日本軽種馬青年部連絡協議会の講演会が行われる
11月29日夜、日本軽種馬青年部連絡協議会(三好直樹会長)は札幌市の札幌東急イン2階チェルシールームにおいて、頃末憲治JRA日高育成牧場専門役を講師に招き「草食動物である馬を考える-生産から育成まで-」と題した講演会を開催した。
講演会には会員や牧場関係者など約50名が出席。講演を前に上水厚副会長は「今日の講演は生産から育成まで広範囲に渡っています。地域も経営形態も違う私たちの組織とって大変ありがたいことと思います。今日は普段接している馬の生活から少しだけ離れて新鮮な気持ちでお話を聞き、また違った接し方や考え方を見つけられればと思っています」と挨拶した。
講師の頃末さんは帯広畜産大学卒業後の平成7年にJRAに入会。栗東トレーニングセンター、函館競馬場、馬事部防疫課、美浦トレーニングセンター、日高育成牧場、2年間のアイルランド研修を経て、平成21年から専門役として勤務している。幅広い知識と経験に裏付けされた理論は関係者の間で知られており、小学生や初心者を対象とした馬講座から競馬のプロ、専門家を対象とした講演会まで、数多くの講演依頼がある講師として人気が高い。
頃末さんは草食動物である馬は「人を乗せるためにこの世に存在しているのではない」と強調。馬の消化機能はほかの草食動物より劣っていることや競走馬はアスリートとして育種改良されたことを伝えた。さらに子馬の容貌の変化についても説明。データをもとに骨と筋肉の発達時期の相違、背や頚の成長率は高いが管骨の長さは生まれたときとそれほど変わらないことを示した。
また、「現代競馬は種牡馬ビジネスのためにある」と断言。マーケットブリーダーは市場のニーズを供給するため、今後も競馬は種牡馬ビジネスを中心に回り、商業主義を背景にした種牡馬ビジネスは「サラブレッド生産を改良から遺伝子固定へと向かわせるだろう」と持論を展開した。
最後に頃末さんは馬の走り方について言及。“走る”とは単なる重心の前への移動で、理想の走行は重心の等速直線運動とし、「速く走るためには効率良く重心を前方に移動すること」と陸上選手を例にわかりやすく解説した上で、馬の後肢の駆動力は股関節の可動域に関係しているとし、可動域を大きくするためのメカニズムをレクチャーした。頃末さんはほかにも外国人騎手と日本人騎手のフォームや追い方、ブレーキングにおける枝バミの効果、坂路トレーニングの長所などについても理論的に説いた。
講演を聴講していた三好会長は「普段聞けないような切り口で講演していただきました。今後、私たちが生産育成していく上で、なにかヒントになることがあれば良いなと思います」と満足そうに会場を後にしていた。