馬産地コラム

ナカヤマフェスタを訪ねて~うらかわ優駿ビレッジAERU

  • 2024年11月14日
  • 凱旋門賞(G1)での健闘は歴史に刻まれている
    凱旋門賞(G1)での健闘は歴史に刻まれている
  • 数々の激戦が、その表情に刻まれている
    数々の激戦が、その表情に刻まれている
  • 健康状態には何ら不安はないという
    健康状態には何ら不安はないという
  • 放牧地ではひたする草を噛む
    放牧地ではひたする草を噛む
  • 18歳でも立ちポーズをしっかりと決めてくれたナカヤマフェスタ
    18歳でも立ちポーズをしっかりと決めてくれたナカヤマフェスタ
  • 宝塚記念(G1)とセントライト記念(Jpn2)を勝ったラッキーナンバーは17
    宝塚記念(G1)とセントライト記念(Jpn2)を勝ったラッキーナンバーは17

 過去10年間の優勝馬だけでもワグネリアン、コントレイル、ダノンザキッド、イクイノックスなどを送っているのが「東京スポーツ杯2歳S(G2)」。もう少しさかのぼればイスラボニータ、ディープブリランテ、サダムパテック、ローズキングダム、フサイチリシャールといったのちのG1優勝馬が名を連ねる、超が付くような出世レースだ。

 2008年の第13回東京スポーツ杯2歳S(Jpn3)で、当時まったくの人気薄(14頭立て9番人気)ながらも最後の直線で早めに先頭に立ち、外から迫る1番人気馬ブレイクランアウト、内から追い込む4番人気サンカルロの追撃を抑えて先頭ゴールインを果たしたのは、蛯名正義騎手が手綱を取っていたナカヤマフェスタだった。この勝利で新馬、重賞を連勝するという離れ業をやってのけた同馬は4歳春に本格化。メトロポリタンSをトップハンデで勝利すると、その勢いそのままに宝塚記念(G1)でブエナビスタ、アーネストリーなどを一蹴。そして同年秋にはヴィクトワールピサとともに海外遠征を行い、凱旋門賞(G1)で英国ダービー馬ワークフォースを頭差まで追い詰めた。日本産馬が凱旋門賞(G1)で2着となったのは、この時が初めての事だ。

 現役引退後は2012年から日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬入り。2018年に一度は種牡馬生活から引退したものの、産駒の活躍により2019年から新ひだか町のアロースタッドで種牡馬生活を再開させた。

 そんなナカヤマフェスタが引退功労馬として、浦河町の「うらかわ優駿ビレッジAERU」に移動してきたのは2023年秋。環境の変化にもすぐに順応し、今では落ち着いた日々を過ごしている。

 「とにかく食欲が旺盛な馬で、放牧中はずっと下を向いている印象があります」と紹介してくれたのは太田篤志マネージャー。だからというわけではないだろうが、ナカヤマフェスタをイメージして作られた限定のコラボ菓子「うまんじゅう」も店頭に並ぶや、すぐに売り切れてしまうほどの人気メニューとなった。

 以前はマイネルキッツと同じ放牧地に放されていたが、現在は専用の放牧地を与えられて満足そうに草を噛んでいる。そんな何気ない一コマからも穏やかな空気が流れてくる。「決して(マイネルキッツと)仲が悪くなったというわけではなく、ナカヤマフェスタは種牡馬時代から落ち着く放牧地と、落ち着かない放牧地があるようなのです。以前の放牧地ではよく歩きまわっていましたが、場所を変えたらのんびりと過ごすようになりました」と太田さん。放牧地にいる馬が今何を考え、そして何を求めているのかをしっかりと観察しているからこそできる管理方法だ。

 お気に入りの場所で、好きな草を好きなだけ頬張る。そんなナカヤマフェスタには年間を通して多くのファンが足を運んでくれるそうだが、とくに秋シーズンは凱旋門賞(G1)の話題とともにメディアへの露出も増え、そして訪れる人も増えたという。「(凱旋門賞(G1)の話題になると)すごい事をした馬なのだなぁと改めて思うことはありますし、中には激しかった競走馬時代、種牡馬時代のイメージと、現在のナカヤマフェスタのギャップも楽しんでいただいている方もいらっしゃるようです。どちらも本当のナカヤマフェスタなので、色々と楽しんで欲しいです」と満足そう。

 「新千歳空港から車で2時間半。地理的には決して交通の便が良いとは言えない場所ですが、それでもたくさんの方が会いに来てくれるのは嬉しいです。そういう方々のためにも心身ともに元気なナカヤマフェスタを見ていただきたい」とはスタッフ全員の思いだ。

 そんな「うらかわ優駿ビレッジAERU」スタッフの方々の思いが通じたわけではないだろうが、現役時代に苦楽をともにした二ノ宮調教師、担当厩務員の方も会いに来てくれたそうだ。「タイミングが悪く、その日私自身はお会いすることはできなかったのですが、元気な姿を見てもらえたと思います」とちょっぴり残念そうに話してくれた。

 「年が明ければ19歳となりますが、まだまだ元気。元気なうちに会いに来て欲しいという気持ちは当然ですが、日常の様子などはSNSなどでも発信していますので、たくさんの方にナカヤマフェスタを知って欲しいし、応援して欲しいです」というのも、ここで働くスタッフ全員の思いだ。