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重賞ウイナーレポート特別編~モーリス・香港マイル

  • 2015年12月25日
  • レース後、万歳で勝利を喜ぶ皆さん
    レース後、万歳で勝利を喜ぶ皆さん
  • 地元JA厚賀支所に掲げられた優勝垂れ幕
    地元JA厚賀支所に掲げられた優勝垂れ幕

 多数の日本馬が参戦した2015年の香港国際競走。日本のマイル王者モーリスと、香港の年度代表馬・エイブルフレンドとの対決で盛り上がった香港マイル(G1)は、日本のモーリスが圧巻の末脚でライバルを抜き去り、栄えある海外G1を手にした。

 本馬の故郷は日高町豊田に構える戸川牧場。家族経営の牧場で、過去にはダート中距離重賞を2勝し、種牡馬となったダイシンオレンジや、オグリキャップ記念(G2)を制したサンディチェリー、地方ダートG1で2度の入着があるブイロッキーを生産している。

 レース当日、同牧場代表の戸川洋二さんは自宅のテレビ画面を通して、生産馬の走りに目を凝らしていた。生産馬による初の海外決戦。前日の晩はよく眠れなかったという。「家族や親せき、10人ぐらい集まって応援していました。直線は絶叫していました。外から伸びてきた時は、そのままとまらないで行ってくれ、という思いでした。ゴールした瞬間は頭が真っ白になりましたね。初の海外遠征で、最高のパフォーマンスを見せてくれました。馬が大人になって、精神的にも強くなったのだと思います。堀宣行厩舎の皆さん、吉田和美オーナー、ノーザンファームの皆さんのおかげです」と、歓喜の胸中を言葉にした。まさに怪物的な強さ。地元馬の快挙を称えて、夜には近隣の生産者や日高町職員が祝福に駆けつけ、万歳で喜び合った。

 本馬は父スクリーンヒーロー、母メジロフランシス、母の父カーネギーという血統。祖母メジロモントレーは1989年のオークス(G1)5着馬で、重賞を4勝。母系は名門・メジロ牧場繁の栄を築いた基礎牝馬の一頭、メジロボサツにさかのぼる。母馬は戸川夫妻が以前、メジロ牧場で働いていたことが縁で牧場へやってきた。配合を考えたのは代表の戸川さんだ。幼少期の本馬については、「骨格がしっかりしていて、牡馬らしい馬でしたね。気が強く、屈しないところは母メジロフランシス似だと思います」と、振り返る。1歳時にHBAサマーセール、2歳時にHBAトレーニングセール上場を経て、吉田和美オーナー所有馬となり、やがてその歩みは世界のゴールシーンへとつながっていった。

 14歳となる母メジロフランシスは同牧場で繁殖生活を送っていて、2015年は本馬の全弟が誕生している。戸川さんは、「体つきや性格はモーリスとは違うタイプですが、こちらも素晴らしい馬です」と、大きな期待を込めている。すでに買い手が決まり、離乳後に同牧場を巣立っている。

 日本だけでなく、世界に知れ渡る馬の生産者となった戸川さんは、興奮を抑えながら、モーリスに続く馬づくりへ邁進している。

 「いつか生産馬でG1を獲りたいと目指してきましたが、これほど連勝できるとは…。1000万クラスからの勢いで挑んだ安田記念(G1)、チャンピオンとして迎えたマイルCS(G1)、そして、日本を代表しての香港と、それぞれ思い出深いです。モーリスの走りで、日本のファンの皆さんや競馬関係者に喜んでもらえたら嬉しいです。これからもおごることなく、戸川牧場らしい馬づくりに励んでいきたい。放牧時間をかけて運動させて、丈夫で体のしっかりした馬を送り出していきたいです」