重賞ウィナーレポート

2020年11月15日 エリザベス女王杯 G1

2020年11月15日 阪神競馬場 晴 良 芝 2200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ラッキーライラック

プロフィール

生年月日
2015年04月03日 05歳
性別/毛色
牝/栗毛
戦績
国内:17戦7勝
総収得賞金
737,467,000円
オルフェーヴル
母 (母父)
ライラックスアンドレース(USA)  by  Flower Alley(USA)
馬主
(有) サンデーレーシング
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
松永 幹夫
騎手
C.ルメール
  • 芝G1 7勝馬ジェンティルドンナの育成も手がけてきた
    芝G1 7勝馬ジェンティルドンナの育成も手がけてきた
  • 日に日に馬体を大きくしていく当歳馬たち
    日に日に馬体を大きくしていく当歳馬たち

 京都から阪神に開催地が変わったエリザベス女王杯(G1)で、史上4頭目となる連覇を果たしたラッキーライラック。この偉業を2年続けてバックアップしてきたのが、昨年、そして今年と牧場での管理を任せられた、ノーザンファーム空港のC3厩舎である。

 「昨年はヴィクトリアマイル(G1)から、府中牝馬S(G2)まで期間があったので、じっくりと調整することができましたが、今年は札幌記念(G2)の後から、エリザベス女王杯(G1)までの調整。実質、一か月半ぐらいの時間しか無く、しかもいきなりのG1挑戦というプレッシャーもありました」と話してくれるのは、ノーザンファーム空港C3厩舎の鈴木俊昭厩舎長。ただ、昨年と違っていたことは、ラッキーライラックの疲労度であり、乗り出しを始めた際には前脚の出も、昨年よりスムーズだったという。

 「ここでいいリフレッシュもさせたい。でも、G1にぶっつけで臨むことを考えると、緩めるわけにもいかない。その加減がとても難しかったです」

 ただ、ここでの過ごし方を、誰よりも理解していたのはラッキーライラックだった。昨年よりも大人になった立ち振る舞いをしていた一方で、その集中力はいつも途切れることが無かったという。

 「虎視眈々と次のレースを狙っているような印象すらありました。それだけに馬体面だけでなく、この気持ちも途切れさせること無く調整していくように務めました」

 レースの前に、鈴木厩舎長はホッとしたエピソードがあったと教えてくれる。それはレースに向けての追いきり時計がどんどん詰まって行っているのを見たときであり、そして管理をする松永幹夫調教師からの、「北海道でしっかりと充電させてもらった」との言葉だった。しかし、いい状態でレースに挑めると思いきや、このエリザベス女王杯(G1)におけるラッキーライラックの枠順は大外18番枠。小回りで先行馬が有利のコース形態、そしてラッキーライラック自身も内枠での好走パターンが多かっただけに、枠順発表後は不安視する声も聞こえてきた。

 「内枠の方が好走していましたが、阪神芝2200mだとスタートしてからの直線も長いですし、ポジションを取れれば何とかなると信じてました。また、パドックの姿を見たときにも、ラッキーライラックだけが一頭違う馬に見えましたし、あとはルメール騎手を信じるだけでした」

 ゲートが開くと、ラッキーライラックは大外枠から徐々に内へと進路を向けていく。中団で待機するも折り合いの不安は無く、3コーナーからポジションを上げていき、その勢いのまま、最後の直線では一気に先頭ヘと躍り出る。そのまま集中力は途切れること無く、最後は追い込んできたサラキアとラヴズオンリーユーを振り切ってゴール。着差以上の強さをまざまざと証明した。

 「スタート、ポジション、仕掛けなど、全てにおいてルメール騎手が上手く乗ってくれました。折り合いも付いていましたし、直線で抜け出したときにはもらった!と思いました」

 勝利の余韻に浸っていた鈴木厩舎長であったが、その後、改めてG1に直接向かう馬を管理してきたというプレッシャーから解放されたことを実感した。

 「探り探りでやってきたことばかりだっただけに、正直、自信はありませんでした。それだけに自分だけで無く、厩舎のスタッフにとってもいい経験をさせてもらいましたし、この経験を今後の管理馬にも生かしていかなければとの思いもあります」

 ラッキーライラックの馬名の由来だが、幸運のシンボルとされる、五弁のライラックの花。このエリザベス女王杯(G1)でG1 4勝となったが、馬名の通りに5つのG1勝利という花びらを広げるところまで来ている。

 「クラブの規定的にも残り少ないチャンスですが、ここまで来たらもう一つG1を勝ってもらいたいです。次走は有馬記念(G1)を予定していますが、そこで叶えてくれるのではと今からわくわくしています」

 様々な関係者だけでなく、ファンにも幸運をもたらす走りを見せてくれているラッキーライラック。有馬記念(G1)で5つ目の花弁を広げられた時、日本中が幸せに包まれるのかもしれない。