馬産地ニュース

ヴィクトワールピサの挑戦

  • 2011年07月29日
  • ヴィクトワールピサ-1
    ヴィクトワールピサ-1
  • ヴィクトワールピサ-2
    ヴィクトワールピサ-2
  • ヴィクトワールピサ-3
    ヴィクトワールピサ-3

  「自分たちの時代は世界に追いつくことを目標にしてきました。そして、今は血統レベルも技術の面でも世界のトップにほぼ肩を並べるようなところにまできたと思います。これからは具体的な目標として、世界と勝負できるような馬づくり。それが求められる時代になると思います」と社台ファームの吉田照哉氏は、7月27日に行なわれたBOKUJOBの会場内に流れたビデオレターで、次代を担う若者に呼びかけた。人懐っこい笑顔に、いつものように飄々とした口調。しかし、60歳を超えてもまだ衰えを知らない鋭い眼光は日本のトップブリーダーとしての自信に満ちていた。

  2011年春のドバイワールドC(G1)を制した社台ファーム生産のヴィクトワールピサは、この秋、凱旋門賞(G1)へと向かう。もし勝てば、いわゆる“2階級制覇”。ドバイワールドC(G1)の覇者として史上初の凱旋門賞優勝馬となる。

  春シーズンは、歓喜のドバイワールドC(G1)のあと香港シャティン競馬場に移動し5月1日の「オーデマピゲクイーンエリザベスII世カップ(G1)」に出走を予定していたが、直前になって右後肢に軽度の跛行を発症したため、回避して帰国。三木ホースランドパークで帰国検疫を行い、現在は北海道の社台ファームで調整を積まれている。「ローテーションについては調教師に一任しています。夏バテをすることもなく、好調をキープしています。このまま無事に送り出したい」と同ファームの東礼治朗調教主任。このあと、函館競馬場へ移動し8月4日から美浦トレセンで検疫に入り、8月10日(水)、エールフランス機でナカヤマフェスタ、ナカヤマナイト、ヒルノダムールらとともに決戦の地フランスへ出発。9月11日のフォワ賞(G2)をステップに凱旋門賞(G1)へ向かう予定だ。

  59.5kgの酷量を背負うロンシャン競馬場の2400m。ヴィクトワールピサにとっては決して有利な条件とはいえないが、かつて、名牝ウオッカを3度目のジャパンカップ(G1)で勝利に導いたように敗戦の中から勝利のヒントをイメージできるのが角居師だ。師は、BOKUJOBのイベントで東京競馬場に集まった若者に対して「負けたまま挑戦を止めてしまえば負けになる。負けた責任は自分にあるが、実際に馬にたずさわるスタッフには、絶えず挑戦するという場所を与えてあげたい。ほかの人が真似できない仕事をできることを誇りに思って欲しい」という言葉を贈った。

  どうやらヴィクトワールピサにとっては、世界最高峰レースでの勝利もひとつの通過点に過ぎなかったようだ。10月2日ロンシャン競馬場。チャレンジできる喜びを胸にヴィクトワールピサが再び世界へと挑む。