〝なまらがばい〟。直線距離にすれば1,500km弱ほどの距離にある佐賀県鳥栖市と北海道日高町を結んだ「2024JBC」。24回目にして初めて九州地区での開催が話題となったが、明日のスターを夢見る若武者たちによる「JBC2歳優駿(Jpn3)」は5回目となる今年も門別競馬場1,800mコースで、11月4日に行われた。勝ったのは、日高町グッドラック・ファーム生産で、5番人気だったソルジャーフィルド。道中は後方3番手で進み、最後の直線で自慢の末脚を繰り出して優勝。ホッカイドウ競馬所属馬としては、第1回ラッキードリーム以来の勝利となり、デビュー7戦目の重賞初勝利をダートグレードの舞台で飾った。

 昨年は勝ったフォーエバーヤングが全日本2歳優駿(Jpn1)を経てサウジダービー(G3)、UAEダービー(G2)と連勝し、2着サンライズジパングも不来方賞(Jpn2)、古馬相手の「みやこS(G3)」に勝つなど、今や単なるJpn3競走以上の存在意義を持つ「JBC2歳優駿(Jpn3)」。虎視眈々と、そのタイトルを狙っていたのは1戦毎に自慢の末脚に磨きをかけていたホッカイドウ競馬所属のソルジャーフィルドだった。

 1,100mのデビュー戦は、のちに重賞3連勝を記録するゼロアワーの逃げ切りを許しての2着だったが減量騎手を起用して1,200mのアタックチャレンジ競走を好タイムで圧勝。しかし、デビュー前から「距離延びてから」と、愛馬の資質を見抜いていた川島洋人調教師は、少しずつ距離を延ばしながら大切に育ててきた。1,700mのパール特別、ウィナーズチャレンジを連勝。意気揚々と重賞初制覇を目指して出走したのはブリーダーズゴールドジュニアカップ。そこでソルジャーフィルドの前に立ちはだかったのは同厩舎のリコースパローだった。リベンジを誓ったサンライズカップも同馬の前に2着。いずれのレースも上がり3ハロンは勝ち馬と同タイムを記録したものの、明暗を分けたのは位置取りの差だった。

 しかし、愛馬の末脚に絶大なる自信を持っている小野騎手は「JBC2歳優駿(Jpn3)はペースが速くなるからチャンスがあるはず」とひそかに牙を研いでいた。

 レースでは、サンライズカップ同様にエイシンキャプテンが逃げて、リコースパローが2番手。しかし前半3ハロンの通過ラップはサンライズカップが38秒1だったのに対して今回は37秒0と1秒以上も速い。やや離れた3番手にJRAのローランドバローズ、イサナ、そして1番人気のタガノマカシヤが続き、ソルジャーフィルドは腹をくくったかのように後方で脚を溜める。向こう正面に入っても意地とプライドをかけた戦いは激しさを増してペースは落ちるどころか逆に12秒5。12秒4と加速し、隊列が縦に長く伸びる。このペースに苦しくなったのは先行勢だ。3角手前でエイシンキャプテンが脱落し、押し出されるようにリコースパローが先頭に立とうとしたところ、内ラチ沿いに向こう正面でスパートをかけてきたJRAのダノンフェルゼンが先頭を奪う。コーナーリングに長けた桑村騎手らしい奇襲戦法で1度は先頭に立ったものの、1番人気のタガノマカシヤがこれに食らいつく。しかし、これらを外からまとめて差し切ったのが「祈るような気持ちで」愛馬を叱咤激励してきた小野騎手が手綱を取るソルジャーフィルドだった。さすがに最後2ハロンは13秒6、13秒5と上がりがかかる展開になったが、それでも2着以下に3馬身差。完璧な勝利となった。

 この勝利が今シーズン最初の重賞勝利となった小野騎手は「馬に感謝したい。今でもこのような競馬ができる馬。まだまだ成長していくと思うので、どこまで強くなってくれるか楽しみです」と相好を崩し、リコースパローとの2頭出しで挑んだ川島洋人調教師は「ここ数戦の中では最も調子が良く、展開がはまってくれればと期待していたが、結果を残せてほっとした」と9つ目の重賞タイトルを神妙な面持ちでレースを振り返った。