軽種馬育成調教センターが育成調教技術者養成研修第40期生修了式
4月14日、浦河町西舎にある公益財団法人軽種馬育成調教センター(草野広実理事長)は、浦河町西舎のうらかわ優駿ビレッジAERU(アエル)において、育成調教技術者養成研修の第40期生修了式を執り行った。
昨年4月から1年間の研修を終えた第40期生は、北海道、青森県、岩手県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、東京都、静岡県、愛知県、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、福岡県、宮崎県、鹿児島県出身の19歳から35歳までの24人。研修では常歩、速歩、駆歩、給餌方法、手入れ方法、曳き馬の方法、馬房清掃の仕方、頭絡の分解、頭絡の組み立て、装鞍、脱鞍、乗馬、下馬、手綱の持ち方、馬の繋ぎ方、落馬防止訓練、1列縦隊、併走騎乗、バンテージの巻き方、たてがみの梳き方、馬の見せ方、ドライビング実習、JRA育成馬馴致実習、JRA育成馬騎乗実習、ロンジング実習といった合計432時限の騎乗と実技、事故防止について、馬の手入れと世話、厩舎での日常的な作業、馬の基本的な取扱い方、馬具一式、馬の健康、コンプライアンス研修、馬の解剖、測尺方法、調馬索とドライビング、個体識別、馬の病気、馬の蹄、馴致、ゲート練習、馬の栄養、馬の見方、繁殖牝馬と子馬の管理、馬の出産前後の管理など合計38時限の学科、2日間の牧場実習、合計3回のJRA実習、イーストスタッド、コスモヴューファーム、追分ファーム、STウィンファーム、エクワインレーシング、社台ファーム、ノーザンファーム、ビッグレッドファーム明和、ダーレー・ジャパン、フジワラファーム、JRA札幌競馬場、門別競馬場、ジェイエス繁殖馬セール、帯広競馬場といった軽種馬関連施設等見学、馬装コンテスト、BTC業務内研修、牧場説明会、体幹トレーニング、ばんえい競馬見学、JRA日高育成牧場育成馬展示会参加など、幅広いカリキュラムを通して育成調教技術者の基本を習得した。
修了式前には育成調教技術者研修施設の800m調教馬場にて実技査閲を実施。40期生の保護者、就労先の関係者を前に、縦列、2頭併走など研修で身につけた騎乗技術を披露した。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、地元行政や軽種馬関係の来賓や研修生の家族の出席を取りやめた修了式では、草野理事長が第40期生24人に修了証書を授与。続いて、それぞれの部門で優秀な成績を収めた、学科最優秀賞、厩舎作業最優秀賞、騎乗技術最優秀賞、皆勤賞、場長賞、理事長賞の研修生表彰が行われた。
草野理事長は「みなさま、一年間における研修、本当におつかれさまでした。今日、こうしてですね、みなさんを優秀なホースマンとして送り出せることをBTC役職員一同、心からうれしくおもっております。みなさんのなかにこの一年、慣れない集団生活、あるいは、厳しい乗馬訓練、なかなか指示通りに馬を動かせないなかで、落馬をしたり、ケガをしたり、いろいろ辛いおもいをされた方もあったかとおもいます。しかし、みなさん、この研修をやり遂げたということ、まずもってですね、これからの人生において自信と誇りを持っていただきたいとおもいます。昨年、わたしたちは、研修生OBからJRA調教師になった小栗実さん、それからJRAアドバイザーの藤沢和雄さんの特別講義を聴きました。小栗さんはみなさんに対して、なかなか乗馬が上手にならないなかであっても、扱いの難しい馬に積極的に乗って自分の引き出しを増やそうという話をされました。藤沢アドバイザーは、みなさんがこの先牧場でBTCで学んだこととは違うような仕事の仕方を指示されたとしても、それが馬にとっていいことであれば、どんどん取り入れていこうという話をされました。この研修を終えたみなさんは、この先牧場で、人から言われた仕事だけをやっていればいいという存在ではありません。みなさんはそれぞれの牧場でリーダーシップをとる、そういう存在にならなくてはなりません。馬は一頭一頭性格も能力も成長過程も違います。そして、しゃべりませんから、人がよく馬のことをみて、その馬に合った、よりよい調教や管理をしていかなくてはなりません。それぞれの牧場には外国人スタッフも大勢いますけれども、その人たちはいずれ本国へ帰ってしまいます。みなさんはそういうことで、最初は新人かもしれませんがすぐにそれぞれの牧場でリーダーシップをとれる存在になるはずですので、そういう心がけで進んでいってほしいとおもいます。そして、その先、5年後、10年後、15年後、自分がどうなっていたいのかということを、よく考えて進んでいってほしいとおもいます。将来は自分で牧場を経営したい、あるいは馬主になりたい、あるいは、競馬場のスタッフから調教師を目指したい、みなさんはそういう可能性をもって、ここを卒業いたします。これから先、みなさん大いなる活躍をご祈念申し上げまして研修修了のあいさつといたします。本日はおめでとうございました」と式辞。40期生を代表して成田浩平さんは「新緑の候、ここ北海道の大地にも桜の便りが聞かれる季節となりました。本日、ご多忙のなか、このように修了式を挙行していただきありがとうございます。心より感謝申し上げます。今日までの一年、第40期BTC研修生として、わたしたちは各々の目標に向かい努力をしてまいりました。その目標に向かって多くのことを学ぶことができ、本日ここにいる研修生全員が、実り多き一年を過ごせたとおもいます。そして、この実り多き一年は、本研修を支えてくださった方々、馬たち無くしては実現しなかったことです。BTC、JRA職員のみなさま、あかしあ寮を支えてくださったみなさま、牧場関係者のみなさまに深く感謝申し上げます。また、研修に関わった馬たちには、感謝してもしきれません。馬たちが最高の教官であることは、この先も変わりません。これからも、馬たちから多くのことを学んでいきたいとおもいます。最後に改めてみなさまへの感謝と、その感謝の心に恥じることのない行いに努めることを誓い、謝辞に代えさせていただきます」と述べた。
修了式後、理事長賞などを受賞した成田さんは「順調とは一概に言えない一年ではありましたけれども、ひとまず無事に一年生き残ることができてよかったかなとおもっています。1年通して1年前よりも少しでも馬に寄り添える人間になれたのかなというふうにおもいます。馬に優しく自分に厳しい人間になれればなとおもいます。楽しかったのは、馬がこう考えているのかなあとか、自分が予想したことが、当たったなっていう瞬間。逆に、自分のおもいが伝わらないときとか、馬にしてやられたなというときには参りましたという感じで辛い日々でした。1年を通して最も印象に残っているのはJRAで行った育成馬実習です。育成馬に触るというのは初めての経験でしたし、普段の研修乗馬では想像することのできないような、いろいろなことを育成馬というのは、こちらに示してくれたので、その新鮮さもありましたし、そこに対応する難しさもありました」。学科賞を受賞した清水芽生さんは「いまおもうとすごくあっという間でしたが、初期から中盤までは苦しいこと、慣れないことばっかりで、まず、馬が可愛いから、馬が好きだからっていう理由で入ったんですけど、馬の怖い部分とか、自分にできないことが多すぎて、挫折しそうになりました。それでも、教官や40期の同期がすごく仲が良く接してくれたり心の支えになってくれたんで、自分のなかですごく濃い1年だったなとおもいました。自分は技術面で劣っていることがあったので、ほかのことでフォローしようとおもって、学科だけは負けない気持ちで頑張りました。JRAの育成馬展示会は、お客さんのまえで、この馬はこうですと、説明することとか、本当に働いている気持ちをすごく身に染みて感じよい経験ができました。これからは競走馬と育成馬、競馬に向かって走っていく馬を扱うことになるので、ケガに気を付けてリーダーシップをとれるような人材になりたいです」と研修を振り返った。24人は全員、浦河町や新ひだか町、新冠町、日高町、安平町などの牧場への就労が決まっている。