門別競馬場で栄冠賞が行われる
梅雨がないと言われている北海道でも、冷たい雨が何日も続く時期を“蝦夷梅雨”と呼ぶ。そんな蝦夷梅雨真っ只中の6月30日、日本一早い新馬戦につづき2歳馬たちによる日本一早い重賞競走、TVh杯第40回栄冠賞(H2)【アイルハヴアナザー賞】が距離1200mで行われた。
歴代優勝馬のほとんどが他場へ移籍しても活躍している出世レースだけに、世代最初の重賞勝ちを目指し牡馬6頭、牝馬6頭の12頭がエントリーした。
1番人気は、スーパーフレッシュチャレンジ競走でデビューしたものの、勝ったプレイザゲームにハナ差及ばず、2戦目アタックチャレンジ競走で後続を7馬身ちぎる圧勝劇を演じたスティールキング(牡2)。2番人気は牝馬のモダンウーマンで、こちらも新馬戦を8馬身差で圧勝している。少し離れた3番人気に世代最初の勝ち名乗りをあげたプレイザゲーム(牡2)が支持され、ここまでが単勝一桁の人気を集めた。
降り続く雨の中ファンファーレが鳴り響き、脚抜きの良い稍重の馬場状態でレースはスタート。真っ先に飛び出したモダンウーマンに、エクラヴァンクール産駒のランランランがつづき、9番人気フレンチイデアル、プレイザゲーム、エイシンキロオルらも先頭集団を形成。1番人気のスティールキングは外目から中団につけ、直線の末脚に賭けた。
4コーナーを回ると、逃げるモダンウーマンが後続を突き放しにかかる。しかし、それを阻止したのは同枠、同厩舎、同オーナーのタイニーダンサーだった。残り100mでモダンウーマンを捕らえると、3馬身差を付けゴール板を突き抜けた。勝ち時計1分12秒7(稍重)は門別競馬場1200mで施行されるようになってから最速タイム。2着は最後まで粘ったモダンウーマンが入り、プレイザゲームが3着、1番人気のスティールキングは外から追い込み4着を確保した。
所属馬のワンツーフィニッシュに管理する角川秀樹調教師は「新馬の時も後ろから行く競馬でしたが、今回も思ったより後ろ(後方3番手)からの競馬になり、頭数も多いし砂を被って戦意喪失しないか不安もありました。でも直線は良く伸びてくれたし、モダンウーマンも負けはしましたが良いレースをしてくれましたから、夢は広がりますね」と頬を緩ませた。
また、この勝利で7月26日に函館競馬場で行われる函館2歳ステークス(G3)への出走資格を得たことに関しては「父がサウスヴィグラスだから得意ということはないだろうけど、時計のかかる芝なら勝負になるんじゃないかな。オーナーと相談して決めますよ」と前向きに検討しているようだ。
タイニーダンサーは父サウスヴィグラス、母キハク、母の父アサティスという血統の牝馬で、新ひだか町静内にあるグランド牧場のオーナーブリーディングホース。
表彰台に立ったグランド牧場の伊藤佳幸代表は「雨が降って馬場が渋ったらモダンウーマンの方が有利かなと思ってレースを見ていましたが、直線でタイニーダンサーが抜けてきたときはあまりの強さに驚きましたよ。2頭で切磋琢磨してお互いを高めていってくれたら嬉しいですね」と笑顔で語った。