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重賞ウイナーレポート特別編~メールドグラース・コールフィールドC(G1)

  • 2019年11月05日

 メールドグラースがコールフィールドC(G1)に出走していたその時間。騎乗育成を担当した、ノーザンファーム早来の山内大輔厩舎長は、次の日、同じく育成馬のワールドプレミアが出走した菊花賞(G1)を応援すべく、飛行機の機内にいた。

 「飛行機から降りて、電源を入れ直したとき、続々とメールやLINEが届きました。実はこの日は同じ育成馬のレイエンダも、それほど変わらない時間に富士S(G3)に出走しており、どちらかが勝ったのだろうなと思いました」(山内厩舎長)

 残念ながら、レイエンダは半馬身差及ばずの2着に敗れていたが、この次の日には菊花賞をワールドプレミアが優勝。年間に限られた数しか管理の出来ない育成馬を、重賞という大舞台に送り出すだけでも大変なことでもある。その結果がG1 2勝、G3で2着というのは、凄いとした言いようがない。

 しかも、メールドグラースのコールフィールドC(G1)優勝は、山内厩舎長にとって何かと感慨深い勝利でもあった。

 「今回の遠征で、牧場からスタッフとして同行したノーザンファームしがらきの中崎(健介)は、早来時代だけでなく、自分が山元トレーニングセンターに勤務していた頃にも、まさに喜びや苦労も共有した仲間でもありました。今回はメールドグラースにずっと付き添いながら、本当にいい仕事をしてくれたと思います。その意味でも嬉しさは倍増しましたね」(山内厩舎長)

 山内厩舎長から中崎氏へと託されたバトンとも言えるメールドグラースであるが、初めての海外遠征でもいい状態をキープできたのは、やはり、調整過程をよく知る中崎氏が付き添っていたことも大きかったのは間違いない。

 「管理をしてくださっている清水先生や厩舎スタッフの皆さんも、メールドグラースの力を引き出してくださったと思いますし、レース内容を見てもメールドグラース自身が、早来にいた頃からは比べものにならないほどに力を付けているのでしょう」(山内厩舎長)

 今年の1月に1000万下を勝利してから破竹の連勝を重ねてきたメールドグラースであるが、そのレースぶりは先行抜け出し、好位からの差しと様々な引き出しがあることを見せてきた。このコールフィールドC(G1)では後方2番手までポジションを下げていたものの、3コーナーから大外を周って先行勢を射程圏内に置くと、最後の直線では鮮やかな末脚を使い、そのまま先頭でゴール板を駆け抜けた。

 「あとでレースを見たのですが、以前ならあの位置で競馬をしていたのなら、全く勝負にならなかったと思います。しかも抜け出した時には遊んでいるようなそぶりも見せていましたからね。本当に凄い馬になったと思いました」(山内厩舎長)

 次走はメルボルンC(G1)に出走を予定。このレースは育成スタッフだった頃に、デルタブルースが勝利したレースでもある。

 「自分がホースマンとして、初めて世界の競馬を体現させてくれたのがデルタブルースでした。ただ、その頃は世界でG1を勝つ凄さを、そこまで分かっていなかったと思いますが、その後、様々な競走馬に接してきたり、そして厩舎長となってみて、改めて世界のG1を勝つことの大変さや、重みは違うなと感じています」(山内厩舎長)

 メルボルンC(G1)は現地時間の15時(日本時間は13時)に発走予定。メールドグラースの重賞5連勝を含めた7連勝、そして山内厩舎長にとっては、デルタブルース以来となるメルボルンC(G1)勝利となるか注目したい。