王冠賞はエンリルが8馬身差で最後の一冠を制する
北斗盃、北海優駿に続く、ホッカイドウ競馬三冠ロードの最終戦。「第43回王冠賞」が8月16日、門別競馬場で行われ、新ひだか町の松本牧場生産エンリルが1分51秒4で優勝した。
王冠賞が8月中旬に行われるのは、まだ2600mの距離で行われていた2014年以来8年ぶりのこと。ホッカイドウ競馬では2015年にレース体系が見直されて、王冠賞も距離を短縮。三冠ロード最終戦は、長い距離を走ることができるスタミナというよりも、短い期間に三冠競走を走りきる体力、スタミナが問われるレースとなっていた。今年はそれぞれのレース間隔が延長され、馬の成長を促しながらの三冠ロード。これが、どのように結果に影響を及ぼすかも注目される1戦となっていた。
門別競馬場が位置する日高地方は、レース前日から前線を伴う低気圧の通過により局地的に激しい雨で、当日はコースに水が浮くような不良馬場。この馬場を味方にしたのが「持ち味はスピードと粘り強さが武器」と角川調教師が胸を張る北斗盃2着、北海優駿4着のエンリルだった。北海優駿のあとは短期放牧を挟み、体調もアップ。「期待を込めての出走でした」という調教師の思いを受け取った桑村騎手は「この馬の持ち味を発揮できるようなレースをして欲しいという指示を受けていましたので」と1周目ゴール前では先手を奪い、コーナーワークを利用してリードを広げる。向こう正面中程では先頭から最後方までは20馬身以上の差がつく展開となり、3コーナー過ぎからは2番手グループが脱落。こうなれば、追ってくるものはいない。しかも、エンリルは2歳時には金沢競馬の兼六園ジュニアカップを逃げ切った快速馬で、兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)でも後の全日本2歳優駿(Jpn1)3着プライルード、兵庫ダービー馬バウチェイサーとは差のない競馬で入着を果たしている実力馬だ。圧倒的人気を背負っていた2冠馬シルトプレが意地を見せるように2着を確保したものの、その8馬身前方で余裕のゴール。三冠最後の1戦はエンリルに輝いた。また、この日はエンリルを生産した新ひだか町松本牧場の松本和則社長も競馬場に足を運び「シルトプレは本当に強い馬ですから、いろいろな事が味方してくれたと思います。ひと事で言えば、市場コンサイナーも含め、牧場の方々、厩舎の方々など携わった人たちが馬を強くしてくれたおかげ。牧場時代は気性の強いところもあったけれど、とにかく丈夫な馬でした。長く活躍できるような馬になって欲しい」と白い歯を見せた。
なお、角川調教師にとっては17年スーパーステション以来の王冠賞勝利で通算5度目の勝利。桑村騎手にとっては嬉しい初勝利。「強い内容で最後の1冠を勝つことができ嬉しい」とレース後のインタビューで、ほっとしたような表情を見せた。