馬産地コラム

インカンテーションを訪ねて~イーストスタッド

  • 2026年08月05日
  • 供用8年目シーズンを終え、風格が身についてきた
    供用8年目シーズンを終え、風格が身についてきた
  • 16歳となったが張りのある好馬体をキープしている
    16歳となったが張りのある好馬体をキープしている
  • 見学者駐車場からほど近い距離にある放牧地
    見学者駐車場からほど近い距離にある放牧地
  • 食欲は旺盛で健康状態には不安はないという
    食欲は旺盛で健康状態には不安はないという
  • 産駒の活躍を心待ちにしている
    産駒の活躍を心待ちにしている
  • 初めてみる取材者をじっと観察する
    初めてみる取材者をじっと観察する

 過去の勝馬にはトランセンドやホッコータルマエ、ライオットガールにミッキーファイトなど、今や、出世レースとして確固たる地位を築き上げた「レパードS(G3)」。

 今回紹介するインカンテーションもまた、そんなレパードS(G3)の名を押し上げた1頭だ。

 のちに2023,2024年にはダート総合&NARチャンピオンサイアーとなるシニスターミニスターの初年度産駒として、日本を代表する谷川牧場で2010年3月24日に産声をあげた同馬は「生まれたときから馬体のバランスが良かった馬」だったという。夜間放牧によって逞しさを増し、本格的な育成をスタートさせる前から「力強さと柔軟性を持ち合わせた馬」へと変貌を遂げていったという。

 しかし、2歳7月に芝1,400m戦でデビューを果たしたものの、そのレースは15頭立て15番人気15着。文字通りにどん底からの出発だった。待望の初勝利は、約半年後の同年12月。芝1,200m戦から芝1,600m戦を経て、最後の望みを託したダート1,800m戦で結果を残すことが出来た。

 しかし、初勝利を記録したあとも、激しい気性が災いし、ときに大きく出遅れ、また大幅な馬体減などに出世を妨げられた。ようやく常識にかかってきたのはユニコーンS(G3)を除外されて挑んだ古馬混合戦。御嶽特別はスタート直後に躓いて直線だけの競馬となってしまったが、続く濃尾特別では好位追走から早めに先頭にたって後続を突き放した。

 そして迎えたレパードS(G3)。重賞初挑戦ながらも兵庫ジュニアGP(Jpn2)優勝馬で、ジャパンDダービー(Jpn1)3着ケイアイレオーネや連勝中のジェベルムーサらを抑えて1番人気の支持を受けたインカンテーションはじっと好位のインで息を潜めると、ギリギリまで追い出しを我慢して最後は逃げ粘ろうとするサトノプリンシパルを突き放して先頭ゴールインを果たしている。これが、父シニスターミニスターにとっての重賞初勝利にもなった。

 そして、この勝利をきっかけに、インカンテーションはダート一流馬への階段を駆け上がり重賞6勝(Jpn含む)。たくさんのタイトルとともに、2019年の春から生まれ故郷からほど近い場所にある浦河町のイーストスタッドで種牡馬生活を送っている。

 「競馬でもそうだったように、慣れるのは時間がかかるタイプ」と、同馬を紹介してくれたのは同スタッドの佐古田マネージャーだ。初めての環境や、初めての場所、そして初めて経験する事など〝初モノ〟にはあまり強くないらしい。そういえば、都市伝説の類いかもしれないが、父シニスターミニスター産駒全般にも、そういう傾向があることを聞いたことがある。

 それはともかく、初年度の血統登録数は26頭。決して恵まれていたとは言い難いが、その少ない初年度産駒のうちセイレジーナが岩手競馬の2歳重賞「寒菊賞」に勝ち、翌年はルーンファクターが「やまびこ賞」そして伝統の「不来方賞」を制覇。JRAでもインザストーンが2歳秋に勝ちあがるなど父をバックアップ。さらに2年目産駒のシトラルテミニが金沢競馬の2歳重賞「金沢シンデレラC」に勝ち、プラセボはホッカイドウ競馬の三冠最終戦「王冠賞」で最低人気をあざ笑うかのように北斗盃優勝馬ブラックバトラー、北海優駿優勝馬パッションクライを2着、3着に従えて堂々先頭ゴールイン。多くのファンをあっと言わせている。

 「初年度、2年目産駒が頑張ってくれたので、現2歳世代はキャリアハイとなる41頭の血統登録馬がいます。また1歳世代も、それに次ぐ31頭の血統登録馬に恵まれました。チャンスをいただいたので、その期待に応えて欲しい」とエールが送られている。