馬産地ニュース

新ひだか町三石で牧場関係者向け講演会

  • 2013年03月04日
  • 約60名の牧場関係者が参加した
    約60名の牧場関係者が参加した
  • 「離乳子馬のローソニア感染症」について講演した遠藤祥郎氏
    「離乳子馬のローソニア感染症」について講演した遠藤祥郎氏
  • 「馬のスピード遺伝子」について講演した佐藤文夫氏
    「馬のスピード遺伝子」について講演した佐藤文夫氏
  • 「JRA育成馬の購買からブリーズアップセールまで」について講演した石丸睦樹氏
    「JRA育成馬の購買からブリーズアップセールまで」について講演した石丸睦樹氏
  • 冒頭で主催する三石軽種馬生産振興会の斉藤雅宣会長が挨拶した
    冒頭で主催する三石軽種馬生産振興会の斉藤雅宣会長が挨拶した

 一年で最も短い2月最後の日、新ひだか町三石のJAみついし大会議室で、牧場関係者を対象とした講演会(主催・三石軽種馬生産振興会)が行われた。

 出産時期に差しかかっていながら、講演会には地元三石地区の生産者を中心に約60名が参加。午後6時30分より1時間30分にわたって行われた。

 講演会の最初のテーマは「離乳子馬のローソニア感染症」で、JRA日高育成牧場・業務課診療防疫係長の遠藤祥郎氏が講演した。

 ローソニア感染症は「Lawsonia Intracelluraris」という細菌による感染症で、日本では2009年に胆振地区で発症馬が確認された。離乳後に発症しやすく、当歳秋に痩せた馬体が戻らなかったり、発熱して四肢がむくんだり、下痢・軟便が続いたりする子馬にはその疑いがある。アメリカではローソニア感染症にかかった馬の市場取引結果が、有意に低かったことが報告されており、日本でも関心が高まりつつある。参加者からは「発症馬の食欲改善にはどう対処したら良いか」、「発症したら健康な馬と隔離した方が良いのか」、「感染経路は何なのか」といった質問が飛んでいた。

 次に、「馬のスピード遺伝子」をテーマにJRA日高育成牧場・生産育成研究室研究役の佐藤文夫氏が講演した。

 ここでは2009年に解読されたウマの遺伝子情報をもとに、筋量を調節(抑制)する遺伝子であるミオスタチン遺伝子に着目し、遺伝子と距離適性の関わりに迫った。佐藤氏によれば、ミオスタチン遺伝子はC型とT型の組み合わせからなり、C/C型、C/T型、T/T型の3種類に分類される。C/C型は短距離、T/T型は長距離に強いというデータがあり、日本のオープン馬にはC/T型が多いことが調査で判明している。近年、短距離重賞の頻度が高まっているオーストラリアでは、ヨーロッパに比べてC/C型競走馬の割合が多くなっているという。国外では特許をとった企業が有料でこの遺伝子情報を伝えており、生産者がその情報を買い、交配馬選択に生かしているという。佐藤氏は、日本でもいずれ有料で遺伝子情報を得られるようになるのではと示唆していた。

 最後に、こちらもJRA日高育成牧場の石丸睦樹氏が「JRA育成馬の購買からブリーズアップセールまで」をテーマに講演した。

 JRAブリーズアップセール出身の重賞馬サウンドリアーナやセイウンワンダー等の立ち写真をもとに、「馬の見方」について熱心に説明。時間の関係で「レポジトリーに対する考え方」、「育成馬の入厩から売却まで」についての内容には深く触れられなかったが、馬のバランスやプロポーションについて、わかりやすくチェックポイントを述べた。

 講演会終了後には講演者へ直接質問をする生産者や、テーマについて議論する生産者の姿が目立っていた。遠藤祥郎氏は講演終了後、「これだけの質問があったということは、参加者の関心が高く、テーマについて少なからず理解していただけたのだと思います。」と話し、用意した資料を丁寧にまとめていた。