レモンポップを訪ねて~ダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックス
チャンピオンズC(G1)は、2000年に創設された中央競馬のダート王決定戦。まだ歴史はそれほど深くないものの、外国産馬クロフネの衝撃的なレコードタイムや、奇跡の復活劇と言われた2008年のカネヒキリ。近年では、世代交代を強く印象付けたルヴァンスレーヴやクリソベリルの力強い走りや、テーオーケインズの圧勝劇。そして、若きチャレンジャーを力でねじ伏せたジュンライトボルトなど、舞台を東京競馬場の2,100m、阪神競馬場の1,800m、そして中京競馬場の1,800mと変えながらも、これまでも多くの名勝負、名シーンを生み出してきた。
そして、節目の25回目となった昨年のチャンピオンズC(G1)は連覇を狙うレモンポップと、前年は2着ながらもJBCクラシック(Jpn1)を圧勝して意気上がるウィルソンテソーロという2頭のチャンピオンホースによる頂上決定戦。その意地とプライドをかけた大一番に勝利したのがレモンポップだった。この馬は500kgを超える雄大な馬格から繰り出されるパワーとスピードを武器に、ここまで国内に限れば5つのG1/Jpn1勝利を含み15戦して12勝2着3回。レース終了後には引退式も予定されており、文字通りに絶対に負けられない戦いというプレッシャーの中での勝利は、真の絶対王者を強く印象付けるものとなった。
あれから1年。現在レモンポップは北海道日高町のダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスで種牡馬として2年目シーズンを迎えようとしている。現役時代から迫力満点の馬体は一段と逞しさを増したが、動きに重苦しいところはなく放牧地を闊歩している。
「やはり引退レースとなった最後のチャンピオンズC(G1)が最も印象に残っています」というのはダーレー・ジャパン(株)の加治屋正太郎ノミネーションマネージャーだ。「正直言えば、前年と比較しても決して100%の状態ではなかったと聞いています。それでも勝ってくれた。最後まで王者でいてくれたことを誇りに思います」と愛馬を称え「種牡馬としても、慣れない中で忙しいシーズンを無事に乗り切ってくれました。キャリアを積んだ種牡馬でもシーズンで200頭を超える繁殖牝馬をこなすのは簡単な事ではないのですが、種付けを行うたびに上手になっていきました。普段はどっしりと落ち着いているのに、しっかりと仕事をこなしてくれる。普段、手入れをする際も人間の手を煩わせる事はなく、ひと言でいえば学習能力の高い馬、頭の良い馬だという事を再認識させられました」とシーズン1年目を振り返った。現在、与えられた広い放牧地の隣には8シーズン目を迎えようというタリスマニックと逆輸入種牡馬のヨシダ。互いを必要以上に意識しあうことなく、落ち着いた精神状態の中で来るべきシーズンに向けて鋭気を養っている。
「最大の魅力はバランスの良い馬体から発せられる名馬独特のオーラだと思いますが、血統的にも祖母のハーピアはディンヒルの全妹で自身も米国の重賞を勝った活躍牝馬です。筋肉質タイプで、低重心の馬体はディンヒル、そして4代母スプリングアデューの半兄ノーザンダンサーに通じるものがあると思っています」と歴史上の名種牡馬を引き合いに出しながら「サンデーサイレンスの血を持っていないのも魅力のひとつだと思います。たくさんの方がこの馬を信じてくださったように、私も(種牡馬として)結果を出してくれるものと確信しています」と、まだ見ぬ初年度産駒に大きな夢を描いている。















