馬産地コラム

フィエールマンを訪ねて~ブリーダーズ・スタリオン・ステーション

  • 2024年05月01日
  • 初年度の血統登録数は72頭
    初年度の血統登録数は72頭
  • 「走り出したら止まらない」というが、この日は穏やかに過ごしていた
    「走り出したら止まらない」というが、この日は穏やかに過ごしていた
  • 4年目のシーズンも例年通りの人気ぶりだという
    4年目のシーズンも例年通りの人気ぶりだという
  • 自分自身のカテゴリーをしっかり持っている
    自分自身のカテゴリーをしっかり持っている
  • 朝焼けの放牧地にて
    朝焼けの放牧地にて

 史上最短となるデビュー4戦目での菊花賞(G1)制覇、そして史上5頭目となる天皇賞(春)(G1)連覇を成し遂げたフィエールマンは現在、日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで供用4年目のシーズンを迎えている。初年度から100頭を超える繁殖牝馬を集め、そして2年目以降も大きく数字を落とすことなく種付業務を行っているという。

 「菊花賞(G1)に勝って、天皇賞(春)(G1)2連覇の馬ですから、ステイヤーのイメージが強いと思いますが、自分の中で印象に残っているのはアーモンドアイを追い詰めた天皇賞(秋)(G1)です。あのレースを見て、それまでのフィエールマンのイメージがすっかり覆りました。ですから、有馬記念(G1)が終わって引退が発表され、当スタリオンステーションに迎え入れることが決まった時は、すごい馬が来てくれるのだなと、本当に嬉しかったです」とまるで昨日の事のように言葉を弾ませたのは坂本場長だ。

 そうして、まるで三顧の礼を尽くすかのように迎え入れたフィエールマンは、坂本場長が持っていた「優等生」のイメージをも覆すものでもあった。「レースに行けば一生懸命に走りすぎるために疲労回復に時間がかかるというような記事を読んだことがありますし、競馬に行けば凱旋門賞(G1)以外は堅実な成績を残した馬。私自身が勝手に優等生的イメージを持っていたのですが、実際のフィエールマンは少々破天荒な部分を持った馬でした。馬房の中ではそうでもないのですが、放牧地で突然走り出したかと思ったら、全然止まらず延々と走り続けます。そんなときは、やっぱりすごいスタミナだと思いますが、どのタイミングで、何を気にして走り出すのか今でもわかりません。でも、そんなギャップも扱っていて面白いです」と苦笑い。

 放牧地は、スタリオンステーションのほぼ中央。隣には「1番おとなしいのではないか」とカメラマン氏が言うフォーウィールドライブがいて、23歳となったブラックタイドがいる。「隣のサトノダイヤモンドが動き出すと、負けん気を出すように走り回るのですが、この日は拍子抜けするくらいに大人しかったです」とやや残念そう。ただし、いろいろな事に興味津々らしくすぐに頭を上げてくれるので撮影は楽だったという。

 そんなフィエールマンの二世たちの情報も坂本場長のもとへと入ってくる。「以前は、牧場に足を運んで見せてもらっていたのですが、コロナ以降は出にくくなってしまいました。でも、生まれたばかりの仔馬と一緒に母親が種付けに来るときもあります。フィエールマンの仔は、総じて動きが軽いという印象です」と頼もしそう。

 この馬がスタッドインを果たした年の種牡馬展示会には、現役時代に苦楽をともにした手塚貴久調教師も姿を見せ「フィエールマン含め、この馬のきょうだいは全部新馬勝ちをしています」というエピソードを紹介しながら、種牡馬としての可能性について言及した。その隠れた?大記録は5頭連続で途切れてしまっているけれども、記録を途絶えさせてしまった馬も2戦目にはしっかりと勝ち上がって高い競走能力と優れた競走センスを示している。

 「産駒たちがどんな競馬をしてくれるか楽しみしかありませんが、聞いた話では6月にデビューするような馬もいるそう。そんなところでも、よい意味で現役時代のイメージを裏切ってくれると嬉しいですね」と期待に胸を膨らませている。