ジャックドールを訪ねて~レックススタッド
2023年の大阪杯を1分57秒4のレースレコードで制したジャックドールは25年2月に古傷ともいえる右前浅屈腱炎を再発。19日に競走馬を抹消され、現在は新ひだか町のレックススタッドで種牡馬生活を送っている。
「休養していた牧場から、レックススタッドに移動してきたのは2月25日でした。すでに種牡馬展示会も終え、種付シーズンに入っていましたので、2025年シーズンから種牡馬生活をスタートさせると聞いたときは責任感で身が引き締まると同時に、驚きの気持ちを隠せなかったというのが正直な思いでした」と当時を振り返ってくれたのはレックススタッドの鮫川場長だ。本馬の父モーリスとは浅からぬ縁があるようで「自分が直接担当していたわけではないのですが、モーリスが北海道市場サマーセールに上場される前、当時自分が勤務していた牧場でお預かりしていたことがあります。モーリスだけではなく、半姉シゲルアンズや半兄サイドスティック、半妹リャクダツアイなども当時の牧場でせり馴致をしていましたし、その父スクリーンヒーローはレックススタッドで長く種牡馬生活を送っていましたので、思い入れのある血統なのです」と自身にまつわるエピソードを話してくれた。
そんなジャックドールは、北海道市場セレクションセールにおいて高額第7位タイとなる34,560,000円(税込)で取引されたグッドルッキングホース。当時から見栄えがする四白流星の華やかな馬体は500kgを超えるまでに成長し、その現役時代は力強い逃げ、先行力を武器に17戦して8勝2着2回。5歳春の大阪杯(G1)では武豊騎手を背に半マイル47秒5で通過すると、残り1200m地点から5ハロン連続で11秒台のラップを刻んで逃げ切っている。さすが最後はゴール前の急坂で脚色がやや鈍ったものの、スターズオンアース、ダノンザキッドの追撃をハナ+クビ差封じ込めた。ちなみにこの勝利は手綱を取った武豊騎手にとっては54歳0か月19日でのJRAG1勝利となり、それまで岡部幸雄元騎手が持っていた53歳11か月27日という最年長G1勝利の記録を更新する結果となった。
現在は朝6時から午後2時前までが放牧時間。同期タイトルホルダー、同期で同じモーリス産駒のルペルカーリアと隣り合った場所が与えられている。「とくに周囲を気にしている様子はありませんが、人間の事は好きみたいで声をかけると寄ってきます」とのこと。この撮影中も見知らぬカメラマンを見ると寄ってきて〝ごあいさつ〟それが済むと、しばし放牧地を歩き回って、草を噛み始めた。「基本的には扱いやすい馬だと思います。種付けもすぐに覚えてくれましたし、普段から人間の手を煩わせることもあまりありません。ただ、種付けに慣れてきた後半は激しさを表面化させる時もあったそうで「仕事とプライベートを使い分けるタイプかもしれません」と紹介してくれた。
「準備期間が全くなかった今年は体調を見ながらの種付けだった」そうで、種付頭数は79頭。「生産者からの評価も高く、来年は100頭を超えるのではないか」と期待している。
実際、見学時間に足を運んだ方はご存知だと思うが、馬房はレックススタッド屈指の人気種牡馬タイトルホルダーと向かい合わせ。そのため、見学時間はこのエリアから人が絶えることはないそうだ。「とても綺麗な馬でファンの方からの人気も凄いですが、天性のスピードと馬格に恵まれた馬。きっと種牡馬としても成功してくれると思う」と期待されている。
「グラスワンダーから4世代連続G1勝利を重ねてきた血統ですから、この記録がいつまでも伸びるように応援していただきたいと思います。この馬そっくりな派手で、見栄えがするような馬も生まれて来て欲しいですね」と期待に胸を膨らませている。