馬産地ニュース

第53回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウムが開催される

  • 2025年07月28日
  • 第53回目を迎えたシンポジウム
    第53回目を迎えたシンポジウム
  • あいさつする松田芳和JRA馬事部部長
    あいさつする松田芳和JRA馬事部部長
  • 講演後は活発な質疑応答が行われた
    講演後は活発な質疑応答が行われた

 7月17日、新ひだか町静内吉野町にある静内エクリプスホテル2階エクリプスホールにおいて、JRA日本中央競馬会が主催する第53回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウムが開催された。

 このシンポジウムは毎年7月に馬産地で開かれる恒例行事。全国各地の獣医師のほか、獣医医療や軽種馬関係者が出席した。

 開催に先立ち主催者を代表して松田芳和JRA馬事部部長は「生産地の先生方におかれましては、日ごろより予防接種の推進事業、馬伝染性子宮炎蔓延侵入まん延防止事業、あるいは、生産地疾病等の調査研究などにつきまして、多大なるご協力をいただきまして、まことにありがとうございます。これらの防疫対策事業につきましては、生産地を衛生上から守る大変重要な事業になっております。引き続きご協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 ご存じのように、今年4月に馬のインフルエンザが2008年以来、九州の熊本県と北海道のほうで発生がございました。北海道のほうは帯広の競馬場で流行が拡大しまして、ばんえい競馬が一時休止するなど、非常に経済的な打撃を受けました。幸いにも、ここ新ひだか町、サラブレッドに対してはインフルエンザの発生はございませんでしたが、生産地のみなさまが日ごろより防疫対策をされている賜物とおもっております。引き続き、馬の飼養衛生管理、ワクチン接種の徹底に努めていただきたくお願い申し上げます。
 さて、本日のシンポジウムは53回目を迎えました。今回は2022年から2024年まで取り組んだ2つがテーマになります。最新の知見が発表されます。今日のシンポジウムが有意義なものになるよう、どうぞ活発な意見交換、質問等をお願いいたします。みなさまにとって実りある一日になるよう祈念いたします」とあいさつした。

 本年のシンポジウムは「消化管内寄生虫に関する実態調査」と「馬感染症のサーベイランスおよび疫学調査」の2つがテーマ。

 「消化管内寄生虫に関する実態調査」は、JRA日高育成牧場の丹羽秀和氏とJRA馬事部の村瀬晴崇氏が座長を務め、JRA馬事部の村瀬晴崇氏が「獣医師アンケートからみた寄生虫管理の実態」、NOSAI家畜高度医療センターの浦田望氏が「回虫症、条虫症の発生状況と開腹手術成績」、
 NOSAI日高東部家畜診療所の野村脩氏が「サラブレッド生産牧場における消化管寄生虫に関する調査」、BTC軽種馬育成調教センターの多田健一郎氏が「育成牧場における消化管寄生虫対策および虫卵排出状況ならびに駆虫薬の有効性」、
 北海道大学の中尾亮氏が「馬における消化管寄生虫診断法の現状と今後の課題」を演題に講演、「馬感染症のサーベイランスおよび疫学調査」は、丹羽秀和氏が座長となり、JRA競走馬総合研究所の木下優太氏が「細菌感染症のサーベイランスⅠ~ローソニア感染症、サルモネラ感染症およびロドコッカス・エクイの薬剤感受性~」、JRA競走馬総合研究所の坂内天氏が「ウイルス感染症のサーベイランス(2020年~2024年)」、
 JRA競走馬総合研究所の上野孝範氏が「馬のパピローマウイルス関連皮膚疾患に関する調査」、日高家畜保健衛生所の澤結子氏が「細菌感染症のサーベイランスⅡ~多剤耐性ロドコッカス・エクイ株の解析および抗菌薬使用アンケート~」を演題に講演した。

 それぞれの講演後にはフロアからの質問や意見、助言、アドバイスなどがあったほか、総合討論も行われた。