馬産地ニュース

11・12日セレクトセール開催。~生産者を追って

  • 2005年07月15日
  • 上場され競り上がる
    上場され競り上がる
  • 待機厩舎の左から松浦社長、福井さん、板井さん
    待機厩舎の左から松浦社長、福井さん、板井さん
  • 待機場所では報道陣の撮影も
    待機場所では報道陣の撮影も
  • いよいよ上場となる番
    いよいよ上場となる番
  • 新しい馬主さんたちと
    新しい馬主さんたちと
馬産地ニュース
11・12日セレクトセール開催。~生産者を追って

7月11日・12日の2日間、日本競走馬協会のセレクトセールが苫小牧市美沢のノーザンホースパークで開かれた。
初日から、雨模様にも関らず2000名を越す購買者や関係者で賑わい、関心の高さが伺われた。
2日間の上場頭数は302頭、売却総額は79億7,2000円(税別)、売却率80.1%と売り上げ記録をさらに伸ばした。
セリは注目の新種牡馬シンボリクリスエス産駒やダンスインザダーク、アグネスタキオン、ラストクロップとなるアドマイヤベガの産駒に人気が集まったが、最高落札は、半姉にGI馬ラインクラフトをもつマストビーラウドの2005(父シンボリクリスエス、ノーザンファーム産)で2億1千万円(税別)だった。

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[今回は、上場する一つの生産牧場の様子を追ってみました。]

新冠町の松浦牧場、昨年重賞勝ちしたマイネルモルゲン(ダービー卿CT・京成杯AH)の生産牧場だ。
この日の朝4時前に起き、準備して4時50分に牧場を出発。7時前に会場入りして、8時からの比較展示を終えて待機厩舎に戻った所だった。メンバーは社長の松浦快之さんとスタッフの福井さん、板井さんの3名、留守部隊は両親とスタッフ1名が行っていると言う。

上場馬は、No.223マジックペイントブラッシュの2005(当歳、牝馬、鹿毛、4月8日生)祖父にストームキャットを持つ良血馬だ。
松浦さんは「昨年、販売しやすい血統を選んで、受胎付きで輸入した繁殖牝馬の仔です。脚さばきが良く、スピードのありそうな良い馬だと思いますよ。牝馬だったのが残念ですけれど」と上場馬への自信はありそう。ただ、鹿毛馬だがまだ栗毛が体を覆い、苦労した手入れが納得出来ない事に不安を残す。市場では、馬っぷりと見栄えも大事な要素だ。

11時半、上場予定時間の約1時間半前から、馬房で上場馬の体全体を綺麗に拭き、蹄を磨き上げ最後の準備をする。このころ、二組の購買者の方が来て上場馬の様子を見ていく。販売者にとってこのときの対応は重要なことだ。
待機厩舎周りにもセリの状況が放送されており、応援に来た仲間の山内牧場さん、上井スタッドさんと静かな会話がやりとりされている。売却状況は良さそうだが輸入持込馬の売れ具合は悪く不安がよぎる。リザーブ価格(販売希望価格。このセリは販売者もセリに参加するため、主催者に報告するが公表されない。この日松浦さんは1,800万円で提出)に間違えが無かったか悩む。

12時15分、セリ会場で上場No.206番を呼び上げた時、係員の指示でいよいよ厩舎を出て会場外での待機場所に移る。セリ場が近いため、ここでは購買者や関係者の上場馬の見分が増える。パレードリンク(セリ場に出る前の公開展示場)に出るのも間近だ。「この仔落ち着いていますよ」とスタッフの福井さん。松浦さんも「ここまで来たら、なにも考えることはありませんよ」とサバサバとした表情を見せる。

12時50分パレードリンクへ。1周50メートルほどのリンクをスタッフの福井さん、板井さんの引き手で回る。多数の購買者、報道陣などの輪の内回りだが、ふたりがみんなの視線を感じるほど、手ごたえがある事になる。この片隅にいる松浦さんのところには、購買者の質問や、仲間の励ましが相次ぐ。
間もなく上場の順番となりセールリンク手前で待機、スタッフの引き役はここで終わりリンクの引き手に預ける。「もう、なんとか声を掛けて(購買者の落札合図)貰いたいという気持ちだけですね」と松浦さん。

13時15分上場、鑑定人の声とともに直ぐに“1,200万!”の声が上る。その後も値が上りリザーブ価格の1,800万円もオーバー、順調だ。3人の安堵の表情が眼に浮かぶ。最終落札価格は2,300万円。セールリンクから出てきた松浦さんに「おめでとう」と声をかけると「有難う御座います。良かった。二人ともご苦労さん」と再び愛馬をひくスタッフを労っている。3人とも実にさわやかな笑顔を交し合っている。

待機厩舎に戻ると、早速、落札者に挨拶に行っていた松浦さんが、その新しい馬主さんと調教師さんを連れて厩舎に来た。これからは本馬の晴れ舞台を待つことになるが、馬主さん、調教師さん、松浦さんとスタッフ、みんなが本馬を囲みにこやかに夢を膨らましている様子だった。