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馬栄養学者パット・ハリス博士の講演会が開かれる

  • 2006年10月03日
  • 熱心な関係者が多く参加した会場
    熱心な関係者が多く参加した会場
  • 熱心に講演するパット・ハリス博士
    熱心に講演するパット・ハリス博士
 2日、新ひだか町静内のホテルで馬栄養学界では世界的に著名な獣医学博士パット・ハリスさん(英国動物栄養学研究センター「ウォルサム」の馬栄養学グループ所属)の講演がありました。
 この講演は、「理想的な発育と発達をもたらす栄養」と題され(財)競馬国際交流協会の主催で行なわれたが、会場には世界の馬産や育成に関る栄養の考え方を学ぼうと約150名の生産者や獣医師、厩務スタッフなどが集まった。

 講演に先立ち、馬栄養学に精通しているコーディネーター役の朝井洋氏(JRA日高育成牧場副場長)が「現在、馬に関する学術的な世界で最も活躍しているひとり」と同博士を紹介。同博士のプロフィールには、数多くの役職と共に幼少の頃から馬に興味を持ち、ケンブリッジ大学時代には学生馬術競技会の英国代表を務め、自ら4頭の馬を飼養していると記されている。

 講演(もちろん同時通訳付)では、繁殖牝馬の妊娠期(特に胎児の成長が著しい後期3ヶ月)、仔馬の授乳期、成長期、離乳時などに分けビタミンやミネラルの適切な摂取量の考察や与えるサプリメントのバランスの重要性を解説。
 各栄養素の過不足と整形外科的疾患(DOD)の因子の関係などを丁寧に説明していたが、解説の中では「妊娠中の後期3ヶ月は、通常時より15%前後の体重増加が適切なので少ない時は注意が必要、ボディーコンディションスコア(BCS)のチェックが重要です。」と日常時の実際の管理にも触れていた。
 博士はさらに参加者の質問に答えて、「夜間放牧のトラブルや疑問は多いが、世界的にその評価は高いとされている実績があります。成長には放牧が一番良いので対処して進めてもらいたい」と運動量の大切さも強調していた。

 講演の内容は、ナショナル・リサーチ・カウンセル(米国)の推奨する数値をもとに比較説明される学術的な様相を呈しており、専門職の参加者はメモを取って聞き入っていたが、参加した生産者の一人は「そこまでしなければならないのかと刺激を受けましたよ。難しい内容だったけれど頑張らなくちゃ。でも、研究データだけでなく、馬と共に生活してきた先生の体験談をもっと聞きたいね。」と、時折話す博士の馬談義に興味を示していた。
 
                  2日 日高案内所