馬産地コラム

ケイティブレイブを訪ねて~ヴェルサイユリゾートファーム

  • 2025年02月27日
  • ダートグレード競走を10勝した闘争心は健在
    ダートグレード競走を10勝した闘争心は健在
  • その様は〝孤高の王〟
    その様は〝孤高の王〟
  • 完成したばかりの新しい厩舎
    完成したばかりの新しい厩舎
  • 軽快な脚さばきを見せてくれた
    軽快な脚さばきを見せてくれた
  • 馬房の中から取材者の様子を伺う
    馬房の中から取材者の様子を伺う

 〝孤高の馬〟

 それが、これまで何度も取材させてもらっているケイティブレイブに対するイメージだ。放牧地でも、ほかの馬とは一線を画すようにポツンという事が多く、マイペース。それは競走馬としてデビューする前の牧場時代からそうだったという。

 芝の新馬戦こそ見せ場を作れなかったが、ダート変わりの初戦で逃げて2着。そこから中1週の競馬で初勝利を記録すると、先行力を武器に2勝目をあげ、5月の兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)で重賞初挑戦、初勝利。このとき、7馬身差の2着だったのがのちにJRA賞最優秀ダートホースに輝いたゴールドドリームだった。

 結果的に9歳春のフェブラリーS(G1)を最後に引退するまで3つのJpn1競走含めダートグレード競走10勝。歴史に名を残すような活躍をしたのち2023年から新冠町の優駿スタリオンステーションで種牡馬生活をスタートさせ、2年間で延べ45頭の繁殖牝馬に配合。2024年の暮れに日高町のYogiboヴェルサイユリゾートファーム分場(ヴェルサイユリゾートファーム別邸ビラ・ウトゥル)に移動した。

 「去勢はしていません。ケイティブレイブの種牡馬登録は継続させたままです」と同ファームの岩崎崇文代表が忙しい合間を縫うようにして案内してくれた。

 本場が手狭になったことから、車で10分少々の距離に分場を開設。ここにはNAR年度代表馬のキタサンミカヅキや種牡馬を引退したばかりのグランプリボスなどが移動している。 すでに馬たちが過ごす厩舎と放牧地は完成したものの、駐車場含めてその他の部分は工事中のため、現在、見学は中止しているというが「カフェスペースを備えたインドアパドックを作りたい」と構想している。

 「ケイティブレイブは、まだ12歳と若い馬ですし、内臓も脚元もまったく問題はありません。元気と言えば元気で、元気すぎるくらいです」と岩崎崇文代表。ただ、性格的には頑固な一面があるようで「嫌なものは嫌」とはっきりと自己主張をするタイプだというが、それもまた群れのリーダーたる種牡馬らしいと言えば、らしい。

 苦手なものは「洗い場」だそうだ。そういえば、現役時代もゲートでは名だたる名ジョッキーたちを悩ませていた。今は、若いスタッフが苦労している。

 この日は、撮影用にまだ新しい皮の頭絡と馬服を身に着けて放牧。すでにいつもの違う雰囲気を感じ取ったのか、馬房の中でも「やる気モード」のスイッチが入っているかのようだ。スタッフが懸命になだめながら放牧地へと向かうが、その歩様が力強く速い。

 「いつも、なかなか言う事を聞いてくれないのですが、今日は最初からスイッチが入ってしまっているようです」と苦笑い。

 放牧地で手綱を解かれると、軽快な脚取りで放牧地を2周、そして3周。やがて、もっとも小高い丘の上からこちらを見下すようにたたずむ。その様子は〝王〟そのものだ。逃げ、差し自在の脚質で活躍した、その血を受け継ぐ産駒が競馬場で大暴れする日を楽しみにしたい。