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追悼~アグネスタキオン~

  • 2009年08月17日
  • アグネスタキオン
    アグネスタキオン
  • 同

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 「あまりに突然のことで、言葉を失っております。種牡馬入り直後から、ダイワスカーレット、ディープスカイ、キャプテントゥーレなど活躍馬を輩出してくれました。種牡馬として、成熟期に入り、これからますます強い馬を作れるという確信を持っていただけに、残念でなりません。今はただ、冥福を祈るばかりです(社台スタリオンステーション代表・吉田照哉氏~JRA発表より)」


 あまりに平板で、そして感情を抑え込んだようなコメントが、逆にショックの深さをうかがわせる。アグネスタキオン11歳。現役チャンピオンサイアーの突然の死がサークルに与えた影響は計り知れない。

 現役時代の“三冠宣言”から突然の引退。それは“怪物”といわれた競走馬が、実は繊細なサラブレッドだったことを思い知らされた瞬間だった。しかし、志なかばとはいえ、十分すぎるほどの能力を見せつけた同馬は、種牡馬となってさらに輝きを増した。シンジケート総額はオグリキャップと同じ18億円。これは、内国産馬としてはナリタブライアンの20億7000万円に次ぐ2位タイの高額シンジケートだった。そして、待望の産駒デビュー。

 注目の初年度産駒は新種牡馬としての2歳勝馬数レコードを記録した。2年目には偉大なる父に代わって2歳チャンピオンサイアーになり、昨年は、ダイワスカーレットやティープスカイの活躍で、内国産馬として半世紀ぶりにサイアーランキングのトップになった。いつもアグネスタキオンは私たちに大きな喜びと、それ以上の驚きを与えてくれた。

 そして、あっという間に逝ってしまった。

 社台スタリオンステーションの、道路に近い放牧地。アグネスタキオンは、いつもそこにいた。広い放牧地なのだが、入り口付近が好きで、いつも自分で決めた場所を歩いていたような気がする。あの、栗毛の馬体はもういない。

 いま、改めて思うとアグネスタキオンは、いつも私たちの考える枠を飛び出して、1歩先を行っていたそうな気がする。現役時代も、種牡馬時代も、そして最後までも。

 しかし、アグネスタキオンの名前は、日本に馬産ある限り、血統表の中で永遠に生き続けるのだ。今は、不世出の名馬に謹んで哀悼の意を表したい。合掌。


◆写真は取材班が6月上旬に撮影したものです。
取材班