札幌馬主協会が馬産地懇談会
10月23日、一般社団法人札幌馬主協会(下河辺俊行会長理事)は、新ひだか町静内吉野町にある静内エクリプスホテルにおいて、第14回馬産地懇談会を開催した。
馬産地懇談会は、会員の多くが日高地区の軽種馬生産者であることから協会の恒例行事として毎年10月に開催。毎年、講師による講演会と立食懇談会の二部構成で行われている。今年はJRA日本中央競馬会の矢作芳人調教師を講師に招いた。
当日は台風21号が上陸する悪天候にもかかわらず、会場には札幌馬主協会の下河辺俊行会長理事をはじめとした会員やJRA札幌競馬場の小玉剛資場長、金子洋之副場長、横田健樹総務課長といった職員、日高軽種馬農業協同組合の木村貢代表理事組合長や会員、職員、軽種馬関係者など約200人が出席した。
馬産地懇談会に矢作調教師を講師として招聘した、同協会の吉田照哉事業サービス委員会委員長は「今日は皆様がよくご存じの矢作調教師に来ていただきました。半年前に矢作調教師に講師を依頼したところ、去年は堀宣行調教師が講師だったので、今年は自分の番だと思っていたと、快く依頼を受けていただきました。とても緊張されてるようですが、並外れた根性をお持ちの方とお見受けしていますので、きっと楽しいお話をお聞かせくださると思います」と挨拶。下河辺会長理事は「矢作調教師はJRAの競馬のシステムの中で、自分の理論を出され、いろいろな改革をされてきています。成績も素晴らしく100勝、200勝を最短で記録されております。そのなかで私が一番感心するのは、日高の牧場をずっと回って目に留まった馬を厩舎に入れて成績を上げてらっしゃるところです。本当に素晴らしいと思います。それともうひとつ、厩舎だけでなく、世界一愛される厩舎にするんだということで矢会という会を主宰してファンも大事にされています。今日は勝利の方程式というテーマでご講演されます。皆様、最後までご静聴よろしくお願い申し上げます」と挨拶した。
来賓として出席した小玉場長は「矢作先生とは同じ年で、私が栗東トレーニングセンターに在籍していた頃、獣医として駆け出しの自分にも気さくに質問されてました。調教助手のころからとても勉強熱心で、馬に対して科学的なトレーニングだけでなく心理的な面にも注目されてましたので、どんな話が聞けるのか楽しみにしています」と祝辞。木村代表理事組合長は「今年の北海道市場は売却率が77%、売却総額が100億円を超えました。ひそかに期待はしてましたが、これがおそらくピークと思っています。数字的にピークであっても内容を充実させることが大事なことと思います。そういう意味では、競馬の第一線で活躍されている矢作先生の考え方ややり方を教えていただければ、次につながるヒントがあるのではと、われわれ軽種馬の生産育成に携わる者は考えております。何か自分たちが先生から良いアイデアをいただければ幸いです」とスピーチした。
矢作調教師は昭和36年生まれの東京都出身。昭和59年7月にJRA競馬学校厩務員過程に入学。同年10月に工藤嘉見厩舎で厩務員に、昭和61年に調教助手に転身した。その後、武田博厩舎などを経て、平成16年に調教師免許を取得。平成17年の開業以来、JRA賞最多勝利調教師に2度輝いている。10月23日現在、JRAで511勝、地方19勝、海外1勝、合計531勝をあげている。
「矢作流勝利の方程式」と題した講演で矢作調教師は、馬育ては人育てとし、エースのスタッフはつくらず公平に馬を割り当てること、休む時と働く時をはっきりさせるONとOFFのバランス、テーブルマナーや電話応対といった独自のスタッフ研修など矢作厩舎ならではの特徴、自分の軸をつくる、血統の最新トレンドを知る、この馬を育てたいと思うか?という、自分の馬選びの方法、常に相手の立場に立つ、相手の個性に寄り添う、最後まで全力を尽くすといった矢作流のバランス感覚などの一例を紹介。「開業されてからこれまでの中で、失敗したというのを3つ教えてください」、「先生のバランス感覚の中で騎手選びのコツをお教えください」、「今の競馬で馬主が抱える問題は、除外が多くて出走きないで年間4.5回が平均ですが、先生はどのような形で馬を使っていますか?」、「これはハマった、会心だったというのがあれば教えてください」という質問にも笑顔で答えた。
新ひだか町から参加した生産者は「とてもためになるお話でした。明日からさっそく実行したい」と感想を口にした。