ヴィクトワールピサを生産した社台ファーム喜びの声
3月26日(日本時間27日午前2時35分)、ドバイのメイダン競馬場で行われた世界最高賞金レース「ドバイワールドカップ」(G1、AW2000m)で日本の社台ファームが生産したヴィクトワールピサ(牡4歳、父ネオユニヴァース)が優勝した。1996年にスタートし、いまや世界を代表するレースになった同レースを、日本産馬が制したのは初の快挙だった。
「夢見心地とはこういうことなんでしょうか」と社台ファームの長浜卓也さんは、そう喜びを表現した。「父のネオユニヴァースも社台ファームの生産馬です。自分たちのつくってきた血統が世界を制したことは嬉しいという言葉では言い足りないくらいですが、ほかに表現が見当たりません」と感情を爆発させている。
レースはトランセンドの逃げではじまった。ヴィクトワールピサはまさかの出遅れで最後方を進む。しかし、何度も同馬の手綱をとり、また父のネオユニヴァースも2冠に導いたM.デムーロ騎手が慌てることなくヴィクトワールピサのリズムを取り戻すことに専念し、そしてスローペースだと判断すると向こう正面で一気に進出。逃げるトランセンドの2番手まで押し上げた。そして、直線で早めに先頭に立つと、そのまま一度も他馬に先頭を譲ることなくゴールへと飛び込んだ。
「これまでの日本の常識では考えられない、すごい競馬だったと思います。騎手の判断も、それに応えた馬も凄いとしか言いようがない」と笑顔になった。
過去をふりかえると、ドバイワールドカップの歴史は日本の馬たちには厳しい歴史だった。日本代表のライブリマウントは、当時の米国最強馬シガーの前に見せ場をつくるのがやっと。ホクトベガは競走中止の憂き目にあい、トゥザヴィクトリーは2着と健闘したものの、ヴァーミリアン、カネヒキリといった歴代最強クラスの馬たちも、厚い世界の壁の前に跳ね返されてしまった。
「強い馬づくりには方程式のようなものは存在しないと思っています。頂点にいたる道のりは多々あるのでしょうが、社台ファームとしては、とにかく頑丈で丈夫な馬をつくる」とキッパリ。悩みはあっても迷いはないと言う。頑丈で丈夫な馬をつくり、1頭でも多くの生産馬を競馬場に送り出すこと。その積み重ねが頂点を高くした。「今後も競走馬にする確率、出走率、勝率。これらの精度を上げていきたい」と第2、第3のヴィクトワールピサづくりに意欲を見せている。