第43回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウムが開催される
7月16日、新ひだか町静内にある静内エクリプスホテル2Fエクリプスホールにおいて、「第43回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」が開催された。
このシンポジウムはJRA日本中央競馬会の主催。本年は「馬における最新の画像診断法」と題し、教育講演1題、シンポジウム演題4題で行われた。
シンポジウムには馬産地日高・胆振はもとより、全国から200名を超える獣医師や競馬関係者が出席。開会にあたり主催者を代表して井上真JRA馬事担当理事は「生産地の皆様におかれましては、日頃より育成馬等予防接種推進事業、馬鼻肺炎ワクチン接種推進事業、馬伝染性子宮炎侵入防止対策事業などに対し、多大なるご理解とご協力いただき、この場を借りてお礼申し上げます。さて、本日のシンポジウムでは馬における最新の画像診断法をテーマに進めていきます。本日のシンポジウムをきっかけに、わが国における馬の画像診断法が発展することと、今後の軽種馬生産や育成の一助となることを祈念します」とあいさつした。
最初の教育講演では、帯広畜産大学の山田一孝臨床獣医学研究部門教授が講師となり、「馬臨床におけるCT、MRI、骨シンチグラフィーの現状と将来」をテーマに講演。スライドと動画を交えながら、断層画像、画像の読影に必要な知識、MRI、シンチグラフィーなどについて説明し、シンチグラフィーの導入は、2020年東京オリンピック馬術競技の成功、獣医療レベルの向上、国際水準の獣医教育につながると期待をかけた。
続いて、MRI、CTなどを用いた画像診断法に関する4つのシンポジウム演題を講演。午後からはJRAによる薬物規制に関する報告の後、8つの一般講演が行われた。
当日開催されたプログラムは下記の通り。
○シンポジウム
馬における最新の画像診断法
座長:加藤智弘(JRA栗東トレーニング・センター)
教育講演
「馬臨床におけるCT、MRI、骨シンチグラフィーの現状と将来」講師:山田一孝(帯広畜産大学臨床獣医学研究部門 教授)
シンポジウム演題
1)「競走馬の下肢部運動器疾患に対する、馬用立位 MRI 検査の応用」講師:溝部文彬(JRA栗東トレーニング・センター)
2)「サラブレッドの発育期整形外科的疾患に対するCT撮像の検討~頚椎圧迫性脊髄症の診断への応用について~」講師:佐藤文夫(JRA日高育成牧場)
3)「超音波エラストグラフィおよびパワードップラーを用いた浅屈腱炎の評価」講師:田村周久(JRA競走馬総合研究所・本所)
4)「サラブレッドの上部気道における動的気道狭窄~Mobile Laryngoscope(R)を用いた運動時内視鏡検査~」講師:加藤史樹(社台ホースクリニック)
○報告事項
進行:松田芳和(JRA馬事部防疫課)
1)「薬物規制について」 講師:神谷和宏 (JRA馬事部獣医課)
○一般講演
座長:樋口徹(NOSAI日高家畜診療センター)
1)「1歳馬上部気道内視鏡検査所見への鎮静剤の影響に関する調査」講師:前田昌也(日高軽種馬農業協同組合)
2)「Mobile Laryngoscope(R)を用いた運動時内視鏡検査により診断された上部気道疾患に対して外科手術を行ったサラブレッド21頭に対する回顧的調査」講師:田上正明(社台ホースクリニック)
座長:眞下聖吾(JRA美浦トレーニング・センター)
3)「NOSAI日高家畜診療センターにおけるプロポフォール使用実例」講師:後藤忠広(NOSAI日高家畜診療センター)
4)「競走馬におけるプロポフォールあるいはアルファキサロンを用いた短時間静脈麻酔法」講師:青木基記(JRA馬事部防疫課)
座長:齊藤真里子(北海道日高家畜保健衛生所)
5)「馬増殖性腸炎を罹患した馬の市場成績」講師:荒川雄季(NOSAI日高中部家畜診療所)
6)「JRA施設内における Clostridium difficile 感染症の発生傾向と遺伝学的性状との関連」講師:木下優太(JRA競走馬総合研究所・栃木支所)
座長:辻村行司(JRA競走馬総合研究所・栃木支所)
7)「過去10年にわたる軽種馬の流産原因検査成績について」講師:宮澤和貴(北海道日高家畜保健衛生所)
8)「馬の感染性関節炎の診断におけるピットフォール~診断に注意を要した症例報告~」講師:鈴木吏(社台ホースクリニック)