重賞ウイナーレポート特別編~ラヴズオンリーユー・BCフィリー&メアターフ(G1)
1996年のタイキブリザードのブリーダーズカップクラシック(G1)挑戦から25年。ついに、日本調教馬がブリーダーズカップの勝ち馬としてその名を残した。
北米競馬の芝牝馬戦線では最高峰のレースとされる、ブリーダーズカップフィリー&メアターフ(G1)。欧州からも6頭の牝馬が参戦するなど、ハイレベルのメンバーが揃ったレースを制したのは、ノーザンファーム生産馬のラヴズオンリーユー。馬券発売が行われた日本では1番人気、現地でも3番人気の支持に応えるかのように、ゴール前では馬群を抜け出して、2着馬に半馬身差を付ける勝利。鞍上の川田将雅騎手もまた、日本人騎手として初めてのブリーダーズカップ優勝ジョッキーとなった。
「ブリーダーズカップは凱旋門賞(G1)と共に、世界のトップ中のトップが集まってくるレースだと思っていました。どちらのレースも勝ちたいというより、国内でG1を勝てたような馬が出走を目指せるレースだと思っていましたし、目標というまでは考えもしなかったです」とは育成を手掛けたノーザンファーム早来の岡真治厩舎長。その岡厩舎長が、ラヴズオンリーユーのブリーダーズカップフィリー&メアターフ(G1)挑戦を聞かされたのは、札幌記念(G2)出走に向けて、牧場での調整が行われた頃だった。
「3歳の夏からこの時期は牧場へ戻してもらいましたが、それまで感じていた体質の弱さも解消されて、最も状態が良かったですし、札幌記念(G2)のレース後に牧場に戻ってきた時も、いいコンディションを保っていました」と岡厩舎長。毎年続けて管理を行ってきた中で、競馬場へ送り出すまでの仕上げ方も掴めてきたと話すが、今回は遠征前に厩舎で管理されるとは言っても、牧場からほぼダイレクトに、ブリーダーズカップフィリー&メアターフ(G1)までの調整を任されることともなった。
「ただ、入厩してからも状態が凄くいいと聞いていたように、矢作先生やスタッフの方が、更にいい状態へとラヴズオンリーユーを仕上げてくださったのだと思いました。出走が正式に決まった時は入着もあればと思っていたのですが、レース前にはひょっとしたら何とかなるのではとの期待も膨らんできました」(岡厩舎長)
外枠ながらも好スタートを切ったラヴズオンリーユーは、スムーズに4番手の位置をキープ。先行勢を前に置きながらレースを進めていく。そのまま折り合いを付けながら迎えた勝負どころの第4コーナー手前、後続勢が一気に上がってきたことで、直線を向いたラヴズオンリーユーは馬群に包まれる形となった。
「道中もプレッシャーをかけられていましたし、直線で前に壁ができた時には開いてくれ!と祈っていました。ただ、そこから僅かな隙間を割ってきた川田騎手の好騎乗であり、そしてラヴズオンリーユーも勝負根性を見せてくれたと思います」(岡厩舎長)
歓喜の瞬間、一気に感情が高まったと話す岡厩舎長。その後、牧場の仲間たちからは次々とこの快挙を称える連絡が入ってきた。
「信じられなかったですし、まるで競馬ゲームの世界だなとも思いました。ただ、その一方でノーザンファームとしての目標である、馬を通して感動を与えていくことができたのではないかとも思います」
世界一の牝馬ともなったラヴズオンリーユーであるが、次走は12月12日に香港のシャティン競馬場で行われる香港カップ(G1)に決定。そしてこのレースがラストランともなる。
「繁殖牝馬としても期待が大きいと思いますし、まずは無事に走り切ってもらいたいです」と話した岡厩舎長。香港カップ(G1)でも世界中に感動と強さを届けるようなレースを期待しよう。