馬産地ニュース

北海道日高装蹄師会第31回装蹄競技大会が行われる

  • 2025年03月26日
  • 総合優勝した川井伸太郎さん
    総合優勝した川井伸太郎さん
  • 単独造鉄(新標準蹄鉄07タイプ)の競技
    単独造鉄(新標準蹄鉄07タイプ)の競技
  • 規定時間60分以内の装蹄競技
    規定時間60分以内の装蹄競技
  • 職人の技が光る選手が作製した蹄鉄
    職人の技が光る選手が作製した蹄鉄

 3月24日、浦河町西舎にあるJRA日本中央競馬会日高育成総合施設軽種馬装蹄所において、第31回装蹄競技大会が行われた。

 この装蹄競技大会は、会員の装削蹄技術の向上と連帯強化を目的としたもの。日高や胆振などの認定装蹄師で組織される北海道日高装蹄師会(門別尚省会長、会員86名)が主催し、公益社団法人日本装削蹄協会、北海道庁、JRA日本中央競馬会日高育成牧場、浦河町、公益財団法人軽種馬育成調教センター、公益社団法人日本軽種馬協会静内種馬場、日高軽種馬農業協同組合、日本中央競馬装蹄師会、滋賀県装蹄師会、南関東競走馬装蹄師会、岩手競馬装蹄師会、クレイン装蹄師会、北海道牛削蹄師会が後援、(株)タイワ、(有)ファイ健ホース、(有)今井製作所、(有)エフ・エム・オーが協賛している。

 10月に栃木県宇都宮市で開催を予定している全国装蹄競技大会の予選を兼ねており、毎年3月に実施。今年は21歳から41歳までの14人の会員とオープン参加2人の合計16人が出場した。

 競技は全国装蹄競技大会競技規定に準じており、所要時間25分で、3分6鉄桿を用い、前肢または後肢いずれかの左右を作製する単独造鉄(新標準蹄鉄07タイプ)、所要時間25分で判断用馬1頭につき与えられた判断用紙に前肢・後肢の肢勢、蹄形、歩様、疾病損徴、多削部位、装蹄の方針などを記入提出する装蹄判断、規定時間60分以内に指定された実馬の前肢1蹄に合わせた07タイプ蹄鉄1個を単独で造鉄し、その蹄鉄を用いた装蹄と門別尚省会長が指定する課題蹄鉄1個の造鉄を完了する装蹄の3種目で実施。単独造鉄は8項目の細目に区分し200点満点、装蹄判断は100点満点、装蹄は、装蹄用蹄鉄、削蹄、仕上げの細目に区分し、各90点と、課題蹄鉄の100点の370点満点で採点し、単独造鉄競技の成績上位8人が、最後の競技の装蹄に進んだ。

 3つの競技については、能登拓巳JRA日高育成牧場専門役を競技審査委員長に、北海道日高装蹄師会の中館敬貴理事、森野健太副会長、大東正史副会長という3名の全国装蹄競技大会総合優勝経験者が競技審査委員となり、全国装蹄競技大会競技規定に準じて審査。出場選手は日ごろの業務で身につけた装削蹄技術や知識をフルに発揮して懸命に課題に取り組んだ。

 厳正な審査の結果、滋賀県のノーザンファームしがらきに勤務する川井伸太郎さんが2年連続2回目の総合優勝。川井伸太郎さんを含めた上位5人が全国装蹄競技大会の出場枠を獲得した。

 褒賞授与式では総合優勝の川井伸太郎さんに対して、競技大会会長を務めた門別尚省会長が賞状と記念品、黄金に輝く優勝カップを贈呈。公益社団法人日本装削蹄協会、北海道庁、JRA日高育成牧場、浦河町、公益財団法人軽種馬育成調教センター、公益社団法人日本軽種馬協会静内種馬場などからも賞状や記念品が贈られた。

 来賓を代表して公益社団法人日本装削蹄協会額田紀雄常務理事は「この競技大会は今回で31回を迎え、全国大会の登竜門として本大会を勝ち抜いた選手が全国大会で優勝されるなど、高い技術水準を誇る競技大会として、認識されております。このことは北海道日高装蹄師会のみなさまと先輩方のたゆまぬ努力と研鑚のたまものと心から敬意を表する次第であります。今回めでたく褒賞を受けられました選手のみなさま方におかれましては、心からお祝いを申し上げますとともに、全国装蹄競技大会へ向けて、よりいっそうの精進をお願いいたします。一方、残念ながら選に漏れた選手におかれましては、自らの技術を顧みる絶好の機会と、とらえていただきまして、さらに技術の鍛錬に励まされ、再度挑戦することをお願いいたします。
 さて、馬産業においては、後継者不足が危ぶまれ、人材育成が重要な課題となっています。装蹄業界においても、同様の懸念があることから、本協会では理事会において、来年度から講習生の定員を20名に増員することを決定いたしました。人材育成にあたっては、このように入り口を広げることも大事ですが、もっと重要なのは、若者がはたらき続けたいという環境を醸成することであります。そのためには、労務環境の改善とともに、やりがいを創出するということも大事になってまいります。そういった意味で、このような競技大会や研修会を実施することは、技術への意欲を高め、やりがい創出に大きく役立っているものと考えております。今後とも日本装削蹄協会としては、このような技術向上を図る競技大会を応援し続けたいとおもっております。北海道日高装蹄師会のみなさまが、ますます発展されることを祈念いたします」と井上眞会長の祝辞を代読。
 門別尚省会長は「本日、第31回装蹄競技大会を無事に終えることができました。これもひとえに、JRA日高育成牧場様、BTC様、ご後援、ご協賛をいただきました関係各位のおかげだと心より感謝申し上げます。選手のみなさま、練習期間も含めてご苦労様でした。選手のみなさまにとって、この大会で優勝すること、全国大会に出場すること、そして、全国大会で優勝するということが、最大目標であるとおもいます。しかし、この競技大会に出場することには大きな意義があるとわたしは考えております。大会に向かって練習することはもちろん、自分の仕事を審査してもらうことで、正しい基準、正確な物差しを身につけること、正しい基準に修正していく修正力を身につけることなど、自分次第で成長できる大切な機会とおもっております。今後も多くの選手に出場していただきたいと願っております。また、会員のみなさまには、早朝より長時間にわたりご協力いただき、まことにありがとうございました。装蹄競技大会は日高装蹄師会にとって、最大のイベントであり、装蹄技術の向上には欠かせない重要な大会だとおもっております。われわれも、より良い大会運営ができるように協議してまいりますので、今後ともみなさまのご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。本日はまことにありがとうございました」とあいさつした。

 総合優勝の川井伸太郎さんは「去年初めて優勝してよい結果が出たので、それが全国大会で準優勝につながっていったのですが、自分の分析ではかなり評価していただいての2位だったかなとおもっていたので、そこでおもった課題にトライしてみたら、ありがたいことに優勝できました。コンスタントに結果を出すのが難しい競技ですので、全国大会で優勝できるよう高いレベルでコンスタントに結果を残すように取り組んでいきたい」と話した。

 結果は下記の通り(敬称略)。

総合優勝:川井伸太郎(滋賀県)506.6点
総合第2位:岡本昂昌(浦河町)445.3点
総合第3位:武藤涼(千歳市)410.8点
総合第4位:鳶口隼弥(苫小牧市)390.5点
総合第5位:元井悠貴(千歳市)382.2点

部門賞
単独造鉄(新標準蹄鉄07タイプ):川井伸太郎(滋賀県)141.6点
装蹄判断:川井伸太郎(滋賀県)、岡本昂昌(浦河町)88点
装蹄:川井伸太郎(滋賀県)277点