2019年12月15日 朝日杯フューチュリティS G1
優勝馬:サリオス
プロフィール
- 生年月日
- 2017年01月23日 02歳
- 性別/毛色
- 牡/栗毛
- 戦績
- 国内:3戦3勝
- 総収得賞金
- 457,631,000円
- 父
- ハーツクライ
- 母 (母父)
- サロミナ(GER) by Lomitas(GB)
- 馬主
- 有限会社シルク
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 堀 宣行
- 騎手
- R.ムーア
その時、ノーザンファーム早来の木村厩舎に在籍していたスタッフが、誰もが一度は跨がった馬だった。その馬の背中は、いつしかG1馬の背中ともなった。
そして、木村浩崇厩舎長にとっても、管理馬では最初のG1馬となったサリオス。その歓喜の瞬間を、木村厩舎長は阪神競馬場で体感した。
「その週は13日からノーザンファームしがらきに研修に行っており、15日も朝から阪神競馬場にいました。しがらきのスタッフも『見た目からは想像出来ないほどの乗り味をしている』と話していましたし、いい状態で厩舎に送り出せたことも教えてくれました」
木村厩舎にいた頃のサリオスは、見た目から伝わってくる安心感だけでなく、実際に誰が乗っても大丈夫だと思えるような気性を持ち合わせていた。入社して間も無いスタッフが跨がっていただけで無く、動じないその性格も相成って、調教コースまで同世代の馬を先導する、リードホースの役割も果たせていた程だった。
「その分、調教では自分から動こうとはしなかったので、途中から自分が跨がって行く気を促したり、馬体を引き締めるために他の馬とは調教メニューも変えました。結果として、運動量がかなり多くなっていたと思います。
ただ、それだけのメニューをこなしながらも、脚元の不安は全くと言っていいほど無く、その上、様々なデータ面でもサリオスは優秀な数値を残していた。緩さのあった歩様も、それが柔軟さとなっていき、堀厩舎の入厩時に木村厩舎長が立ち会った際にも、堀調教師からは、「見た目とは違って、素軽い動きができる」との評価を得るようになっていた。
「パドックを周回する姿を見ても、緩さは残ったままでしたが、馬体重よりもすっきりとした印象がありました。しがらきのスタッフや、堀厩舎の皆さんがいい状態に導いてくれたと思いますし、そして、ムーア騎手がいいポジションでレースを進めてくれたことが、この勝利に繋がったと思います」
函館2歳S(G3)を逃げ切ったビアンフェが主導権を握ったレースは、1000mが57秒2というハイペースで流れていく。その逃げを見る形でサリオスは3番手を追走。だが、そのビアンフェだけでなく、逃げ馬や先行馬が最後の直線で失速していったのに対し、サリオスはスピードを持続させたままゴール板へと向かっていく。
「最後のコーナーを回った時、タイセイビジョンがいい感じで上がってくるのが見えました。その時は焦りましたが、ゴール前の坂を登り切った時には『勝った!』と思いました」
直線勝負に出たタイセイビジョンの上がり3ハロンのタイムが35秒3だったのに対して、ハイペースを粘りこんでいたサリオスの上がりタイムは35秒4。まさに「テン良し、中より、終い良し」となった結果、計時された勝ち時計のタイムは1分33秒0。17年にダノンプレミアムが記録した、1分33秒3のレースレコードを0秒3更新。強さだけでなく、桁違いの速さも兼ね備えた馬であることを証明してみせた。
レースの後は口取りにも加わった木村厩舎長であるが、実はG1の口取りは厩舎スタッフだった頃も含め、これが初めてだったと話す。
「林厩舎にいた頃も、数多くのG1馬に乗せてもらっていましたが、自分が応援に行ったら勝てないような印象もありました。堀厩舎でサリオスに関わった助手の方も、これが初めてのG1馬だったそうで、その意味では初めてが揃ったG1勝利ともなりました」
そう話す木村厩舎長であるが、その話しぶりからも、決して喜びに浸りきっている感じは受けない。
「厩舎として、ようやく1つの目標が達成できたと思っています。勿論、サリオスのこれからの活躍も楽しみですが、ここから送り出した馬たち全てに、まだまだ勝ち鞍をあげてもらえるように、そして目の前の育成馬たちにも、それに続く活躍が残せるようにスタッフ一丸で取り組んでいきたいです」と表情を引き締める。
サリオス自身、マイルであれだけのパフォーマンスを見せた以上、2020年はどんな競馬を見せてくれるか楽しみでならないが、「この勝利で自信が確信に変わったような気がします」との木村厩舎長の言葉にもあるように、更に強く、そして速いレースを我々の目の前で見せてくれることだけは間違いなさそうだ。