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重賞ウイナーレポート特別編~リスグラシュー・コックスプレイト(G1)

  • 2019年11月15日
  • 昨年は胆振東部地震で、停電や水が出ないなどの被害もあった
    昨年は胆振東部地震で、停電や水が出ないなどの被害もあった
  • 秋の高い空からは、間もなく、冬を告げる白い雪が降ってくる
    秋の高い空からは、間もなく、冬を告げる白い雪が降ってくる

 クロノジェネシスが秋華賞(G1)を優勝した次の週に行われた富士S(G3)を、半姉のノームコアが勝利。2週連続で重賞馬が誕生していたのが、ノーザンファーム早来の野崎厩舎である。

 10月26日、27日に中央競馬で行われたアルテミスS(G3)、スワンS(G2)、そして天皇賞(秋)(G1)と3つの重賞競走では育成馬の勝利こそ無かったが、26日にオーストラリアのムーニーバレー競馬場で行われたコックスプレートで、育成馬のリスグラシューが優勝。これで3週連続での育成馬による重賞勝利となった。

 「その前の週には、同じノーザンファーム生産馬で、早来の育成馬でもあるメールドグラースがコールフィールドC(G1)を勝っていてくれましたからね。流れもいいと思っていました」とは野崎孝仁厩舎長。毎年のように夏の調整を野崎厩舎で過ごしていたリスグラシューであったが、海外遠征を控えた今年は牧場にこそ帰ってこなかったものの、その前の宝塚記念(G1)で大仕事をやってのけていた。

 「遠征した海外でも力を発揮していたとは言えども、宝塚記念(G1)は牡馬のトップホースも揃っていましたし、正直、勝ち負けに関しては半信半疑でした。それだけにあの競馬を見たときには強くなったと思いました」

 中間の様子については、「リスグラシューの一ファンとして、新聞などの記事を見ていました」と笑う野崎厩舎長。レースが行われた土曜日は牧場で仕事をしており、出走直前に厩舎スタッフと共に事務所に赴いたという。

 「向こうのコース形態がよく分からなかったので、どこがコーナーで、どこが直線なのか。そしてどこからが仕掛けどころなのかなど、そればかりが気になっていました」

 14頭での出走となった今年のコックスプレイト(G1)。リスグラシューは後方からレースを進めて行くと、決して長いとは言えない最後の直線で外を周りながら、末脚を加速させていく。

 「もう、4コーナーなのかなと思っていた矢先、まくるようにしながら直線を向いた時には、スタッフのみんなと声が出ていました。宝塚記念(G1)に続いて手綱を取ってくれたレーン騎手の騎乗もさることながら、やはり、海外遠征に長けていた矢作先生や厩舎スタッフの皆さんが、いい状態でレースを使ってくれたことが、この結果にも表れたと思います」と話す野崎厩舎長ではあるが、「正直、海外G1となると遠い話のようで、あまり実感はありませんね」と再び笑顔を浮かべる。

 だが、牧場での調整期間に牧場を襲った、昨年の胆振東部地震の影響を乗り越えての活躍ともなりましたね、と話を向けると、「その時のことや、期待されたとおりの結果がなかなか出せなかった頃など、厩舎スタッフと試行錯誤をしてきたり、様々な苦労もありました。それが海外でのG1勝利と言う形で報われたような気もします」とも話してくれた。注目の次走は有馬記念(G1)となり、春秋のグランプリ制覇を狙うこととなった。

 「今の充実ぶりからすると、楽しみしかありません。クラブの規定もあり、残された現役生活は決して長いとは言えませんが、その中で最高の結果を残してもらいたいですね」と野崎厩舎長。今や国民的行事ともなっている有馬記念(G1)での勝利となれば、その喜びは計り知れないものとなるはずだ。