ナランフレグを訪ねて~ヴェルサイユリゾートファーム
晴れ、重馬場で行われた第52回高松宮記念(G1)。6歳となったナランフレグは年明けからシルクロードS(G3)3着、オーシャンS(G3)2着と調子を上げていたが、3頭のG1優勝馬含む12頭が重賞勝ち馬が相手とあって8番人気。それでも、愛馬を信じる丸田恭介騎手は内ラチぴったりの経済コースを進み、最後の直線で狭いスペースをこじ開けるように伸びて先頭ゴールイン。この勝利はナランフレグ自身にとってはもちろん馬主、騎手、調教師、生産牧場すべてに初めてのG1タイトルをもたらす快走劇となり、中でもデビュー16年目のG1初制覇に、人目もはばからずに嬉しさを爆発させた丸田騎手の男泣きは多くの人の心に刻まれるシーンとなった。
あの高松宮記念(G1)から2年。ナランフレグは23年スプリンターズS(G1)9着を最後に引退。2024年シーズンから日高町のヴェルサイユリゾートファームで種牡馬生活をスタートさせている。
「昨年(2023年)10月8日に到着しました。もともと落ち着いた馬ですから、環境の変化に戸惑うことなくすぐに新しい環境になれてくれました」と紹介してくれたのは同ファームの白井健一さんだ。今年に入ってから種牡馬となるための種畜検査、そして試験種付も終了させ、3月上旬現在、花嫁の到着を待っている状態だ。
「ゴールドアリュール系は気が強いイメージがあったのですが、この馬はそういう意味でも異色の存在ですね」と笑う。現在は朝7時ころから午後3時くらいまでが放牧時間に充てられているそうだが、放牧時間内は入り口から離れたところでじっとしていることが多いという。
「正直いえば、思っていた以上のファンの方が多くて驚いています。お話を聞くと、やはり高松宮記念(G1)のパフォーマンは多くの方の心に刺さったようですね」と話し「でも、人の姿を見て近くによってくるような、いわゆる愛想が良いタイプではないようです」と苦笑い。というのも「入り口と反対側の放牧地にいるエタリオウとは気が合うようで、互いの放牧地からお互いを確認しあっているシーンをよく見ます」とのこと。同じサンデーサイレンス系同士、何か感じるものがあるのだろうか。
「基本的には、のんびり屋さんで物事に対してイライラするようなタイプではないのですが、馬房の中だけは自分のテリトリーという意識が強いようです。うかつに入ると、威嚇されることもあります」というから、さすがG1タイトルを持つ種牡馬だ。
そんなナランフレグのセールスポイントについて「大きなタイトルは1つだけでしたが、スプリンターズS(G1)でも、連覇を狙った高松宮記念(G1)でも安定した良い走りを見せてくれていたと思います。長く競馬を使ってきましたが健康な体質を持ち、脚元も丈夫。こういったところは産駒に受け継がれると思いますし、ダートの新馬戦を勝っているようにゴールドアリュール産駒らしさも兼ね備えていると思います。年度代表馬がいる母系も魅力。ダート血統の需要が高まっていますので、この馬の存在を見直して欲しいと思います」と魅力を語ってくれた。