重賞ウイナーレポート特別編~エイシンヒカリ・香港カップ
香港・シャティン競馬場で行われた香港国際競走・香港カップ(G1)を日本から遠征したエイシンヒカリが逃げ切り、自身初のG1勝利を海外の地で成し遂げた。
本馬の生産は新ひだか町三石本桐の木田牧場。昭和29年創業で、過去には1992年に弥生賞(G2)を制したアサカリジェントや、今年の岩手重賞・南部駒賞を快勝し、岩手2歳戦線で注目を浴びているメジャーリーガーらを生産している。預託馬を中心に繁殖牝馬は17頭で、木田さん家族とスタッフ2名で強い馬づくりに励んでいる。
レース当日、同牧場代表の木田圭介さんはグリーンチャンネルの中継で観戦し、馬自身にとっても、牧場としても初となるG1タイトルに沸いた。「初の海外遠征ですし、イレ込むタイプなので、輸送がうまくいくことを願っていました。前走の天皇賞(秋)ではG1の壁を感じましたが、秋3戦目で状態はピークだったかもしれませんね。序盤、外枠のスタートで脚を使いましたが、道中はずっとスムーズな走りで、直線に向いた時は胸が高鳴りました。後続の馬が迫っていたので、何とか踏ん張って欲しいという気持ちでした。残り100mあたりで武豊騎手の手応えをみて、勝利を意識しましたね。今回も無事に走ってくれて、初G1まで飾ってくれました。本当に嬉しいです」と、喜びを語った。レース後はしばらくお祝いの電話が鳴りっぱなしで、反響の大きさを感じたと言う。
本馬は父ディープインパクト、母キャタリナ、母の父ストームキャットという血統。キズナやアユサン、ラキシス、リアルスティールらと同じ、ディープインパクト×ストームキャットの配合となる。母キャタリナは現役時代、アメリカで3勝。繁殖成績は抜群で、2番仔エーシンピーシーはスプリングS(Jpn2)3着で皐月賞(Jpn1)に出走し、4番仔エーシンクールディは地方ダート重賞を8勝し、グランダム・ジャパン(古馬シリーズ)の2011年、2012年の女王に輝いている。
幼少期の本馬について木田さんは、「今のヒカリから考えると驚くのですが、大人しくて、素直な気性をしていました。牧場にいた頃は仲間の馬たちの気性がキツくて、群れでは良い意味で目立たないというか、扱いやすい馬でした。競走馬として500kgを超す馬になりましたが、当歳時はそれほど大きくなく、ごく普通の体型で、ディープインパクトらしい整った印象はありました。母キャタリナの遺伝もあって、大型になっていきましたね。母自身はストームキャットの血を引きますが、普段は大人しく、子育ても上手くて、順調に育ちました。ディープインパクトとの配合も合いましたね」と、振り返る。1歳9月まで同牧場で過ごし、その後は岡山県の栄進牧場久世育成センターに移動した。
デビューは3歳4月と時間がかかったが、そこからトントン拍子でオープンまで出世し、アイルランドトロフィーでは破天荒なレースぶりで一躍有名に。今年はエプソムカップ(G3)で初重賞制覇を飾り、ほぼパーフェクトに近い快進撃で、年末には世界の舞台で強豪を破ってみせた。「早い時期にデビューの態勢が整いませんでしたが、馬の成長を考えて育成牧場と坂口正則厩舎の皆さん、オーナーがじっくりと調整したことが、今のヒカリにつながっているのだと思います。重賞は出るだけでも大変なこと。携わっている皆さんのおかげです。ファンの皆さんの応援も、大変ありがたく思っています」と、木田さんは感慨深く、これまでの歩みをなぞる。
現在、同牧場では本馬の半姉エーシンクールディを繁殖牝馬として預かっていて、現在はディープブリランテの仔を受胎中。当歳は父エンパイアメーカーの牝馬が生まれている。本馬の母キャタリナは移動しているが、2歳となる牝馬は同牧場生産馬で、本馬の全妹となる。
「2歳の仔の牧場時代は、ヒカリと全く違いましたね。気性が強く、放牧地ではいつも全速力で走りまわっていました」と、木田さんは紹介する。こちらのデビューも是非注目していきたい。
見事、偉業を成し遂げた本馬は、年が明けて5歳。海外G1のタイトルを引っさげ、また国内外でその強さをアピールして欲しい。木田さんは、「今後も無事に走ってきて欲しいですね。母方は晩成血統でもあり、来年の走りも楽しみにしています。機会があれば、競馬場まで応援に行きたいですね」と、来年を見据える。日本を代表する存在となった本馬の躍進は、日本産馬の希望の光にもなるだろう。父とは真逆の前がかりな戦法で、また観衆を熱くさせて欲しい。