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日本軽種馬協会静内種馬場で2024年(第46期)生産育成技術者研修開講式が行われる

  • 2024年04月04日
  • 夢に向かい目を輝かせる第46期生16人
    夢に向かい目を輝かせる第46期生16人
  • エールを送るJRA日高育成牧場浮島理場長
    エールを送るJRA日高育成牧場浮島理場長
  • 自己紹介をして親睦を深めた昼食会
    自己紹介をして親睦を深めた昼食会

 4月3日、公益社団法人日本軽種馬協会(河野洋平会長理事)は、新ひだか町静内田原にある静内種馬場研修所において、2024年度(第46期)生産育成技術者研修の開講式を挙行した。

 第46期生は51人の応募の中から選考試験を経て選ばれた18歳から26歳の16人。北海道、青森県、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、長野県、京都府、大阪府、佐賀県出身の男性9人、女性6人で、真のホースマンを目指して4月1日に1年間の研修生活を送る研修寮に入寮したという。

 開講式には研修生のほか、日本軽種馬協会の職員や研修生の家族、来賓が出席。研修生16人の氏名が読み上げられ紹介された後、遊佐繁基場長から「2024年度生産育成技術者研修生16名の入講を許可します」と入講許可が出された。

 続いて山岸直樹事務局長が「まずもって、本日、入所された16名の研修生のみなさんには、心からお祝いを申し上げます。みなさんが就業を希望されている軽種馬産業の状況を紹介しますと、新型コロナウイルス感染症流行から社会経済活動の正常化が進むいっぽう、世界的な情勢不安やインフレ、国内でも物価上昇など生活面にも不透明感が漂う状況のなか、わが国の競馬は確実に開催され、昨年は中央競馬、地方競馬ともに前年比を上回る売り上げを記録し好調が続いております。また、生産界におきましても、せり市場での取引が活況を呈し、昨年の年間売却頭数、総売り上げは過去最高を記録、生産頭数、種付牝馬頭数ともに増加傾向にあり、順調に前進を続けています。このように、一時期苦しい状況におかれていた競馬産業も、ここ数年はふたたび盛り上がりを見せております。いつの時代においても、競馬を盛り立てていくためには、多くのファンを引き付けるような強い競走馬を生産、育成し、競走の魅力を向上させることが最も重要な課題となっております。そのためには、生産育たる、みなさんのような技術者の力が不可欠でございます。本協会では、生産育成界の期待に応えうる技術者を養成するため、平成2年から本研修を開講しております。今年ですでに34年の歴史を有し、これまでに508人にのぼる修了生を、軽種馬生産界に送り出してきました。本研修事業に対する競馬サークルの期待は大きく、歴代の修了生もこの期待に応えるべく、それぞれの職場でおおいに活躍されております。みなさんが本日から受ける研修の内容は多岐にわたっており、騎乗技術、馬の飼養管理や繁殖に関する幅広い知識に加え、およそ牧場で必要となる作業全般について体得していただくこととなります。研修中はどうか健康に留意され、ホースマンとしての研鑚に努め、馬を愛し、1年後には1人も欠けることなく、晴れやかな笑顔で修了式を迎えられることを切に願ってやみません。そして、みなさまには、これからの軽種馬生産界に、新たな活力をもたらす原動力に、ぜひなっていただきたいとおもいます」と河野会長理事の式辞を代読。

 来賓として出席したJRA日高育成牧場浮島理場長は「研修生のみなさん、そして、ご家族のみなさま、このたびの入講、まことにおめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。この研修制度がスタートしたのは1990年、いまから30年以上前になります。当時の中央競馬は競馬の国際化を進めるとともに、世界に通用する強い馬づくり、を合言葉にさまざまな取り組みを進めた時期でもありました。といいますのも、そこからさらに10年ほど前に、はじめて行われた国際招待競走ジャパンカップで、アメリカの決して一流とはいえない馬に東京競馬場のコースレコードを一秒以上も更新されて、日本から出走したトップホースが完敗します。わたしたちJRAは、この力量差を教訓として、こんにちに至るまで強い馬づくりに関する努力を続けてきた歴史があります。この、強い馬づくりに必要なものはなんでしょう。もちろん血統の改良やハード面の充実は必要ですが、もっとも大切なのは優秀な人材の育成です。こうした理念の下、日本軽種馬協会とわたしどもJRAで協力しあい、この研修制度が始まり、そして、みなさんの一期先輩である第45期生までで500人を超える修了生を競馬サークルに送り出していただいています。朝が早かったり、厩舎作業、騎乗訓練も最初のうちはたいへんかもしれません。ですが、こうして同じ志を持った仲間と一緒に学べるというのは、とてもおおきな強みだとおもいます。ぜひ、おたがい励ましあって、悩みを打ち明けて、教えあって、みなさん全員で、ともに成長していただけたらとおもいます。馬は犬や猫とおなじコンパニオンアニマルであり、人と心が通じ合う動物といわれます。一所懸命、馬の気持ちをわかろうとして付き合えば、馬は少しずつ心を開いてなにかを教えてくれるはずです。みなさんも馬の気持ちがわかるように精一杯努力して、馬からいろいろなことを教わってください。わたしたちは心の底からみなさんの入講を歓迎し、そして、成長をたのしみにしています。1年後、社会人として、ひとりのホースマンとして、これまでの先輩たちと同様、ここを巣立っていけるよう頑張ってください」と祝辞を述べた。

 研修生を代表して佐々谷蓮太郎さんが「わたしたち第46期生産育成技術者研修生は、軽種馬生産界の期待に応えるよう、地域に根差した軽種馬産業の担い手として、一流のホースマンを目標にし、常に向上心や探求心を持ち、知識や技術を高めることを誓います」と大きな声で力強く研修への決意を宣誓した。

 開講式の後は研修所の食堂において昼食会を開催。研修生がひとりひとり自己紹介し、「この研修を受講するきっかけは、草原を走る馬の姿を見て馬を好きになったからです。将来は小規模の牧場で働きたいです」、「馬を好きになったきっかけはミホノブルボンの日本ダービー(G1)です。もともとジョッキーを目指していましたが身長が伸びたので、いまは生産牧場に努めることを目標にしています。将来は自分の牧場をつくって調教のG1レースを勝てる馬を生産したい」、「地元で伝統的な馬のお祭りがあり馬の好きになりました。将来はヨーロッパなどの海外で馬の関係する仕事をしたいです」など、研修の抱負や夢を語った。

 軽種馬生産育成技術者研修カリキュラムは、馬の性質と態度、馬の取扱い・馬への接近、愛撫と懲戒、馬の手入れ、曳き馬と馬の保持といった基礎知識、馬の種類、馬体の名称、馬の個体鑑別、馬の成長と年齢、相馬、馬と人の歴史、馬の健康管理、馬の異常、応急処置、保定法、護蹄管理、馬の栄養、飼料、馬の運動生理、馬体のつくり、競走馬の血統、競馬の要素、競馬の仕組みといった馬学、乗馬・下馬、馬上体操、乗馬の基本姿勢、柔軟、号令と運動、扶助、回転といった基本馬術、分娩管理、妊娠・妊娠鑑定、流産、原因、予防といった繁殖学などの講義、基本馬術、応用馬術、競走馬術、ロンジング、ドライビングといった騎乗訓練、堆肥造成、厩舎清掃、牧柵点検、修理、放牧地、草地管理、除雪、堆肥まき、環境整備などの作業、手入れ管理実習、JRA育成馬展示会見学、体力測定、せり見学、競馬場見学、ウォーキングマシーン講習、離乳見学、種馬場実習、民間牧場見学などの実習・見学、レクリエーション、BOKUJOU体験会、研修生馬術大会、健康診断、駅伝参加、求職登録など。アルキメデス、ケイアイレオーネ、アルタイル、スピリッツミノル、ショウリュウケンなど0歳から24歳までの26頭の研修乗馬、遊佐場長や6名の研修課のスタッフ、11名の種馬課スタッフらが1年間の研修をサポートする。