重賞ウイナーレポート特別編~ジェンティルドンナ・ドバイシーマクラシック(G1)
日本馬のレベルの高さを世界に認めさせたドバイミーティング。ドバイデューティフリー(G1)ではジャスタウェイが、従来のレコードを大幅に更新して優勝。そして昨年のドバイシーマクラシック(G1)で2着となったジェンティルドンナは、その時のリベンジを果たすかのようにゴール前で鋭い反応を見せ、日本馬としては3頭目となる優勝を果たした。
「昨年は負けられないとの思いも強かったのですが、今回は気構えることなくレースを見ることができました」とは、ノーザンファーム空港牧場でジェンティルドンナの育成調教を手がけた伊藤賢厩舎長。3歳時には牝馬三冠とジャパンC(G1)を優勝し、JRA年度代表馬にも選出。日本最強馬として臨むこととなった昨年のドバイシーマクラシック(G1)だったが、先に抜けだしたセントニコラスアビーを捕らえられずに2着に敗れる。その後、日本に帰国してからは史上初となるジャパンC(G1)での連覇を果たすも、一年間を通じての成績では4戦して1勝と、3歳時の圧倒的なパフォーマンスと比較した場合だと、不完全燃焼と言えるような競走成績だった。
しかも、ドバイシーマクラシック(G1)の前哨戦となる前走の京都記念(G1)では、初めて掲示板圏内を外して6着に敗退。昨年のリベンジだけでなく、復活を果たす舞台ともなったのが、今年のドバイシーマクラシック(G1)だった。
「道中は様々なプレッシャーを受けていましたが、それをはね除けてあのパフォーマンスを見せてくれたのは凄いとしか言いようがありません。道中は折り合いも付いていましたし、プレッシャーをかけられながらでもインコースで我慢していたので、4コーナーを過ぎた辺りでは勝てるのではと思いました」(伊藤厩舎長)
しかし、最後の直線で内をついたジェンティルドンナは、密集する馬群の中で進路を失う。並みの馬なら、そして並みの騎手ならレースを諦めてしまうところ。しかしジェンティルドンナ、そして4歳時のジャパンC(G1)でジェンティルドンナを勝利へと導いたR.ムーア騎手の闘志は薄れてはいなかった。
「一瞬、ブレーキを踏んだようにも見えました。ただああいったタイトな競馬でも、勝利へと繋げることができるのがジェンティルドンナの強さだと思います」(伊藤厩舎長)
これで国内外を合わせてG1を6勝目。3歳、4歳、そして5歳と、高いレベルで安定した成績を残すジェンティルドンナに対して、「牡馬に比べると変化が激しい牝馬の状態を持続させてくれている、石坂厩舎のスタッフや、ノーザンファームしがらきのスタッフの管理が凄いと思いますし、まだ成長しているような気すらしてきます」と伊藤厩舎長は驚きの表情を浮かべる。この後は宝塚記念(G1)への出走を予定。既にノーザンファームしがらきから石坂厩舎へ移動しているとのことだが、ドバイシーマクラシック(G1)と同様に宝塚記念(G1)もリベンジの舞台となる。
「リベンジというよりも、今年は出走するレース全てで勝利をあげて欲しいです。ジェンティルドンナならそれも可能だと思いますし、まずは宝塚記念(G1)でドバイシーマクラシック(G1)のような強い姿をまた見せてもらいたいです」(伊藤厩舎長)