥパリ  by  フレンチグローリー(IRE)
馬主
奈村 信重
生産者
八田ファーム (静内)
調教師
福島 信晴
騎手
藤岡 佑介
  • 八田勝彦・律子夫妻
    八田勝彦・律子夫妻
  • 八田さん夫妻も参加した口取り写真
    八田さん夫妻も参加した口取り写真
  • 母ビストロドゥパリ
    母ビストロドゥパリ
 注目の札幌2歳ステークスを快勝し、来年のクラシックレースに名乗り出た殊勲馬の生産牧場は静内浦和の八田ファーム。
 海岸沿いの国道を浦河に向って走ると陸上自衛隊静内駐屯地の手前にあり、海岸から入る小さな沢形の土地全体が同牧場の敷地、牧場は隅々まで管理が行き届き放牧地には綺麗に青草が広がっている。
 繁殖牝馬は6頭と少なく、夫婦二人で営む小規模な家族経営の牧場だが、生産馬はしっかりと走っており、過去には‘98オークスに出走したマイネエルザや‘03高松記念・スプリンターズSに出走したナムラマイカなど活躍馬も多くいる。しかし、重賞制覇は初めてのことで、普段も明るい夫妻は満面の笑みをたたえ喜んでいる様子だ。

 八田勝彦・律子夫妻は、このレースが札幌競馬場で行なわれるだけに、忙しい中、仕事の段取りを整えて二人で応援に行き、大切な記念となる優勝の口取り写真にも参加できた。
 本馬はレースでは、先に行くライバル馬を一気に差し切っての勝利だったが、勝彦さんは「やはり嬉しかったですね。こんな気分の良いことはなかった。ゴール前では届くのか心配しましたけれど、凄い馬ですね。ほんとうにうちの馬かと思ってしまいますよ。小さい頃は華奢な仔で母親譲りの頑固な一面も持っていて、とても元気な仔で放牧地をよく走り回っていました。前脚の捌きが良く綺麗な走りをしていましたよ。それを気に入ってくれた馬主さん(奈村信重氏)に感謝していますし、今回も競馬場で一緒に応援できて、馬主さんに喜んでもらえたのが一番嬉しかったですね。」と笑顔は絶えない。

 本馬の母ビストロドゥパリ(母の父フレンチグローリー)は血統が気に入って胆振から購入した勝彦さん自慢の期待馬だ。「本馬はナスルーラやリボーなどクロスが多くかかって、調べていくとミスプロ(Mr.Prospekctor)の母ゴールドディガーもクロスする血統ですよ。」と本馬の活躍に満足そう。
 本馬は第6仔となるが、1歳半弟(父コロナドズクエスト)はすでに育成場に行き周囲の期待を仰いでいる。当歳(父スティゴールド)は掲載写真の通り母親にそっくりでヤンチャな仔、今年はダーレージャパンのグランデラを配合したそうだ。

 本馬は、レース後、浦河の育成場に戻り、八田夫妻は直ぐに会いに行った。「競馬場ではおとなしかったのに、うるさくしていました。まだ走り足りなかったのでしょうかね。でも、あの仔は大きくなって凄く逞しくなっていました。」と二人とも愛馬が自分の子供のように可愛い様子。
「牧場とは縁の無い世界から嫁いで来てくれ、良く働いてくれる奥さんですよ」(勝彦さん評)という律子さんの馬を見る目も優しい。「今年は日高の小さな牧場の馬が活躍して、私たちの励みになっていました。うちみたいな牧場で重賞を取れたのならと、また頑張ってくれる牧場の方がいるかもしれませんね。」と律子さんも笑みを浮かべる。
「いつも牧場を綺麗にして、来られるお客さん(馬主さん)に喜んで貰いたい」と、牧場の作業に勤しむ夫妻の愛馬が来年のクラシック戦線を賑わしてくれそうだ。

※札幌2歳Sを取材してくれた取材班のレポートを一緒にお届けいたします。
[9月30日 札幌2歳S 札幌競馬場]

勝利の期待を持って競馬場へと足を運んだが、なかなか前に進まない湿った馬場と、前を行く馬を捕らえるには短すぎる僅か264Mしかない直線。生産者として肝を冷やしたのは事実だろう。 しかし、結果は半馬身差以上の力の差を見せつけた完勝。

 これが中央の重賞初制覇という八田ファームの代表を務める八田勝彦さんは、「これまでも勝利に近いところまでは行っていたのですが」と信じられないような面持ちで、重賞馬を送り出した喜びについて話し始めた。「前走はレコート勝ちということでいいレースができそうだと思っていましたが、レースはやってみなくては分かりませんからね。重賞を勝てたからいうわけではありませんが、クロスを考えて配合した馬ですし、産まれた後もこれはというものを感じさせてくれた馬です。でも、いい育成(浦河・ディアレストクラブ)牧場に入って、いい調教師さんに手をかけてもらったのが、何よりも大きいと思います」(八田さん).

 これでクラシックが見えてきましたね、と話を向けると八田さんは「順調に行って欲しい、それだけです」と今度は笑みを浮かべた。7戦のキャリアはこの時期の2歳馬としては異例だが、今年の三冠候補のメイショウサムソンも、9月までに4戦をしている。「酔うたびに強くなる」ならぬ、「レースを使うたびに強くなる」ナムラマースは、久しぶりに北の地から現れたクラシック候補であるとの意見に異論は無いはずだ。