アナボリックステロイドに関する講演会が行われる
2月27日、新冠町の新冠レ・コード館町民ホールにおいて、JRA日本中央競馬会馬事部獣医課の草野寛一氏を講師に招き、「競馬とドーピング~アナボリックステロイドについて~」と題した講演会が、日高・胆振・十勝軽種馬農業協同組合の主催、JRA日本中央競馬会の協力で開催された。
日高・胆振・十勝軽種馬農業協同組合が開設する北海道市場では、今年から上場馬の健全性確保と市場の公正運営のため、アナボリックステロイドの使用を禁止するとともに、5月にJRA函館競馬場で開催するトレーニングセールの上場予定馬については、アナボリックステロイド検査を実施することにした。講演会はアナボリックステロイドが競走馬に及ぼす影響について、馬産地の関係者に広く知ってもらおうと開催。会場となった町民ホールには、日高・胆振・十勝軽種馬農業協同組合の職員や理事、胆振・日高の生産者、育成場スタッフ、獣医師など約100人が集まった。
講演に先立ち主催者を代表して北海道市場副委員長を務める古川雅且日高軽種馬農業協同組合理事が挨拶。「本日はお忙しい中、講演会にご出席いただきありがとうございます。JRAでは4月からドーピング検査をすることになり、北海道市場でも本年の函館競馬場で行うトレーニングセールから検査をすることが決まりました。実際のところ、アナボリックステロイドがどのような影響を及ぼすのかよくわからないのが現状です。今日の講演を機会に一緒に勉強してアナボリックステロイドについて考えてみたいと思います」と趣旨を説明した。
講師の草野寛一氏は日本大学農獣医学部獣医学科卒業後の平成9年4月にJRA日本中央競馬会に入会。現在は馬事部獣医課に所属し、ドーピング国際委員として世界中の競馬の公正確保やその発展に努めている。主な研究歴には「ウマの運動生理学および呼吸器疾患に関する研究」があり、平成21年2月には東京大学獣医学博士号を取得している。
講演では、なぜ競馬においてドーピングが良くないことなのかを、ギャンブル、スポーツ、優良種の選抜試験、動物の福祉と4つの観点から説明。また、禁止薬物の使用による処分や禁止薬物に関する世界と日本の比較、ドーピング検査のやり方など、ドーピング全般についてわかりやすく解説した。
続いてアナボリックステロイドの効果、考え方、規制方針、副作用、JRAの対応などを紹介。さらにせりに薬物検査を導入することで「見た目や能力が不正に操作されない。よい商品を扱っているという信用と競馬のイメージアップにつながる」と、最近世間を騒がせた有名ホテルの食品偽装問題を例にとり、アナボリックステロイドの使用禁止を強く訴えた。
出席した競馬関係者は「とても勉強になりました。この問題は競馬サークルが一丸となって取り組んでいかなければならないと強く思いました」と感想を口にしていた。