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JRA日高育成牧場吉川誠人装蹄師が全国装蹄競技大会連覇

  • 2019年10月31日
  • 優勝旗を牧場に持ち帰った吉川誠人さん
    優勝旗を牧場に持ち帰った吉川誠人さん
  • 勤務するJRA日高育成牧場
    勤務するJRA日高育成牧場
  • 浦河町役場には2連覇を祝う懸垂幕が掲げられた
    浦河町役場には2連覇を祝う懸垂幕が掲げられた

 10月7日、8日、栃木県宇都宮市にある公益社団法人日本装削蹄協会装蹄教育センターにおいて、公益社団法人日本装削蹄協会が主催する農林水産祭参加行事、第72回全国装蹄競技大会が行われ、浦河町西舎にあるJRA日本中央競馬会の日高育成牧場に勤務する吉川誠人装蹄師が優勝。昨年の第71回大会に続く2連覇を達成する快挙を成し遂げた。

 装蹄競技大会の歴史は古く、第1回大会は1941年に東京都の陸軍獣医学校で開催。途中、第2次世界大戦などにより中断した時期もあったが、装蹄技術の向上を図り、馬の能力の増進に資することを目的に、現在に至るまで毎年10月に全国各地の地方予選を勝ち抜いた選手が集い、文字通り火花を散らす技の祭典が繰り広げられている。

 今年は36名の精鋭が参加。造鉄、装蹄および装蹄判断の3競技で争われた結果、吉川さんが見事2連覇を果たした。これまで複数回優勝者は何人かいたが、2連覇は史上2人目の快挙。JRA所属の装蹄師としては初めてのことで、牧場がある浦河町の役場にも懸垂幕を飾ってその偉業を讃えている。

 吉川さんは兵庫県神戸市出身の30歳。競馬好きだった親の影響で幼少期から馬に触れるようになり、乗馬クラブに通う中で装蹄の仕事を知り、高校卒業後に日本装削蹄協会の装蹄師認定講習会を受講。1年間の講習修了後に2級認定装蹄師の資格を取得しJRAに入会した。入会後は競馬学校を皮切りに、馬事公苑、美浦・栗東の両トレーニングセンターを経て、2017年から日高育成牧場にて、繁殖牝馬、1歳馬、当歳馬、育成馬、乗馬の装削蹄などに従事している。

 昨年は3度目の出場で悲願の初優勝。2連覇を達成した吉川さんは「去年優勝するまでは、優勝しないとというプレッシャーばかりあったので、今年出場が決まったときは、純粋に競技を楽しもうと思っていました。しかし、大会が近づくにつれ前回優勝者としてのプレッシャーが大きくなって、今年のほうが精神的にきつかったです」。それだけに優勝が決まったときは「うれしかった。目の前の課題に懸命に取り組んだ結果と思います」と冷静に受け止めた。

 吉川さんは来年3月にアメリカで行われる全米装蹄競技大会に日本代表として出場が決定。2年連続での出場に「去年は初めて行って何もわからない中で競技が始まって、全然うまくいかなかったことが多かったので、次は前回の経験を生かしたいですね」と意欲を見せた。

 来年3連覇がかかるが「まだそこまで考えていません。JRAとして連覇は初めてでしたので、3連覇は後輩たちがやってくれたらと思います」と語り、今後は「今まで自分が競技者だったので、自分のことでいっぱいいっぱいだったのですが、これからは自分が培った技術や経験を後輩に伝えていけたら。そして、競技会を通して得た鉄をつくる技術を強い馬作りにも応用できるようにしていきたいですね」と抱負を語った。