2014年のドバイデューティフリー(G1)(現:ドバイターフ(G1))をレコード勝ちし、IFHA(国際競馬統括機関連盟）が発表する同年度のワールド・ベスト・レースホース・ランキングで、日本調教馬として史上初めて同ランキング単独1位となったのがジャスタウェイだ。

 社台コーポレーション白老ファームの生産馬で2010年セレクトセール1歳セッション取引馬。新馬戦に勝利し3歳春にはアーリントンカップ(G3)に勝利したものの、異世代との戦いでは善戦こそするもののなかなか勝ちきれず、悔しい思いを重ねたが4歳秋の天皇賞(秋)(G1)で、前年の年度代表馬ジェンティルドンナを4馬身後方に置き去りにして覚醒。翌年は中山記念(G2)を足掛かりに世界の頂点へと駆け上がった。

 その勝利によって、暫定とはいえランキング1位となったジャスタウェイが、帰国初戦に選んだのが安田記念(G1)だった。決して万全の体調ではなかったというが、世界一のプライドが追いすがるグランプリボスをハナ差退けた。

 あの勝利から、ちょうど10回目の春。

 ジャスタウェイは現在、日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬生活を送っている。

 初年度産駒のマスターフェンサーがケンタッキーダービー(G1)で善戦して話題となり、同じく初年度登録のテオレーマが2021年のJBCレディスクラシック(Jpn1)に優勝。また、3世代産駒のダノンザキッドが2歳チャンピオンにもなって順調な種牡馬生活を送っている。

 「サラブレッドとしてはまだ若い馬ですが、種牡馬として長いキャリアを積み上げていますから、良い意味で変わりはありません。ベテランらしく、ちょっと人間を試すような頭の良さを持っていますが、人に媚びる事もしないし、ほかの馬を意に介さない落ち着きがあって、穏やかです。ただ、しっかりと仕事だけはしてくれるタイプ」と紹介してくれたのは同スタリオンステーションの坂本教文場長だ。何かの縁なのか、ちょうどジャスタウェイが覚醒した天皇賞(秋)(G1)を現地で観戦していたという。

 「その時は、自分たちが扱うとは思ってもみませんでしたので、ただただ、すごい馬だなぁと。それはテレビで見たドバイデューティフリー(G1)も同じです」とはにかんだ様に話してくれた。

 そんなジャスタウェイは皐月賞馬アンライバルドと、最優秀4歳以上牡馬ラブリーデイに挟まれた放牧地でゆったりとした時間を過ごしている。

 「これだけの名馬を扱わせてもらえるとは嬉しい限り。良い経験をさせてもらっています」と気を引き締めている、

 「今年は、ジャスタウェイが当スタリオンに移動してきて、最初に種付けした世代がデビュー年度を迎えます。やっぱり、自分たちが手掛けた馬というのは思い入れが違いますし、応援するにも気持ちが入ります」と笑顔を見せる。

 その中にはダノンザキッドの母エピックラヴもいたそうで、2022年に無事に全妹を出産。順調にデビューを目指しているという。

 「活躍馬の弟妹だからというわけではなく、すべての馬に期待している生産者、馬主、厩舎関係者の方々がいますので、とにかく無事にデビューして欲しいです」と馬産地からエールを送っている。