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サッポロクラシックCはイイデマイヒメが制する

  • 2024年08月16日
  • 強烈な末脚で初タイトルを手繰り寄せたイイデマイイヒメ
    強烈な末脚で初タイトルを手繰り寄せたイイデマイイヒメ
  • 今シーズン初重賞勝利の阿部騎手
    今シーズン初重賞勝利の阿部騎手
  • 「馬を信じていました」とインタビューに答える阿部騎手
    「馬を信じていました」とインタビューに答える阿部騎手
  • 父カリフォルニアクロームにとっては国内初重賞勝利
    父カリフォルニアクロームにとっては国内初重賞勝利
  • 村上調教師(左端)にとっては3年ぶりの重賞勝利
    村上調教師(左端)にとっては3年ぶりの重賞勝利

 8月8日、門別競馬場ダート1,200mコースでJBC協会協賛アドマイヤマーズ賞「第11回サッポロクラシックカップ」(1着賞金400万円)が行われた。このレースは9月1日に札幌競馬場で行われる「シンガポールターフクラブ賞」の指定競走に位置付けられており、優勝、または上位入線すれば同競走へと推薦される。

 出走馬は11頭。その中で最も人気を集めたのは吉原寛人騎手を配して挑んだサウンドバッハだった。半姉に門別競馬場で14勝を記録している現役トップスプリンターのブリックロードがいる血統。6月のデビュー戦ダート1,100mでは9馬身差の圧勝。勝ちタイムの1分7秒1(良)は。今年行われた22鞍の中で最速タイム。そのレースの2、4、5、6着馬が次走であっさりと勝ち上がっていることが、レベルの高さを物語っている。2戦目には1,700mのターフチャレンジが選ばれ2着も3着以下に5馬身の差をつけて、能力の高さを示している。短距離に戻されたここはオッズが2.0倍の支持を集めての1番人気となった。

 2番人気はアタックチャレンジ、ルビー特別、ターフチャレンジと後続に影をも踏ませぬ快走で3連勝中のジュゲムーン。こちらは中1週というローテーションでの重賞挑戦となったが、それゆえの豊富なキャリアと5戦していまだ連対を外していないというキャリアが評価されてオッズは4.0倍での出走となった。

 これらに続いたのが5月のフレッシュチャレンジを勝ち、6月のウィナーズチャレンジではのちにリリーカップに勝利するリオンダリーナの2着と健闘したベラジオドリーム。今回はデビュー3戦目にして初の1,200m戦となるが、その前走は、後方から出走メンバー最速の末脚で2着。距離延長は味方になるとみられていた。オッズは4.5倍。この3頭が10倍を切る単勝オッズで、以下1戦1勝のフィエレッツァがオッズ12.2倍、同じく1戦1勝のイイデマイヒメのオッズ13.2倍と続いていた。

 門別競馬場の1,200mコースは2角奥のポケットからスタート。ほぼ全頭が互角のスタートを切ったものの1番ミラクルヴォイスと9番パレスゴールドが二の脚つかずに後方に置かれる中、人気を集めたベラジオドリームとサウンドバッハ、そして1,000mのフレッシュチャレンジ競走を逃げ切ったレイヴオンによる激しい先行争いはインコースのベラジオドリームが制する形になったが最初の2ハロンが22秒5というハイペース。とくに2ハロン目の10秒2は、先月行われた3歳以上馬による星雲賞が23秒4、11秒0だったことからも速い。徐々にキャリアのないレイヴオンが下がり始め、代わりにジュゲムーンが押し上げてくる。それぞれに騎乗するのはベテランジョッキーだから、速いのはわかっているはずだが引くに引けない先行争いとなった。

 こうした流れの中、後方で息をひそめるようにじっとしていたのが「長い距離の競馬が好き。門別競馬場は1,000mと1,200mでは全然違う」という阿部騎手が騎乗したイイデマイヒメだった。好スタートを切ったものの「馬を信じていました」と。激しい先行争いをするライバルたちをみながら後方に下げ、追撃を開始したのは3角を回ってから。残り200m付近では完全にベラジオドリームが抜け出して独走態勢かと思われたが、大歓声に背中を押されるようにグイグイ伸びて先頭を交わし、そして突き放した。完全に消耗戦となったが、さらに後方にいたミラクルヴォイスを抑え込んだベラジオドリームも中身の濃い2着だった。

 昨年のオスカーブレインに続いて同レース連覇を成し遂げた阿部騎手は「状態はとても良いと感じていましたし、折り合いに心配のない馬。勝負どころで外に出したときの反応が良かったので、その時に届くのではないか思いました。素質が高く、いつも真面目に走ってくれる馬なので、次も楽しみにしたい。良い馬に乗せてもらえてありがたい」とインタビューに答え、村上正和調教師の重賞勝利は2021年星雲賞以来の重賞勝利で通算11勝目。「強い馬に巡り合って、大事に育ててきた甲斐があった。正直言えばもう1週欲しかったが、パドックでも返し馬でも落ち着いていたので、どれくらいの脚が使えるかを楽しみにしていた。(父カリフォルニアクローム)という血統的から、距離の融通性はありそうなので、次は長めの距離を試してみたい」とコメントした。