ばんえい記念はフジダイビクトリーが初制覇
この春、平成27年度ばんえい十勝開催のクライマックスを迎えた帯広競馬場では、現役ばん馬No.1を決める決戦、第48回ばんえい記念(BG1)が行われ、牡8歳のフジダイビクトリーが初優勝した。
今年のばんえい記念は6歳~11歳の10頭。一昨年の覇者インフィニティーと昨年の覇者キタノタイショウ、昨年2着のニュータカラコマ、夏の大一番・ばんえいグランプリ(BG1)を2連覇中のフジダイビクトリーなど、豪華なメンバーが顔を合わせた。同レースは重量1トンを曳く激闘で、毎年全国からファンが訪れる。レース日となった3月20日は4,443名が来場し、レースの売上は130,386,800円を記録して、ともに昨年の数字を上回った。場内では十勝管内・音更駒太鼓の演奏や、日頃メディアを通してばんえい十勝の魅力を情報発信している斎藤修さん、荘司典子さん、須田鷹雄さん、津田麻莉奈さん、古林英一さん、古谷剛彦さん、矢野吉彦さんが集結し、2度行われたトークショーは人だかりができた。
陸上自衛隊第5音楽隊によるファンファーレ生演奏でレースはスタート。最大の難関・第2障害に各馬が到達すると、場内のファンから祈るような声援が飛び交い、障害に挑むひと腰、ひと腰に熱い視線が注がれた。最初に第2障害をクリアしたのはニュータカラコマで、同レース初出走のコウシュハウンカイが2番手で応戦し、後続にプレッシャーを与えた。1番人気の支持を集めたフジダイビクトリーは第2障害で時間を要したが、4、5番手でクリアすると反撃を開始し、前2頭へ猛追。直線の勝負はニュータカラコマ、コウシュハウンカイが何度か呼吸を入れて止まったのに対し、フジダイビクトリーは残り20mで一度止まった以外は走り切り、1トンを曳くばん馬とは思えぬ豪脚で一気にゴールを切った。ニュータカラコマは昨年に続き2着に敗れ、次世代のホープ・コウシュハウンカイが大健闘の3着に入った。レースの馬場水分は1.7%と、乾いたコンディションであったものの、勝ち時計は3分41秒5と過去10年で最速。昨年2着のフクドリは第2障害で苦戦し、今年は大きく遅れをとってしまったが、場内からは馬を励ますように大声援がこだまし、8分33秒6の時計でゴールを果たした。完走した10頭には惜しみない拍手が送られた。
フジダイビクトリーは父ウンカイ、母シュクノハルヒメ、母の父ロングボーイという血統。オーナーは株式会社三上建設で、金山明彦厩舎の管理馬。金山調教師はかつて騎手として、名馬キンタローのコンビなどで同レースを6勝した“ミスターばんえい”で、調教師として同レース初制覇を飾った。手綱をとった松田道明騎手は、同レース2勝目。生産者は北海道本別町の本寺政則さん。この日、帯広競馬場で栄えある口取りに入った本寺さんは、「優勝できて嬉しいです。ファンエリアから表彰式を見ていて、この馬に携わった皆さん、転厩後もケアしてくれた厩務員の方、SNSを通じて応援いただいていたファンの皆さん、沢山の顔が思い浮かびました。昨年とは違って終いを生かす競馬だったので、第2障害を越えるまでは気が気でありませんでした。下りてからは声が出ましたね。松田騎手の仕掛けのタイミングが絶妙で、ゴール前に馬を止めた場所を見て勝利を予感しました。
牧場時代は、筋肉の質が明らかに他の馬と違い、これは普通の馬ではないと期待していました。早い時期から馬を大きく作り過ぎると、その後の競走成績に影響すると考え、幼少期は放牧時間を長くして草中心の飼養にし、昔からの体重を乗せていく飼養とは真逆に育てました。配合は、ばんえい記念を勝った馬の配合を研究し、それに合わせて配合しました。ばんえい記念を勝ちたかったので、晩成型の血が入っています。こだわって生産した馬が最高の結果を運んでくれて、驚きと喜びでいっぱいです。フジダイビクトリーにはじっくり疲れをとってもらって、今後も元気に走ってきて欲しいです」と、胸中を語ってくれた。
フジダイビクトリーは今回の勝利で通算成績152戦27勝とし、収得賞金19,284,000円となった。