馬産地ニュース

「馬の疝痛」に関する講演会が行われる

  • 2013年12月02日
  • 講師を務めたナサニエル A ホワイト博士
    講師を務めたナサニエル A ホワイト博士
  • 主催者を代表して挨拶する日本軽種馬協会静内種馬場場長で、軽種馬生産技術総合研修センターの中西信吾センター長
    主催者を代表して挨拶する日本軽種馬協会静内種馬場場長で、軽種馬生産技術総合研修センターの中西信吾センター長
  • 講演会を進行した樋口徹先生と通訳した石原章和先生(写真左から)
    講演会を進行した樋口徹先生と通訳した石原章和先生(写真左から)
  • 講演会には370名以上の牧場関係者や獣医師が出席 
    講演会には370名以上の牧場関係者や獣医師が出席 

   11月29日夜、新ひだか町静内の静内エクリプスホテル(旧静内ウエリントンホテル)において、日本軽種馬協会が主催する「馬の疝痛」に関する講演会が行われた。

   この講演会は日本軽種馬協会の軽種馬経営高度化指導研修事業の一環。日本ウマ科学会臨床獣医師ワーキンググループの共催で、日高獣医師会、胆振獣医師会、JRA日高育成牧場、BTC軽種馬育成調教センターの後援で実施された。

   講演内容は「馬の疝痛の原因と症状」。講師には米国バージニア工科大学馬診療センター名誉教授であるナサニエル A ホワイト博士を招いた。

   ホワイト博士は1971年にコーネル大学で獣医学博士となり、その後はカリフォルニア大学デービス校をはじめとした幾つかの大学で馬の外科学の教官として活躍。1985年からはバージニア工科大学のマリオン・デュポン・スコット エクワインメディカルセンターに勤務し、現在は外科の教授をしている。また、AAEP(American Associationof Equine Practitioners)のプレジデントも兼任。外科学の中でもとくに馬の疝痛に関する研究や清書の執筆で世界的に知られている。

   講演会の進行は日高地区農業共済組合家畜診療センター所長で日本ウマ科学会臨床獣医師ワーキンググループのメンバーでもある日高獣医師会の樋口徹氏が、通訳は昨年までオハイオ州立大学獣医学科比較整形外科の博士研究員を務め、現在は麻布大学付属動物病院で産業動物の診療に携わりながら馬の運動疾患に対する診断法と治療法を研究している麻布大学獣医学部獣医学科の石原章和博士が担当した。

   講演会の開会にあたり主催者を代表して日本軽種馬協会静内種馬場場長で、軽種馬生産技術総合研修センターの中西信吾センター長は「ホワイト先生はAAEPのプレジデントもされているという非常にご多忙の中、日本ウマ科学会のご尽力により本日、日高で講演していただけることになりました。牧場でどんなときに疝痛が起きるのか、予防するにはどのような方法があるのか、貴重なお話が伺えると思います。」とあいさつ。馬は疝痛が原因で命を落とすことが多いことから、講演会には370名以上の牧場関係者や獣医師がつめ掛け、ホテルが用意した椅子が足りなくなるほどだった。

   ホワイト博士は疝痛の発症状況、発症率、死亡率や疝痛になる危険因子、要因、疝痛手術後の生存率、レース成績などについて具体的な数字を示して説明。疝痛を予防するには牧場側と馬側の二つの要因があり、牧場側への対策として給餌法や管理方法などをレクチャーした。

   講演後には出席者から複数の質問が寄せられると、ホワイト博士は的確にアドバイス。若手の獣医師へは「今後の研究課題として取り組んでください」と激励の言葉を送っていた。

   中西信吾センター長は「疝痛は牧場の方が一番気にしていている問題のひとつです。今回の講演では皆さんが悩んでいることに対して的確に数字を示してくれました。今後の飼養改善に役立てていただければうれしいです。また、獣医師たちにとってホワイト先生は憧れの存在ですので、今日の話はとてもためになったと思います」と講演会を振り返っていた。