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重賞ウイナーレポート特別編~ディアドラ・ナッソーS(G1)

  • 2019年08月29日
  • 現在、佐藤厩舎は2つの厩舎で約40頭を管理している
    現在、佐藤厩舎は2つの厩舎で約40頭を管理している
  • 今年も30頭の1歳馬が厩舎にやってきた
    今年も30頭の1歳馬が厩舎にやってきた

 歓喜の知らせは日本時間の深夜にもたらされた。8月1日にイギリスのグッドウッド競馬場で行われたナッソーS(G1)。9頭立てで行われたこのレースに出走したディアドラは、大本命のメダーイーを最後の直線で交わして勝利。欧州における日本調教牝馬のG1制覇は、1998年にフランスのモーリスドゲスト賞(G1)を制したシーキングザパール以来、2頭目という快挙となった。

 この快挙を日本で見守っていたのが、ディアドラの育成調教を手がけた、ノーザンファーム早来の佐藤洋輔厩舎長である。

 「現地からの近況はほとんど入ってこなかったですし、一ファンとしてインターネットなどから情報を得ていました。決して戦前の評価は高くはありませんでしたが、それでもいい追いきりができたとのことでしたし、橋田先生も馬の体つきが変わっていたと話していたので、前走よりもいいレースができるのではと期待をしていました」(佐藤厩舎長)

 日本での馬券発売こそ無かったナッソーS(G1)だが、それでもグリーンチャンネルでは中継が行われていた。好スタートを切ったディアドラはそのままインコースを追走。最後の直線では一瞬、進路が無くなる場面もあったが、前が開いたのを見逃さず、そこから一気の末脚を使って先に抜け出したメダーイーに並びかけていく。

 「前が開いてからの脚色も良かったですし、ゴール前は勝てそうと言うよりも、勝っちゃうかも?といった心境でした」(佐藤厩舎長)

 ディアドラのG1勝利は秋華賞(G1)以来となる。だが、このナッソーS(G1)の勝利は、その時とはまた違った感慨があったとも佐藤厩舎長は話す。

 「強い馬も出走していましたし、自分自身、どこまでやれるのかと思っていたのは事実でした。その中でも帯同してくれている橋田調教助手が、慣れない環境の中でもいい状態に仕上げてくださったのでしょうし、何よりもディアドラが心身共にタフな馬だったことが、この結果に結びついたのかもしれません」(佐藤厩舎長)

 今や牝馬が日本の混合G1でも勝つのは珍しく無い時代。それでも海外のG1となると滅多に無いことであり、しかも欧州のG1で日本調教牝馬が21年に渡って勝てていなかったという事実が、その難しさを証明している。

 「ノーザンファームに勤務して、数々の名馬たちと接する機会がありましたが、それでもディアドラのような馬にはそう巡り会えないと思います。それだけにこの上ない経験をさせてもらっています」と話す佐藤厩舎長。余談ではあるが、「このレースの後は興奮のあまりなかなか寝付けず、次の日、早朝からの仕事は大変でした」、と笑みをこぼしていた。