馬産地ニュース

日高管内生産馬が6年ぶりに海外G1制覇

  • 2012年12月14日
  • ロードカナロアの母レディブラッサム
    ロードカナロアの母レディブラッサム
  • 穏やかな性格ですが、負けん気の強さもあります
    穏やかな性格ですが、負けん気の強さもあります
  • 右から繁殖部門の杉山寿広さん、小森忠夫場長、上渡保さん
    右から繁殖部門の杉山寿広さん、小森忠夫場長、上渡保さん
  • コスモバルクに続き、三石産馬が海外G1制覇
    コスモバルクに続き、三石産馬が海外G1制覇

 北海道の馬産地日高に快挙のニュースが飛び込んできた。12月9日、香港・シャティン競馬場で行われたロンジン香港スプリント(G1)に出走したロードカナロアが、2着に2馬身半差を付けて完勝し、日高管内生産馬として久しぶりの海外G1制覇を叶えた。

 日本産馬のレベル向上に伴い、近年は海外遠征が珍しくなくなった。それはまた、世界の壁を思い知らされることでもあった。2006年のシンガポール航空国際カップ(G1)を制したコスモバルク(加野牧場生産)以来、ウオッカ、エスポワールシチー、ジャガーメイル、スマートファルコン、トランセンド、ナカヤマフェスタ、バンブーエール、ヒルノダムール、マツリダゴッホ、メイショウサムソン、メイショウボーラー、ローレルゲレイロといった強い日高管内生産馬が遠征したものの、惜敗や無念の惨敗を繰り返していた。待ち焦がれた勝利。今回の勝利は、日高管内の牧場関係者に、大きな希望をもたらしたであろう。

 ロードカナロアの生産は新ひだか町三石にあるケイアイファーム。繁殖牝馬35頭の牧場で、生産から育成を一貫して手がけている。同牧場ゼネラルマネージャーの中村智幸さんは、「ラッキーナインをはじめ、海外の強豪馬が揃っていましたし、これまで日本馬が勝てなかったG1なので、そう甘くはないだろうと思っていました。ゴールするまでは勝利の確信を持てませんでしたが、勝った時は本当に嬉しかったですね。着差もついたし、驚くような強さでした。日本の重賞でさえ、そう簡単には勝てませんからね。スタッフもみんな、興奮していましたよ。すごいことをやってくれた、そんな感じです。」と、勝利をかみしめる。

 レース当日晩は牧場スタッフが集まり、近所の生産者を招いての祝勝会。スプリンターズS(G1)に続く、下半期2度目の勝利の美酒に酔いしれた。繁殖部門の小森忠夫場長は「感無量です。」、杉山寿広さんは「場長の家で“行けー!”と叫んでいました。信じられないほど強かった。」と、歓喜の瞬間を振り返った。

 香港の競馬ファンは、「またか」と思い知ったのではないか。今年春の香港・クイーンエリザベス2世C(G1)を制したルーラーシップ(ノーザンF生産)に続き、ロードカナロアもキングカメハメハ産駒。日本が生んだ大王は、再び海外へ名を轟かせた。JC優勝馬ローズキングダム、3冠牝馬アパパネに加え、海外G1馬が2頭誕生。種付け料は400、500、600、700万円と年々上昇中で、じわりじわりと高い地位を確かなものとしている。

 ロードカナロアの母レディブラッサムはストームキャットの肌で、今年16歳。祖母サラトガデューは米国最優秀3歳牝馬という良血馬だ。穏やかな気性で、人が寄っていくと愛嬌良く近寄ってくる。クラブ馬主会員から、安産のお守りやお手紙が届くこともあるほど人気者だという。今年は空胎で、来季の交配へ向けて静かに充電中。ここ数年の子育て期間中は、オークス馬・レディパステル、レディバラード(ダノンバラードの母)、ワンフォーローズ(レディアルバローザの母)らと一緒に過ごしていた。

 産駒実績は非常に優秀で、デビューした5頭のうち4頭がJRAで勝ち上がっている。2番仔ロードバリオス(牡7歳、父ブライアンズタイム)はJRA・6勝、6番仔ロードガルーダ(牡3歳、父アグネスタキオン)はあっさりと未勝利、500万を突破し、こちらも出世が見込める。7番仔アウトシャイン(牝2歳、父ネオユニヴァース)も2歳OPで奮闘している。

 同牧場では母レディブラッサムの1歳(牡、父マンハッタンカフェ)と、当歳(牝、父ディープインパクト)が育っている。中村さんによると、「ともに順調ですね。1歳は素直な気性で扱いやすいです。こちらは短距離~中距離まで適応できるのではと思います。当歳は気の強い馬ですね。素軽い動きが目立っています。」との近況。1歳の仔は栗東・安田隆行厩舎入厩予定で、総額5,250万円、一口出資金105,000円(500口募集)でロードサラブレッドオーナーズの募集馬となっている。また、レディブラッサムの後継牝馬として、現役時代不出走のレディサファイア(牝5歳、父シンボリクリスエス)が里帰りしており、今年、がっちりとした馬体の初仔(牡、父クロフネ)を生んでいる。

 取材中も牧場事務所にはいくつものお祝いの花が届けられていた。中村さんは喜びを胸に、牧場の未来を見据える。「今後も無事に走って欲しいです。テレビや現地で応援してくれたファンの皆さま、本当にありがとうございました。牧場では気持ち新たに、第2、第3のロードカナロアとなる、強い馬を目指していきます。」