ファインモーションを訪ねて~伏木田牧場
今年、節目となる50回目を迎えるエリザベス女王杯(G1)。現役最強牝馬決定戦と言われるこのレースを不敗のまま制したのは、今回紹介するファインモーションだけです。この勝利は、同時にエリザベス女王杯(G1)が古馬混合戦となった1996年以降で初めて3歳が勝利したレースとして記録されました。また、ファインモーションの名前は史上初めて不敗のまま古馬混合G1競走を制した3歳馬として競馬史に刻まれました。
その偉大なる記録が打ち立てられたのは2002年11月10日。このレースは13頭立てと史上2番目に少ない頭数となりましたが、3歳世代のオークス(G1)1~3着(スマイルトゥモロー、チャペルコンサート、ユウキャラット)と4歳世代のオークス(G1)1、2着(レディパステル、ローズバド)、5歳世代のオークス馬シルクプリマドンナに加えて、2001年の最優秀2歳牝馬タムロチェリーほか、重賞4勝の実力牝馬ダイヤモンドビコーと秋華賞(G1)3着の実績を持ち、前走の新潟記念(G3)を勝って意気上がるトーワトレジャーなどが顔を揃えた豪華メンバー。それでも、1番人気ファインモーションの最終的な単勝オッズは1.2倍。この時に記録された65.10%の単勝支持率は、エリザベス女王杯(G1)における最高支持率として、令和6年終了時点で破られていないものです。
あれから、四半世紀の時が流れようとしています。26歳になったファインモーションは、浦河町の伏木田牧場で余生を送っています。
「年齢を感じさせないという言葉がありますけど、馬は本当に以前と変わらないです。元気です」と伏木田牧場の伏木田修代表が紹介してくれました。今は同い年のウォーターエナン(26歳、ウォータールルドの母)と、ウォーターリヒトの母であるウォーターピオニー(12歳、父ヴィクトワールピサ)、そして現役生活を引退したばかりのウォータールグラン(6歳、父ダイワメジャー)と同じ放牧地で過ごす日々です。
「以前はわがままというか、気の強い一面もあったのですが、年齢を重ねてからは他の馬に対して威張ることも無くなりましたし、逆にいじめられる事もない。ファインモーションのペースで、牧場の良い先輩として過ごしています」と温かく見守られています。そして「何年か前に腰を痛めた事があったのと、今年に入ってから少し歩様が乱れた事があったくらいで、元気いっぱい。今は、健康面での不安はありません」と現況について教えてくれました。
10月中旬現在は朝の9時くらいから翌朝の5時くらいまでの20時間放牧。「これから日高地方も本格的な冬を迎えますので、気温を見ながら放牧時間は短くする予定」との事ですが、今も昔と変わらず、毎月の削蹄を月課として、気の合う仲間たちに囲まれながらもマイペースで暮らしているそうです。
「特別扱いこそしていませんが、牧場にとっては大切な功労馬です。暑い夏も、寒い冬も体調を大きく崩すことなく与えた食事はきっちりと食べてくれます。体力が十分にある事に加え、自分が置かれている状況を理解しているからだと思います」と、その賢さにも感心しきり。そして「本当のところは馬に聞いて見ないと分かりませんが、ストレスのない環境下で過ごしているはずです。もし、不満があるなら教えて欲しい」と笑わせてくれました。
やがて、年が明ければ、ファインモーションにとって伏木田牧場で迎える21回目の春となります。ここ伏木田牧場は、生産牧場のため防疫上の観点から見学は受け付けておりませんが「馬は元気にしていますので、ファンの方は安心してください」というメッセージをお預かりしました。















