馬産地ニュース

北海道静内農業高等学校が馬の職業について学ぶ

  • 2023年03月22日
  • 講義はマイスター・ハイスクール事業の一環として行われた
    講義はマイスター・ハイスクール事業の一環として行われた
  • 将来の職業選択を視野に質問した
    将来の職業選択を視野に質問した
  • 講師を務めた日高軽種馬農業協同組合の小島謙治業務部長
    講師を務めた日高軽種馬農業協同組合の小島謙治業務部長

 3月10日、新ひだか町静内田原にある北海道静内農業高等学校(佐藤裕二校長)の生産科学科1年生は、日高軽種馬農業協同組合の小島謙治業務部長を講師に招き、馬の職業について学習した。

 これは文部科学省によるマイスター・ハイスクール事業(次世代地域産業人材育成刷新事業)に伴う講義のひとつ。北海道静内農業高等学校は令和3年度から指定校に認可されており、生産科学科は日高軽種馬農業協同組合、JRA日本中央競馬会、公益社団法人日本軽種馬協会などの軽種馬関係機関と連携し、より専門的な授業を行っている。

 小島部長は馬の「職業について~競走馬のライフサイクルと人とに関わり~」をテーマに講義。最初に小島部長は日高軽種馬農業協同組合について、「日高管内のサラブレッド生産牧場676件で組織する専門農協です。胆振軽種馬農業協同組合と十勝軽種馬農業協同組合と共同で競走馬のせり市である北海道市場を開催しています。ほかにも馬の診療や産駒名簿作成など、各種事業で牧場運営をサポートしています。また、軽種馬生産団体の全国組織であるJBBA日本軽種馬協会が行う種牡馬配合や補助金など各種事業の受付窓口でもあります。みなさんが通うこの静内農業高等学校も組合員で、毎年北海道市場のサマーセールに生産馬を上場していただいています」と紹介した。

 つづいて、軽種馬の生産・育成ステージ、軽種馬のライフサイクル、種牡馬を繋養する種馬場・スタリオン、繁殖牝馬を飼養し種付けから分娩し、出産した子馬を育てて販売する生産牧場、基礎体力造成やせり馴致などの中期育成を行うコンサイナー、騎乗馴致、トレセンや競馬場への入厩準備、外厩、現役競走馬の休養といった後期育成を担う育成牧場、養老余生を見守る養老牧場など、様々な形態がある牧場の種類について説明。競馬は公営競技のひとつで農林水産省の管轄、競馬法で競馬開催、入場料、勝馬投票券、馬主、競走馬登録などが定められていること、勝馬投票券の売上の一部が畜産振興、社会福祉、地方財政に寄与していること、日本の競馬は中央競馬と地方競馬に分かれていること、競馬の職業は騎手、調教師、厩務員、調教助手、競馬主催者、獣医師、装蹄師など多岐にわたることなどを話した。

 また、馬の飼養頭数の推移、軽種馬の生産農家戸数と生産頭数の推移、軽種馬の市場取引状況、馬産地における軽種馬生産の位置づけ、馬の多様な利活用など、現在の日高の生産牧場についても言及。馬は売れて頭数は増加しているが、「獣医師が不足している。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で燃料や飼料が高騰している。牧場で働く人がいない。後継者がいない。新規就農が困難。最近はアニマルウエルフェア(動物福祉)がクローズアップされ引退競走馬の行く末が注目されている」といった日高の生産牧場が抱える問題点を指摘した。

 生徒は「養老牧場はどうやって収益を上げるのですか?」、「大手の牧場といわれているのはどれくらいあるのか?」などと質問をし、将来の職業選択に役立てようとしていた。