馬産地コラム

エイシンヒカリを訪ねて~レックススタッド

  • 2026年07月10日
  • 世界を驚かせた快足ランナーだった
    世界を驚かせた快足ランナーだった
  • シャープな馬体は年齢を感じさせない
    シャープな馬体は年齢を感じさせない
  • この日もごろんと砂浴びをするシーンを見る事ができた
    この日もごろんと砂浴びをするシーンを見る事ができた
  • すっかりと白くなった15歳の夏
    すっかりと白くなった15歳の夏
  • 食欲は若い時から変わらないという
    食欲は若い時から変わらないという
  • 放牧地を所せましと歩き回る
    放牧地を所せましと歩き回る
  • 張りのあるトモは健在
    張りのあるトモは健在

 本来ならば「世界最高の評価(2016年8月7日現在のロンジンワールドベストレースホースランキング第1位)を受けたディープインパクト産駒」と紹介すべきなのだろうが、強烈な逃げが印象に残る快足馬。それが、エイシンヒカリだ。現在は、2017年の種牡馬デビューからちょうど10年目の種付シーズンを終えて、英気を養っている。

 その現役時代はスピードを武器に活躍した。体質が弱く、デビューは3歳4月と遅れたが、芝1,800~2,000mの距離であっさりと5連勝。その5勝目は、今でも語り草のひとつになっている3歳秋のアイルランドT(東京競馬場・芝2,000m)。スタートから楽にハナを奪うとぐんぐん後続を引き離し、10馬身以上のリードを保ったまま4角を回ると、最後の直線では徐々に外へ張り出しながらゴールへと向かい、外ラチぎりぎりでゴールイン。当時を知る、現在のスタリオンスタッフも「一番印象に残っているレースはアイルランドTです」とポツリ。

 4歳秋まで10戦して8勝。その合計着差は20馬身以上にもなり、負けたのは重賞初挑戦となったチャレンジC(G3)と、G1初挑戦となった天皇賞(秋)(G1)のみ。そうした実績を引っ提げた挑んだ香港カップ(G1)を逃げ切り勝ち。この年のワールドベストレースホースランキングでは年度代表馬のモーリスや最優秀4歳以上牡馬のラブリーデイ、2冠馬ドゥラメンテらを抑えて堂々国内首位を獲得し、フランス遠征を行った翌年はイスパーン賞(G1)の圧勝が評価されて8月7日発表時点まで世界のトップレーティングを与えられている。

 2017年シーズンから新ひだか町のレックススタッドで種牡馬入り。初年度産駒から86頭の繁殖牝馬を集める人気種牡馬となり、産駒の出来が評判を呼んで供用3年目にはキャリアハイとなる94頭の牝馬がエイシンヒカリの血を求めた。

 産駒の初勝利は2020年5月27日。ホッカイドウ競馬のJRA認定競走だった。JRA初勝利は、その年の9月の2歳未勝利戦。エイシンヒカリと同じ栄進牧場で産声をあげたエイシンヒテンが父譲りのスピードを武器に芝1,200m戦を逃げ切り、続く白菊賞も逃げ切り、秋にはローズS(G2)2着。2年目産駒のエイシンスポッターが2024年キーンランドC(G3)で2着するなど短距離重賞戦で活躍。種牡馬としての前途は洋々かと思えたが、供用4シーズン目から種付頭数が減少し、その年の秋から心機一転を図るべく、現在は生まれ故郷に近いイーストスタッドへと移動して種牡馬生活を送っている。

 15歳。現役時代は、テレビの画面を通してみる限り〝芦毛〟と呼ぶには少々抵抗があった黒みがたっぷり残る馬体は、すっかりと白くなったが、軽快な脚さばきは年齢を感じさせない。与えられた広めの放牧地をそれでもところ狭しと歩き回っている。そして、ゴロン。砂浴びは大好きだそうで、1日に何度も繰り返して担当者を困らせている。

 「普段は扱い易い馬です。ただ、何か気に入らないことがあると競馬場で見せたような激しさを見せることがあります」とスタッフ。「種付けは上手で、受胎率も若い時と変わっていません。ここ数年は、種付頭数に恵まれていませんが、現役時代同様に、人知を超えるような、何かやってくれるのではないかと期待感を抱かせてくれる馬です」と事務局も期待する。

 「引退して10年経ちますが、いまだにファンの多い馬。そういった方たちのためにももうひと花咲かせてあげたい」と事務局、スタッフの願いはひとつだ。