馬産地コラム

ビービーガルダンを訪ねて~ヴェルサイユリゾートファーム

  • 2024年08月26日
  • 20歳の夏を迎えている
    20歳の夏を迎えている
  • やんちゃなしぐさもビービーガルダンらしい
    やんちゃなしぐさもビービーガルダンらしい
  • 厩舎の窓から顔をのぞかせる
    厩舎の窓から顔をのぞかせる
  • 編み込まれたタテガミがかわいらしい
    編み込まれたタテガミがかわいらしい
  • 広い放牧地を与えられてのんびりと過ごしている
    広い放牧地を与えられてのんびりと過ごしている
  • 乗用馬としての評価も高く訪れるファンを喜ばせている
    乗用馬としての評価も高く訪れるファンを喜ばせている

 夏が来れば思い出すのは〝洋芝の鬼〟と言われたビービーガルダン。結果的には、競馬場での〝ラストラン〟となってしまったスプリンターズS(G1)でのゲートイン直後の放馬、そして気持ちよさそうに中山競馬場の内回りコースを3周する姿があまりにも印象的だったために、今もそのイメージが色濃く残るのが少し残念だが、優れたスピードと闘争心を持ち合わせたA級競走馬だった。

 ビービーガルダンは2004年、父チーフベアハート、ニュージーランド産の母オールザチャットとの間に、平取町の坂東牧場で産声を上げている。

 当時の印象を同牧場の荒木一仁ゼネラルマネージャーは「この世代は20頭に満たない生産頭数でしたが、その中では特別に目立つ1頭ではなかったです。ただし、乗り運動をスタートさせた頃から頭角を現し、送り出す頃には牧場でも期待の1頭になっていました」と当時のことを話している。

 実はビービーガルダンがデビューする前、同牧場と親交があった岡部幸雄さんが坂東牧場の調教コースで同馬に騎乗した際に「とても乗り味が良い馬。大切にした方が良い」と、この馬の素質を高く評価したというエピソードも残っているという。

 待望のデビューは2歳7月の函館競馬場芝1,200m戦。持ち前のスピードを武器に、その初戦であっさりと逃げ切り勝ちを決めると続く、クローバー賞は序盤から激しくレースを引っ張り、2歳レコードタイムの更新を影で演出した。

 その後、約1年にも及ぶ長期離脱も経験しているが、復帰。4歳春シーズンは3連勝を記録してオープン入りを果たしている。

 待望の重賞初制覇は5歳春の阪急杯(G3)。この年JRA最優秀短距離馬に選出されるローレルゲレイロを寄せ付けず逃げ切り勝ち。同年のキーンランドC(G3)で重賞2勝目を記録すると、スプリンターズS(G1)は長い長い写真判定の末にハナ差2着。それでも、押しも押されぬトップスプリンターの地位を確立させている。

 全7勝中6勝を芝1,200mで記録しているが、特筆すべきは内5勝を札幌、函館の洋芝コースで記録していること。札幌競馬場では8戦して3勝2着3回。函館競馬場では5戦して2勝2着2回。「洋芝の鬼」と表現される所以でもある。

 現役引退後は新ひだか町のアロースタッドで種牡馬入り。現役時代の最高馬体重512kgという雄大な馬格とスピード能力に期待する声も高く供用初年度には生まれ故郷の板東牧場の繁殖牝馬を中心に45頭の繁殖牝馬を集めている。

 産駒初出走は2015年6月2日の門別競馬場。この時は2着だったが、同年8月4日にビービーアーガスによって初勝利を記録している。結果8年間の種牡馬生活で65頭の血統登録馬を残し、通算171勝。JRAでの勝利記録はビービーバーレスクが記録した1勝のみだったが、その1勝が新馬戦というのもビービーガルダンらしい。

 あのスプリンターズS(G1)から、もう間もなく13回目の秋。現在は日高町のヴェルサイユリゾートファームで乗用馬として元気に過ごしている。

 同牧場で最も大きな放牧地を与えられ、同牧場仲間たちと過ごす日々。

 「夏シーズンは朝7時から翌朝5時までの22時間放牧です。20歳になりましたが、馬は健康そのものです」と岩崎代表。

 今は、牧場を訪れるファンを背に、引き馬体験などの相手を務めている、「今でもファンの多い馬で、この馬を目当てに訪れる方もたくさんいらっしゃいます。とてもおとなしく、人懐っこい馬。スプリンターズS(G1)の放馬を知っている方にも、知らない方にも人気があります」という。

 以前は「ビービーガルダンに乗りたい」というリクエストにも応じていたそうだが「扱いやすいので、リピーターも多い馬。今は馬に無理をさせないためにもご遠慮いただいています」とのこと。決して調子が悪いわけではないそうなので「ご安心ください」というメッセージをお預かりした。