第3回再生医療セミナーが行われる
12月7日夜、新ひだか町の静内ウエリントンホテルにおいて、プロテクタスヘルス社(本社・愛国ダブリン)が主催する「第3回幹細胞治療及び再生医療セミナー」が行われた。
10月から開かれたセミナーは今回が最後。会場には軽種馬関係者や獣医師など約50名が出席した。
「臍帯血バンク事業の実際および今後の日本での事業展開について」と題したセミナーでは、日本で再生医療に取り組む河田憲(株)かわたカワタエクワインプラクティス代表が第1回、第2回に引き続き、幹細胞とは、ヒトやウマでの幹細胞を用いた再生医療、競走馬の疾患、ウマにおける幹細胞の主要な採取部位、臍帯血バンクについてレクチャー。再生医療に関しては「日本ではまだ屈腱炎の治療でしか例がないが、海外では蹄葉炎でも治療例があり、その技術はどんどん進歩している。とはいえ、必ずしも治るものではないが、実践することでレベルが上がっていく」としたうえで、「臍帯血は生まれたときに採取するので危険が少ない」と強調した。
プロテクタスヘルス社のデビッド・クリミンズ氏は、同社が取り組む欧米での臍帯血バンクを説明。ウマの臍帯血幹細胞バンクは「世界初で、幹細胞(ステムセル)を臍帯血より抽出し、極低温保存し、必要なときに幹細胞を返却するもの」と訴えた。そして、臍帯血はほかの幹細胞より「ストレス・精神的ショック、危険性が無く、細胞の生存力が高く、即座に利用可能で、効力が高い」と利点を挙げた。
また、「最近の研究結果は、馬の領域において臍帯幹細胞は他のどの細胞よりも秀でた再生能力を持つ可能性があることを示している...」(UC Davis)、「臍帯血の優れた点は、血液の採取から治療まで全て短期間で完了できることだ。なぜなら、怪我をしてから治療までに要するこの『時間』が非常に重要だからだ」(Dr.Johnson,Woodford Vets)、「馬治療の専門家である、我々Rood & Riddleとカリフォルニア大学は臍帯血から採取した幹細胞を選びます」(Dr.Hopper,Rood and Riddle)、「臍帯血幹細胞を簡単に採取するだなんて...プロテクタスはものすごい技術を生み出したね。屈腱炎、骨折、そして特に関節症治療に効果的な技術ができたことに私は興奮しているよ」(Dr.Cheney)、「私たちはまさにプロテクタスが採取する臍帯血を必要としています。あらゆる科学的根拠において臍帯血幹細胞は他のどのタイプの幹細胞に比べてはるかに優れていると示されています」(Dr.Northrop)、「プロテクタスのこの技術は、今後の時代のトレンドとなり、私たち獣医は全てのクライアントにこの優れた技術を提供すべきだと思います。近い将来、彼らの技術が商品となり実用化される日がくるでしょう」(Mark Taylor,Taylor Made Farm)といった獣医師たちのコメントを紹介。
さらに「脂肪由来は、免疫応答性が最も高い。臍帯血由来は、免疫応答性が最も低い。そのため、移植により適している。臍帯血由来のテロメアは、骨髄由来のものより長い。臍帯血由来は、軟骨を形成する能力がより高く、ペレットがより重い」(Koch:lmmune Properties of Cord Blood,Bone Marrow & Fat MSC's)、「自己移植よりも、同種多種にて関節内からの応答性が高い。ただし、臍帯血由来は、同種反応がほとんどない」(Galuppo:Reactions from Allogenic v Autologous MSC's)、「骨髄由来MSCは加齢と共に減少していく」(Borjesson:MSC's from Fat,Bone Marrow,Cord Blood & Cord Tissue)、「動脈注射の方が静脈注射より分布が良好」(UC Davis:In Vivo Tracking of MSC's)といった臨床論文で、その効果の高さを示した。
日本での臍帯血バンク事業は来年からスタートする予定。今後はプロテクタスヘルス社、伊藤忠商事(株)、(株)かわた カワタエクワインプラクティスらが協議して、ラボの設置場所、価格面などを調整していくという。セミナーに関する詳細はカワタエクワインプラクティス(http://kawata-ep.com/)、臍帯血バンクに関する詳細はプロテクタスヘルス社(http://protectashealth.com/)まで。