馬産地コラム

タワーオブロンドンを訪ねて~ダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックス

  • 2025年11月05日
  • 筋肉質でパワフルな馬体を受け継ぐ産駒が多いという
    筋肉質でパワフルな馬体を受け継ぐ産駒が多いという
  • 精悍な顔つきに内に秘めた激しさがうかがえる
    精悍な顔つきに内に秘めた激しさがうかがえる
  • 今年はキャリアハイとなる188頭の繁殖牝馬に配合を行った
    今年はキャリアハイとなる188頭の繁殖牝馬に配合を行った
  • 性格は穏やかでのんびり屋さんだという
    性格は穏やかでのんびり屋さんだという
  • 次世代のスプリント界を引っ張る存在として期待されている
    次世代のスプリント界を引っ張る存在として期待されている

 2歳王者決定戦「朝日杯フューチュリティS(G1)」への前哨戦に位置付けられている京王杯2歳S(G2)は、1980年に現行条件へと変更されて以来、ほぼ変わらぬ条件下で行われている伝統あるG2競走です。

 2017年の本レースにおいて、函館2歳S(G3)の勝者カシアス、小倉2歳S(G3)を勝ち上がってきたアサクサゲンキ、そして新潟のダリア賞を不敗のまま制したタイセイプライドらを相手にメンバー最速の末脚で完璧な勝利を収めたのが今回紹介するタワーオブロンドンです。この勝利をきっかけにスター街道を歩む事となったタワーオブロンドンは、3歳春のアーリントンC(G3)で同世代のライバルたちをねじ伏せ、古馬になってからは京王杯スプリングC(G2)をレースレコードで完勝。その後、スプリント路線へと舵を切ると、セントウルS(G2)をレコード勝ち。サマースプリントシリーズ王者となった勢いそのままに、スプリンターズS(G1)を制して短距離王へと上り詰めます。

 通算成績は18戦7勝2着3回3着3回(海外1戦含む)。5つの重賞タイトルを手土産に2021年から日高町のダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスで種牡馬入りすると、初年度から多くの繁殖牝馬を集め、そうした中から産声をあげたパンジャタワーは2024年の京王杯2歳S(G2)に勝利。この勝利は、同レース史上2頭目となる父子制覇になると同時に、2024年のフレッシュマンサイアーとして初のJRA重賞制覇にもなりました。その後、パンジャタワーは父が1番人気で涙を飲んだNHKマイルC(G1)にも勝ち、キーンランドC(G3)では古馬を一蹴。父の名を高めました。また、レイピア、アーリントンロウがJRA短距離重賞で活躍しているほか、地方競馬においてもサンカリプソが岩手競馬の重賞サファイア賞 (芝1,700m)に勝つなど産駒は父譲りのスピードそのままに、距離に融通性を持たせる産駒が多いようです。子供たちのそうした活躍で、2025年の春はキャリアハイとなる188頭の繁殖牝馬に配合。人気種牡馬としての地位を築き上げています。

 ダーレー・ジャパン(株)の加治屋正太郎ノミネーションマネージャーは「タワーオブロンドンの産駒は総じて言えば筋肉質でパワフル。初年度産駒を確認したときから自身の特性を色濃く産駒に伝えてくれる種牡馬だと考えており、結果を出せないはずはないと思っていましたが、イメージ通りの活躍をしてくれて嬉しい。ほっとしています」と好調な滑り出しを見せた種牡馬タワーオブロンドンを、そう評してくれました。

 現在はダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスの入り口付近にある放牧地できたるべき種付シーズンに向けて鋭気を養う日々です。「オンとオフをしっかりと切り替えられる馬ですが、現在は普段から非常に温厚で、スプリンターとは思えないくらいのんびり屋さんです。手入れの時などもスタッフの手を煩わせることはありません。それは、種付 時も同様で常に自分のペースで淡々とこなし、バテることなく忙しいシーズンを乗り切ってくれました」と信頼を寄せ「これまで血統的にも、そして体型的にもサンデーサイレンス系牝馬との相性は良いはずだという私たちの考えを生産者の方々に伝えてきましたが、それは間違っていなかったようです」とにっこり。「年が明けて11歳。年齢的にも、種牡馬として充実してくるのはこれからだと思っていますし、幸いなことに過去5年間すべて100頭以上の繁殖牝馬に配合していただいている事から、2世代目以降の産駒も、安定した成績を残してくれるものと考えています」と、さらなる活躍を期待しています。