2020年04月12日 桜花賞 G1
優勝馬:デアリングタクト
プロフィール
- 生年月日
- 2017年04月15日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/青鹿毛
- 戦績
- 国内:3戦3勝
- 総収得賞金
- 610,915,000円
- 馬主
- (株) ノルマンディーサラブレッドR
- 生産者
- 長谷川牧場 (門別)
- 調教師
- 杉山 晴紀
- 騎手
- 松山 弘平
「名は体を表す」などと言うが「大胆な戦法」を意味する愛馬デアリングタクトを、16年ぶり7頭目となる不敗の桜花賞馬へと導いた松山弘平騎手が取った後方一気の作戦には、生産者の長谷川牧場・長谷川文雄さんも「驚いた」という。
この日の阪神競馬場は雨。芝、ダートともに良馬場発表で始まったが、午前中最後のレースが終わると「やや重」馬場になり、とうとう第10競走の前には「重馬場」へ変わった。英国1000ギニーに範をとり、阪神競馬場の芝1600mコースを舞台に最もスピードがある馬を選定する桜花賞(G1)が重、または不良馬場で行われたのは1997年(優勝馬キョウエイマーチ)以来、10回目。このときは、玉砕的に逃げた馬をピタリとマークしたキョウエイマーチが、早め先頭から後方から追い上げるメジロドーベルを尻目に4馬身差で押し切っている。
デビューからの2戦をいずれも出走メンバー最速の上がりタイムで勝ち上がってきたデアリングタクトではあったが、長谷川さんは「今回のような馬場では、今までの戦法では厳しいだろうな」と思っていたそうだ。ところが、ゲートが開くと「水色,白山形二本輪,袖白縦縞」の勝負服は、5分のスタートから徐々にポジションを下げて後方待機。しかもインコースで他馬の跳ね上げる泥をかぶるような位置。思わず、目をつぶったというが勝負どころの3~4角で巧みに外へと持ち出されると、最後の直線で持ち前の爆発力を発揮。馬場状態を考慮した完璧な騎乗で逃げ込みを図る1番人気馬を力でねじ伏せるように突き抜けた。
「嬉しいなんてもんじゃない。自分のような牧場にとってクラシックはもちろん、G3の重賞競走でも出走させるのが夢。馬は本当によく頑張ってくれたと思うし、ここまでしっかりと育ててくれた育成牧場や、仕上げてくれた厩舎。馬を信じた松山騎手の度胸などどれ一つなくても、この勝利はなかった」と笑った。長谷川牧場は、もう間もなく70歳になろうかという文雄代表と長年苦楽をともにしてきた妻の2人だけで営む家族経営の牧場だ。デアリングタクトが生まれた2017年の生産頭数は5頭。生産馬が重賞競走に出走したのは2013年のマイラーズカップ(G2)以来で、重賞勝利となると2010年の小倉大賞典(G3)(オースミスパーク)までさかのぼらなければならない。
それでも「自分にできることは手を抜かずにやってきたつもり。昔からの方法でも良いと思うことはやってきたし、海外の牧場で行われていることでも良いと思うことは取り入れてきた。ただ、そんなことはどこの牧場でもやっていること。あの馬がせり市場で取引されたことも含めて、馬に運があったのだろうと思う。こんな気分にさせてもらって幸せです」と話し「デアリングタクトの全妹はセレクトセールに上場させる予定ですし、母デアリングバードは、今年はドレフォンの仔が生まれる予定です。頑張ってくれたデアリングタクトに恥ずかしくないように、しっかりと育てていきたいです」と前を向いている。