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北海優駿はパッションクライが勝利

  • 2024年06月19日
  • 生産は田中勝春元騎手の実家だ
    生産は田中勝春元騎手の実家だ
  • 楽に抜け出して後続を封じた
    楽に抜け出して後続を封じた
  • 2年連続5度目の北海優駿制覇に「嬉しいです」と桑村騎手
    2年連続5度目の北海優駿制覇に「嬉しいです」と桑村騎手
  • デビュー以来、最高馬体重で挑んだ大一番
    デビュー以来、最高馬体重で挑んだ大一番
  • 右端が北海優駿初制覇の山口調教師
    右端が北海優駿初制覇の山口調教師

 「ダービー」の文字が消え、ダービーシリーズが消滅してもホッカイドウ競馬の関係者にとって北海優駿(ルヴァンスレーヴ賞)が世代の頂点を決めるレースであることに変わりはなく、またその勝者には最大限の名誉が与えられる。

 今年は北斗盃の上位3頭が顔を揃えたほか、まだ底を見せていないスティールドリーム、岩手のダイヤモンドC2着のオオイチョウほか、JRAの未勝利戦を勝ち上がって転入してきたアムレートゥムなど多士済々のメンバー。そうした熱戦をひと目見ようと850人を超える関係者、ファンが競馬場に足を運んでファンファーレを待った。

 人気の中心は、前走の北斗盃で脚質的に決してベストな条件とは思えない内回りコースで圧勝したブラックバトラー。持ち味の末脚は、外回りコースとなってさらに威力を増すものと、オッズでは2.3倍の支持を受けた。当面の相手と目されるパッションクライとは南関東での1戦を含め、過去4回顔を合わせて2勝2敗とほぼ互角だ。

 北斗盃の雪辱を期すパッションクライの持ち味は先行力。昨年秋のJBC2歳優駿(Jpn3)では逃げたJRA所属馬を積極的に追いかけると3角で並びかけて4角先頭。最後は力尽きたものの、ぴったりとマークされた相手はダートの未勝利戦を圧勝し、のちにホープフルS(G1)で3着となったサンライズジパング。勝ったのがケンタッキーダービー(G1)3着のフォーエバーヤングなら称えたい積極策だった。オッズは2.6倍。

 レースは、「ここが最大の目標だった。前走よりも調子は上がっている」というパッションクライの逃げでスタートした。最初の1ハロンは互いに様子をみるように13.6秒。しかし「誰もいかないなら」とパッションクライの桑村騎手が1角までにペースを握る。途中、少々力むようなところもあったが、すぐに落ち着きを取り戻して半マイル通過が51.1秒で、前半1,000mが65.2秒。その後も13秒台中盤のラップを刻む。ブラックバトラーはマイポジションの後方3番手で、北斗盃2着ミソはスティールドリームとともには中団で脚をためる。レースが動いたのは3角過ぎ。吉原騎手が手綱を取ったジャガーバローズがパッションクライに並びかけ、そこに石川騎手騎乗のオオイチョウもポジションを上げる。落合騎手のブラックバトラーも手綱を激しく動かして前を追うがゴール前3ハロンが13.6秒、13.1秒、12.3秒という加速ラップでは苦しい。パッションクライの逃げ切りが濃厚となり、それでも残り200mから差を詰めて2着を確保したのは流石だ。

 勝ったパッションクライを生産したのは新ひだか町の田中春美牧場。JRAの人気ジョッキーだった田中勝春現調教師。いわゆる三冠競走という意味では2010年佐賀のロータスクラウン(インザエア)以来で、いわゆるダービーは2009年岩手の不来方賞(グレードアップ)に続く勝利となった。

 「馬の機嫌を損ねないようにした」と桑村騎手は、昨年のベルピットに続いて2年連続5回目の北海優駿制覇。管理する山口竜一調教師にとっては初の北海優駿制覇となった。北関東の名手として名を馳せ、現役時代はカネユタカオーで栃木三冠など数々のタイトルを獲得した名手にとっても、やはり特別なレース。「このレースから逆算して調教し、思うような状態でレースを迎えることができた。今日はだいぶ楽なペースで競馬をさせてもらったが、まだまだ伸びしろを感じさせてくれる馬なので、これからも楽しみ」と充実の笑顔で勝利をかみしめた。